親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる「こうのとりのゆりかご」。2022年度の預け入れは9人で、3年ぶりに前の年度を上回りました。開設から16年間の総数は170人となった。

「事件になる前に保護していきたい」

熊本市の慈恵病院が設置している「こうのとりのゆりかご」に2022年度預けられたのは9人。

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過去最少だった2021年度の2人から大幅に増え、3年ぶりに前の年度を上回った。開設から16年間の累計は170人となる。

慈恵病院・蓮田健理事長:
去年、内密出産の関連の報道があり、女性たちに知っていただいたわけです。引き続き、事件になる前に女性と赤ちゃんを保護していきたい

熊本市によると、子どもの父母などの居住地は熊本以外の「九州」が2人、「関東」が2人、「近畿」が1人で「不明」が4人。

9人のうち1人は1歳から就学前の「幼児」で、幼児の預け入れは16年間で10人となった。出産の場所は自宅など「医療機関以外」が7人。危険な孤立出産を防ぐ目的の内密出産導入後も依然として多い状態だ。3人は医療行為が必要な状態だった。

母親の身元情報を預かったケースも

慈恵病院は2022年度、初の試みとして「ゆりかごに預けた母親の身元情報を預かり、将来的に開示する了承を得たケースがあった」と明らかにした。

慈恵病院・蓮田健理事長:
“匿名の預け入れ”ではなく“内密の預け入れ”です。それが3件ありました。私は(ゆりかごへの)預け入れでも出自を保障するのは大事と思い、試みてみた

慈恵病院が母親の運転免許証などのコピーを保管しているという。

こども福祉部・光安一美部長:
預かった情報をどう管理していくのか、どういうふうに開示するのか決まっていないので(ゆりかご専門部会から)心配の意見が上がっている。出自を知る権利の保障の検討会やゆりかご専門部会でもどういう在り方がいいか検討していかないといけない

ゆりかご開設から16年、「出自を知る権利」をいかに守るか模索が続いている。

一方、熊本市の大西市長は「熊本市は、2023年4月に「妊娠内密相談センター」を設置し、安心して相談いただける支援体制を強化した。子どもの出自を知る権利の保障について慈恵病院と共同して検討を進めていく」とコメントしている。

(テレビ熊本)

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