2日に各地を襲った“記録的大雨”の取材を進めていくと、車で避難した人がとても危険な目に遭っていたことが分かってきた。防犯カメラの映像や運転手の証言から、車で避難するリスクを考えてみたい。

この記録的な大雨の影響で浮上 「クルマで避難」のリスク

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2日から3日にかけて日本列島を襲った大雨。関西でも、和歌山県と奈良県で線状降水帯が発生し、多くの被害が出た。

この記録的な大雨の影響で、全国で3人が死亡、42人がけがをし、4人が行方不明となっている。

中でも、今回の大雨で浮かび上がったのは、「車での避難のリスク」だ。茨城県鉾田市の川では2台の車が流された。

目撃した人:
(車の)中にお一人いて、窓もドアも開かないようで、取り残されているような感じでした

警察と消防が乗っていた男性2人を救助した。
また、愛知県豊橋市では農地で車が水没。乗っていた男性の死亡が確認された。
被害は関西でも…。

記者リポート:
近隣の方の話によると、女性が運転する車は道路が冠水する中、この辺りで停車し、一度は外に出てきたものの、しばらくすると姿が見えなくなったということです

「危険な状態になってからの車移動はそれだけ危険を伴う」

和歌山県紀美野町では、女性が冠水した道路を車で運転していたところ流されて行方不明に。警察と消防による捜索が続いているが、いまだ見つかっていない。

防災工学を専門とする関西大学の尾崎教授は、水害時に車で避難することについてこう話す。

関西大学環境都市工学部 尾崎平教授:
以前だと、基本的には徒歩避難が原則だったと思うんですけど、社会的に高齢化も進んでいるので、移動手段として避難の際に車というのも十分ありえる。危険な状態になってからの車移動はそれだけ危険を伴う

和歌山県海南市のバイク販売店の防犯カメラ映像。
先週金曜午後2時の段階では、路面がぬれている程度だが、そこからわずか2時間ほどで状況が一変する。水位がどんどん上昇し、屋根へと迫っていく。

冷蔵庫やドラム缶なども流れてきた。店の中にも水が流れ込みソファーやテーブルが浮いた状態に…。画面奥では、男性が車を引っ張る様子が確認できる。

この男性は、一度は車に乗って避難しようとしたということだが…。

車が浸水した男性:
どんどん深くなった(車の)ドアが開かないから、窓を開けて頭から出た

海南市では、午前11時すぎに避難指示が出されていた。しかし、男性が避難を始めたのは午後3時ごろ。その時にはすでに水位は1メートルほどになっていたという。

男性は、大切な車を失いたくないという気持ちが強かったと話す。

車が浸水した男性:
僕ら歳を取ってるから、何回も(車を)買えない。とにかく車を引っ張っていこうとした。何をするにしても車がないとできないし、今回(避難が)遅かった、自分の考えが甘かった

JAFの実験では…浸水すると車は停止

大雨の際に車を使うリスクを考えさせる実験映像がある。水位が60センチある道を車が走り抜けようとするが…。

30メートルほど進んだところでスロープを上ることができず止まってしまった。

脱出のためドアを開けるのにも力がいる。専門家は「避難の判断が遅れ、車が水に浸かると、命の危機に直結する」と警鐘を鳴らす。

関西大学環境都市工学部 尾崎平教授:
(水の中では)窓を開けることも難しい。車の窓ガラスは“専用のハンマー”でないと割れない。傘など叩いても壊れるようなものではないので、車どころではなくなってしまう。命を守る行動を優先していただくのが大事

判断を誤ると、命に危険が及ぶ。適切な避難をすることが重要だ。

(関西テレビ「newsランナー」6月5日放送)

関西テレビ
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