リニア新幹線のトンネル工事のボーリング調査をめぐり、静岡市の難波喬司市長が“一技術者”として記者説明会を開いた。難波市長はこれまでも「県境まで掘ってもいい」と話しており、改めてその考えを強調した。一方で、どこまで掘るかの議論は「静岡県とJR東海が話をすること」とそこへの評価は避けた。

“一技術者”として難波市長が説明

トンネル湧水現象を説明する難波市長
トンネル湧水現象を説明する難波市長
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2023年6月6日、「山中のトンネル掘削の先端付近(切り羽)での湧水現象について視覚的な理解のための説明~科学的・工学的根拠に基づく対話が円滑に進むために~」と題した記者説明会を静岡市の難波喬司市長が開いた。難波市長は、県の理事時代に「静岡の水を引っ張る可能性がある」と指摘した張本人で、“一技術者”として科学的・工学的根拠に基づき、議論が円滑に進めてほしいとの思いからだという。

説明にダイコンや竹串を使用
説明にダイコンや竹串を使用

難波市長はダイコンや竹串などを使い、3つの湧水パターンを説明したうえで、ボーリング調査での湧水量は側面でなく断面のもので議論すべきと主張した。(詳しくは前編に掲載)

「ボーリング調査」はするべき

持論を説明する難波市長
持論を説明する難波市長

ボーリング調査でもトンネル工事でも側面の湧水量は、切り羽断面の湧水量に比べれば差はかなり小さい。そのため、仮に(大量の水の流出が心配される)断層破砕帯を貫いた場合はかなりの湧水量になる可能性があるという。難波市長は、現在 山梨側から進められているボーリング調査で、地表での「水枯れ」など自然環境に影響が起きていないのなら、これまでに断層破砕帯を貫いていないことになるという。

県境付近の断層イメージ
県境付近の断層イメージ

また、静岡県が「山梨側に断層破砕帯が存在し、静岡側の断層破砕帯と地中でつながっていた場合は、静岡県の水が流出する可能性がある」と問題視することは「理解できない」と一蹴した。

静岡市・難波 喬司 市長:
山梨側に断層破砕帯があれば、山梨県側の水に大きな影響が出る。だから静岡側から水を引っ張るかの議論をするよりも、山梨側で断層破砕帯を貫いて、大量の湧水があり山梨の自然環境に影響が出て、そちらの方が問題になるはずです。静岡の水の心配をするよりも前に、山梨側の水の心配をしなければいけない。それを山梨県が心配しなくてはいけないことですが。ただ、そんなことが起きないよう、慎重にボーリングしていって、ボーリングが近づいたときに気を付けて施工すればいい。断層破砕帯を貫いて、ザーザー水が出てくるような施工は、JR東海はしないですよ。だから山梨側の断層破砕帯を貫いたときを静岡側が問題にするというのは理解できないですね

そのうえで、現状ではボーリング調査を進めるべきだと主張する。

難波市長「断層破砕帯までボーリング調査すればいい」
難波市長「断層破砕帯までボーリング調査すればいい」

静岡市・難波 喬司 市長:
10m平均でやってしまうと、ある程度中に入り込んでしまうので、瞬間的に入ってくる湧水の量を常に管理し、ものすごい水の量があれば閉じて、どうしようかと考えればいい。断層破砕帯が心配なら断層破砕帯があるところまでボーリング調査をすればいい。そこの量がものすごく多ければ、どうするか考えればいい

「言いたいことはあるが…」判断は静岡県とJR東海で

提供:JR東海
提供:JR東海

あくまで“一技術者”としての見解を述べたという難波市長。「どこまで掘るか」の判断はJR東海と静岡県とが協議することだとしている。

静岡市・難波 喬司 市長:
どこまで掘っていい、どこまで掘ると危ない。という判断は県とJR東海で話をすればいいんですが、起きている現象はこういうことですよと。言いたいことはいっぱいありますけど、きょうは“一技術者”として言っていますので。そうは言いながらも静岡市長としての立場もあるので、「止める・止めない」などの評価をしてしまうと「山梨県側で起きている現象に対し静岡市長が言った」ということになってしまいます。だから私はどういう現象が起きているかだけ、それはどこでも同じだからそれは説明したいと。責任を感じてやっているということです

県の専門部会(2023年6月7日)
県の専門部会(2023年6月7日)

記者説明会の翌日、静岡県では専門部会が開かれた。難波市長は、県にこの会議へ出席を求めていたが断られたという。会議では専門家からもボーリング調査については「問題ない」とする意見もでている。

科学的・工学的根拠に基づく対話がすすむことになるのだろうか。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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