新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられてから1カ月が経った。5類移行のタイミングでリモートワーク(テレワーク) から出社に戻るなど、仕事環境や生活環境が変わった人も多いかもしれない。

コロナ前の感覚を取り戻してきたかもしれないが、そんな変化にいまだ慣れずにストレスを抱えている人もいるのではないだろうか。 また時期的に、五月病や六月病のような症状に悩まされているかもしれない。このメンタル不調をどのように乗り越えたらいいのだろうか。

株式会社Smart相談室の代表取締役 ・藤田康男さん
株式会社Smart相談室の代表取締役 ・藤田康男さん
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企業の従業員向けのカウンセリングサービス「Smart相談室」を展開する株式会社Smart相談室の代表取締役 ・藤田康男さんと広報の三浦麻友子さんによると、5類移行で悩み相談にも変化が見られるという。メンタル不調の原因や、悩みを解決するポイントを聞いた。

5類移行後、人間関係の悩みが増えている

――5類以降後、実際にどんな悩みが寄せられている? 

元々、仕事に関する相談としては人間関係の悩みが多く寄せられていたのですが、さらに増えているような気がします。特に新卒や入社2~3年目の若い社員は、学生生活も全部リモートで、就職活動もオンラインで選考していた人がほとんどです。

それが、5類に移行してからいきなりリアルな場で上司や先輩と仕事をすることになり、ちょっと怖かったり、抵抗があったり…。実際に社内で会うようになり、接し方の距離感がまだうまくつかめていないようで、そんな声はいただいています。

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――コロナが5類以降になってからメンタル不調の症状を訴える人は多い?

5類になったという変化が起因していると思われる症状は結構あります。今までリモートワークをしていたのが出社することになり、その結果、通勤による疲労がたまってしまう、コミュニケーションがあまり得意ではない方が直接会うことでコミュニケーションをとらなくてはいけなくなる場合は、リアルな職場で会うことがつらいという相談があります。

さらに5類以降後のメンタル不調において今までと違うのは、社内の問題だけではなく生活サイクルの変化が関係していることにあります。具体的には、リモートワークではなくなってしまった結果、コロナ禍では家事が分担できていたのに連携がうまくいかなくなり、仕事の合間に家で交代して家事をしていたのができなくなった。

その結果、夫婦間の悩みまで増えてしまったという声などがあります。これまでやってきたことが急にできなくなったことでストレスとなり、それが仕事にも影響しているのです。メンタル不調に陥っている人の多くは、仕事または生活がコロナ前に戻ったことによる変化への対応ができていないのです。 

スケジュール通りに業務が進まない

――例えばリモートワークをしていた人が、上司や同僚がいる職場で働くことで周りの目が気になってしまうことはある?

例えば、1人で集中できていた人が、人がいる環境で働くことで急な依頼や声かけがあることで、スケジュール通りに業務が進まない、ということはあり得ると思います。環境で言うと、雑音や話し声がストレスになる人もいると思います。

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――5類移行後、Twitterのトレンドなどでも「満員電車」というワードをよく見かけるようになった。「通勤」にストレスを感じる人は増えた? 

今までリモートワークだった人にとってはこれも環境の変化なので長時間の移動が嫌でストレスに感じる人はいるのではないかと思います。 

また 「通勤=混む」ことがストレスの原因であれば、早めに出勤するなどの時間をずらすのも一つの方法でしょうか。難しい場合は、通勤時間が楽しくなるような“趣味の時間”を入れていく。例えば動画サイトを見る、音楽を聴く、本を読むなど、集中できるようなものがおすすめです。 


――管理職や中堅世代の特有の悩みもあったりするの?

5類以降後の環境の変化で部下がメンタルに不調を抱えているかもしれないという懸念から、マネジメント労力や時間が発生する可能性はあります。

自身のメンタル不調4つのサイン

――自分がメンタル不調に陥っているかどうかを見極めるサインはある?

次の4つの変化が考えられます。

1. 食生活の変化:おなかがすかなくなった、過食、お酒を飲み過ぎてしまうなど、
2. 睡眠状況の変化:眠れない、眠りが浅い、寝起きが悪い、何度も起きてしまう、
3. 体重の変化:直近で増減がある、食べているのに体重が減る、食べていないのに増える、
4. 日常生活への支障:電車に乗れなくなる、メールの文章がうまく出てこない、休みの日に家にこもってしまう、急に涙が出る、などです


――「変化への対応」は、時間と共に解決する?

変化に少しずつ慣れていくか、自分にあった環境で働くことを選択すれば解決していきます。

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――では、5類移行後の変わった環境に適応していく中で、どのようなセルフケアができる?

食生活、起床時間、就寝時間、適度な運動など、生活リズムを整えることがまずは基本です。自分なりのストレス発散解消方法を見つけておくことも重要です。誰かに話すことや紙に書いて、物事を整理することもおすすめです。


――それでも難しい場合、クリニックやカウンセリングを活用してもいいの?

Smart相談室では、カウンセリングはメンタル不調になる前から気軽に相談することをお勧めします。その上で、メンタル不調になってしまったら、その段階でクリニックや専門機関への受診をお勧めします。また、治療においては医師の同意のもと、医療機関への通院とカウンセリングを併用することで、より早期のタイミングでの回復につながることもあります。


――最後に、自分に合った“生活スタイル”はどのように見つければいい?

具体的には、
1. 生活スタイルはどのようなものがあるかを知る 。
2. 自分が好きな生活スタイルを理解する。
3. 会社の制度でできることを確認する 。順に進めていくと良いでしょう。

まずは「毎日出社」「完全リモートワーク」「郊外暮らし」など、どんな働き方や生活サイクルがあるかを自分なりにいろいろ調べてください。その上で好きな生活スタイルを改めて見つめ直す。意外と自分が何を重視しているのかを理解していない人も多いのです。そして、その働き方が自分の会社ですぐにできるのか、もし難しい場合は少しでも希望する形に近づけるため、まずは上司と相談してみるのも良いかもしれません。

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コロナ5類移行で生まれた「仕事環境」や「生活スタイル」の悩み。コロナ禍を経て働き方の選択肢が増えたからこそ、自分がどのような生活スタイルを好んでいるのか改めて自覚することは大事なことかもしれない。

そして、ストレス解消などには 「誰かに話すことがおすすめ」とのことなので、少しでも悩みを抱えたときは、メンタル不調になる前に、家族や同僚などまずは身近な人に聞いてもらってはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。