2018年・260人、2019年・310人、2020年・231人、2021年・223人。これは、1年間に富山県内で認知症を原因に行方不明となる人の数だ。入善町では6月15日、認知症の高齢者に対する「声のかけ方」を体験する催しが開かれた。

認知症高齢者への「声のかけ方」を学ぶ

県の統計によると、2025年までに県内の認知症患者は約6万7,000人にのぼり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると推計されている。

14日の参議院本会議では、認知症の人が希望を持って暮らせるように、国や自治体の取り組みを定めた「認知症基本法」が可決・成立した。

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そうした中、富山・入善町では15日、認知症の高齢者に対する「声のかけ方」を学び、「居場所などを共有するシステム」を体験する「声かけ見守り体験会」が開かれ、地域の民生委員や認知症について関心を持つ住民など16人が参加した。

認知症の人の居場所をQRコードで共有

認知症の高齢者が町を徘徊しているという設定
認知症の高齢者が町を徘徊しているという設定

声かけのデモンストレーションは、認知症の70代の男性が町を徘徊(はいかい)しているという設定で行われた。

認知症の人を演じる男性:
観音祭りちゃ、どこでやっとるがけ?どこでやっとるがけ?(観音祭りは、どこでやってるか?)

入善町では2022年から、認知症の人が徘徊によって行方不明になるケースを防ごうと、認知症の人の居場所などをQRコードで共有するシステム「どこシル伝言板」が導入されている。

QRコードは衣服やカバンなどに付けるもので、町で声をかけた人がコードを読み取り、入力した居場所や健康状態が家族に共有される。

声かけを実際に体験
声かけを実際に体験

住民:
観音祭りに行くって言われたけど、見にこられた? お母さんも一緒?

衣服につけられたQRコードを読み取るだけ
衣服につけられたQRコードを読み取るだけ

認知症の人からは、確かな答えは得られず、衣服に付けられたQRコードをスマホで読み取ることで、居場所などが家族に伝わることになる。

体験した人:
いいと思う。すごく便利。慌てていると、ちゃんと話せない。入力したまま(情報が)共有されるから、冷静にできる

認知症の人に対応する3つのポイント

入善町では、65歳以上の高齢者のうち12%の人に、何らかの認知機能の低下が見られることがわかっている。

居場所の共有システムを開発した、東邦薬品・植田元気さん:
認知症の人は不安症。だから急かさない。周りをいっぱい人が囲んで「どうしたの」と言うと、「私どうしよう、どうしよう」となってしまう。声をかける時にあいさつをして、場所や立場を伝えると、スムーズに話を聞いてくれる

15日の体験会では、認知症の人に対応する「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」という、3つのポイントなどが紹介された。

システムは県内12の市町村で活用

入善町では、認知症、あるいはその心配がある場合、町役場へ届け出ることで、このQRコードを30枚無償で利用することができる。

このシステムは現在、富山県内12の市町村で活用されていて、今後、残る3つの市でも順次、導入されるという。

入善町保険福祉課高齢福祉係・田中優香保健師:
今後も認知症の高齢者はどんどん増えていく。住み慣れた町で暮らし続けることができる地域になるには、どうすればいいのか。1人ひとりの住民に考えてもらう必要がある

(富山テレビ)

富山テレビ
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