北海道ではシカによる農業や林業などへの被害が増加傾向にある。

100年以上続く札幌市南区の果樹園では存続をかけた苦難の日々が続いている。

増加するシカ被害 果樹園は苦難の日々

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「ライトアップして。1、2、3、4…十数匹いる。赤ちゃんもいる。赤ちゃんもいっぱいいる」(撮影者)

車のライトを照らされ逃げまどうシカの群れ。

札幌市南区の果樹園で映像が撮影された。

果樹園の収穫量 3〜4割減少

近年、北海道ではシカの被害が相次ぎ、その総額は年間で約45億円にものぼる。

「ここに大きな木があったが幹がぐるっとかなり食べられて、木も育たなくなってきたので2、3週間前に処分した」(砥山ふれあい果樹園 瀬戸修一さん)

創業から100年以上の歴史を誇る「砥山ふれあい果樹園」の4代目・瀬戸修一さん。

瀬戸さんの果樹園にも10年ほど前からシカが現れ始め、収穫量が3割から4割減少したという。

「木を毎年5本10本と処分しては苗木を植えるが、苗木もパリパリ折られて一向に成長しない」(瀬戸修一さん)

札幌市によると、近年シカによる被害が急増。

2022年度の農業被害は前年度の3倍に当たる約5200万円にのぼった。

シカ被害急増の理由は?

「南区の果樹園でシカの被害が甚大だった。大雪で山にエサがなくなり豊平川沿いに下りてきたシカが、川沿いの果樹園に与えた被害が特にひどかった」(札幌市農業支援センター 高栗仁子 所長)

エサがなくなる冬、生き延びるためにシカは木の皮などを食べる。

木の皮の内側には養分などが通る管があり、木の皮がなくなると栄養が遮断されて木は枯れてしまうというのだ。

「近隣では100本くらい木を切り倒した農家もある。ぼろぼろになってリンゴをあきらめるという農家もある」(瀬戸修一さん)

被害が集中する冬、電気柵では防ぎきれないという。

「雪で線が引っ張られて隙間ができる。そこからシカが入ってくる。雪が深くなると電気柵の力も弱くなり、構わず入ってくる。娘が果樹園を継ごうと頑張ろうとしているが、きちんと対策を立てないと若い人が続ける環境にはならない」(瀬戸修一さん)

5代目のエミーレさんも果樹園の存続に向け決断を迫られている。

「このまま10年、20年後ひどくなるなら、リンゴをやめてほかの果樹を植えるなどしないといけない。30年、40年育てたのが1シーズンでやられてまた育てるのに何十年もかかるので、どれだけ大変か知ってほしい」(砥山ふれあい果樹園 瀬戸エミーレさん)

ボランティアのハンター 処分に限界も

札幌市は、シカの捕獲から処分までボランティアのハンターに任せている。

しかし、ハンターが頭を悩ませるのは、実は捕獲した後の処分についてだ。

土に埋めるなど、処分の最後までハンターが責任を持たなければならない。

「おととしと去年、今まで以上に100匹を超える捕獲をお願いしたが、ボランティアだと限界がある。きちんと処分できるルートを作りたい」(札幌市農業支援センター 高栗仁子所長)

札幌市は新たな試みとして、東区の民間廃棄物処理施設で1日2匹程度の受け入れを9月から始めた。

しかし、ハンターはもっと増やしてほしいと話す。

「もし捕獲頭数を行政が求めるのであれば受け入れ先の多様化、時間ですね。365日24時間受け入れる場所が市内に4か所あれば、今の3倍〜5倍の捕獲数は心置きなくできると思う」(北海道猟友会札幌支部 奥田邦博支部長)

札幌市北区の畑に設置された防犯カメラがシカの姿を捉えた。

札幌市では南区だけでなく、北区や東区でもシカによる農業被害が増加している。

「シカに端を食べられると切り口からかびてくる。牛のエサにするとこの菌を牛が食べ病気になる」(酪農家の男性)

「北区・東区は酪農地帯、牧草やデントコーンがあるのでそこにシカが付くと、年中エサがある。そこで世代交代をしていき、繁殖を繰り返す。手がつけられない数になってからでは遅い」(北海道猟友会札幌支部 奥田邦博支部長)

現在北海道に生息するシカは約72万匹。北海道は、2032年度までに35万匹にしたいとしている。

シカの生息域が広がりつつある札幌。

被害を食い止めるための試行錯誤が続く。

北海道文化放送
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