サッカーJ2・清水エスパルスは6月11日、リーグ第20節(アウエー)でロアッソ熊本に1-0で勝利し、順位を7位とした。リーグ戦ではここまで敵地では3連敗、しかも 7日の天皇杯2回戦ではJ3のFC岐阜に敗れていた。岐阜戦後から熊本戦までに、選手たちはこれまで以上にコミュニケーションをとっていたという。「悪い流れ」が漂い始めた中で手にした勝利が、チーム浮上のきっかけとなるのだろうか。

漂い始めていた“悪い流れ”

清水エスパルスは第14節でいわきFCに9-1、続く第15節は藤枝MYFCに5-0と勝利し、開幕直後の不振から立ち直ったと思われていた。しかし第16節のジェフユナイテッド千葉・市原、続くFC町田ゼルビア、そしてモンテディオ山形とアウェイで3連敗。当然順位もプレーオフ圏外に押し出された。

さらに6月7日の天皇杯2回戦。相手はJ3のFC岐阜で、清水も多くの若手選手を起用したとはいえ、岐阜もそれは同じ。負ける心配はないかに思えたが、延長戦を含め120分後に勝利を掴んだのは岐阜だった。「何本シュートを打っても決まらない」チームは、今シーズン序盤の戦いに似た空気をもたらしていた。

自発的なミーティング

秋葉監督によれば、天皇杯の敗戦後にロッカールームで選手同士の話し合いが行われたという。具体的な内容は語られなかった。ただ、選手から「自発的に」出てきた発言がきっかけ行われ、チームとしてまとまるために必要な「ポジティブ」で「たくましさ」を感じるものだったという。

プロの選手である以上、選手同士が批判をすることは少ない。練習や試合に取り組む姿勢はあくまで“個人事業主”の“経営方針”だ。練習をサボって損をするのはその選手自身。ゆえにそんな選手がいれば、他の選手の出場機会が増える。他の選手への批判は、「不必要な干渉」と捉えられる可能性がある。

宮本は、「これまで自分を高めることに100%集中してきたので縁遠かった話」と前置きし、「結果が出ないことには原因があるはずで、それを解決するために他の選手に対しても思ったことを言った方がいい時もある」と感じたという。

練習後に話し合うサンタナ選手(左)と吉田選手(中央)
練習後に話し合うサンタナ選手(左)と吉田選手(中央)
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天皇杯の2日後、練習が終わり吉田とサンタナが通訳のルイスさんをはさみ芝生の上で長時間話し込んでいた。吉田は、「いろいろヒミツ」と笑いながらも、「チームが勝つためにやるべきことについて、同じ方向を向いていると確認できる良い話し合いだった」と語った。こうした「自主性」は、熊本戦でどうあらわれるのか。

苦しみながら得た“勝ち点3”

岐阜戦から4日後の11日、熊本戦で清水は乾・白崎ら主力数人が遠征に参加できないスクランブルで、先発CBには特別指定選手の阪南大・高木践を起用した。とはいえJ2としては決して見劣りしない先発メンバーが名を連ねる。

一方、熊本を率いる大木武監督は、かつて清水を率いたこともある経験豊かな指導者だ。ボールを持ち、攻撃的サッカーを仕掛けるスタイルで、前半は文字通り熊本が試合を支配した。前半のシュート数は清水4本に対し熊本は9本。能動的にゴールに迫る回数は、明らかに熊本が清水を上回っていた。4-4-2のフォーメーションで試合に臨んだ清水は、2トップのサンタナとオ・セフンにうまくボールをおさめることができず、展開に支障が出ていたのも確かだ。

しかし後半はバランスを回復。特に北川が入ると、ポジションが明確化して流れは格段に良くなった。そんな中、ゴールへの圧を高め続けていたカルリ―ニョスが後半37分、ゴール前での混戦からこぼれたボールを左足で冷静に押し込み、1-0での勝利を手にした。気迫あふれるプレーを見せたカルリーニョスは、ゴール後に歓喜の表情を爆発させていた。

秋葉監督が普段から口にする「勝者・強者のメンタリティー」が、この試合では発揮されたと評価していいだろう。「敵地から勝ち点3を持って帰る」という目標を果たしたのだから。

ミーティングは新たな起爆剤か

J2は次節で半分が終わったことになる。すでに一度対戦した相手チームとどう戦い、どう勝ち続けるか。夏場を迎え、選手たちのコンディションも影響してくるはずだ。

「選手たちの自主的なコミュニケーション」が、どんな効果をもたらすのか。それを知るには、時間が必要だ。第20節を終えた時点で清水は7位。「1年でJ1復帰」という目標を達成するために、表面的だけではない「チーム一丸」となることが不可欠なのは間違いない。

(テレビ静岡)

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