全国的にSDGsの動きが進む中、環境にやさしい紙でできたスプーンを山形市の企業が開発した。そこには、これまで培ってきた技術の可能性を広げていきたいという思いがあった。

水分を含んでも崩れない紙スプーン

6月4日、山形市の霞城公園で開かれたマルシェの飲食ブースで料理と一緒に提供されていたのは紙でできたスプーン。ただの紙ではなく、環境にやさしい素材で作られている。

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記者:
こちらのスプーンは自分で組み立てて使います。実際に組み立ててみます

持ち手を半分に折ったあと、くるんと飛び出た部分をねじってすくう部分のくぼみを作れば完成。

記者:
紙でできているだけあってとても軽いが、一般的な紙のスプーンと比べると厚みがあって、とてもしっかりしています。これならスープなどを飲んで水分を含んでも、最後まで形が崩れずに使えそうです

実際にカレーを食べるのに使った親子からは「持ちやすいし食べやすいし」、「しっかりしていて丈夫な感じがする」といった声が聞かれた。

海洋プラ問題をきっかけに開発

この紙スプーンを開発したのは山形市の金属加工業・高橋型精。創業から80年、特に得意としているのは「抜き型」の製造だ。

大型の機械でプレスする様子
大型の機械でプレスする様子

展開図通りに刃を曲げて型を作りプレスすることで段ボールなどの紙や木材・液晶フィルムなど部品を大量生産することができる。この技術を活かして生み出したのが、紙でできたスプーン・フォークだ。

高橋型精・高橋広真専務:
もともとうちの会社は紙の加工を得意としていて、いま世界中で問題になっている海洋プラスチック・マイクロプラスチック、そういった課題をうちの技術を使って、「紙のカトラリーで問題解決できないか」というのが開発のきっかけ

ダンボール製のいす
ダンボール製のいす

高橋型精では、8年ほど前に「KIRIORI」というブランドを立ち上げ、段ボール製のいすや模様を施したのりなど、独創性のある商品を生み出してきた。

模様を施したのり
模様を施したのり

紙のスプーンはブランドの新商品として開発されたもの。自分で編むように折って使うことから、商品名は「あむ」と名付けられた。

高橋型精・高橋広真専務:
紙スプーンというと、ヨーグルトを食べたり、あまり固いものには使えなかったが、プラスチックやほかの素材に負けないような強度・耐水性など、そういった機能を持った十分使える商品を目指した。本当に100以上作って、少しずつ変えながら強度を確かめながら作った

素材にはプラスチックに代わるものとして大王製紙が開発した紙を使用。強度や耐水性があるだけでなく、100%自然に分解できる環境にやさしい紙を、0.9mmの厚さにプレス加工して仕上げていく。自分でねじって形を作るため、製造工程はプレスだけで、コストも抑えられるという。

「抜き型を多くの人に知ってもらいたい」

高橋さんは、この紙のスプーンを通して「自分たちの技術を多くの人に知ってもらいたい」と話す。

高橋型精・高橋広真専務:
抜き型というものがもともとニッチでみなさんに知られていない技術・加工でもある。このような商品を通して抜き型というものを少しでも知ってもらって、また抜き型の用途を広めてもらうというのもあります。使ってもらって自然・SDGsを日常的に感じてもらいたい

平らなまま保管できるため、災害時の非常用としても期待できるこの商品。イベントなどで使ってもらい、改良をしながら販路拡大を図っていくという。

※高橋型精・高橋専務の「高」はハシゴタカ

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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