児童に専用端末を配布し、保護者や警察が位置情報を把握できる「見守りサービス」が、佐賀市の2つの小学校で始まった。地域全体で子供たちを見守るこの試みは、高齢者の福祉サービスにも広がることが期待されている。

“お守り端末”をランドセルに

5月8日、児童の「見守りサービス」が佐賀市の勧興小学校と、神野小学校で始まった。

この記事の画像(18枚)

勧興小学校・中村幸江校長:
見守りサービスottaです。ランドセルにつけて、登下校安全にしてくださいね

中村校長から受け取った袋の中身を児童が確認すると、お守りのような形をしたものが入っていた。これこそが、児童たちが携帯する専用の端末だ。重さは8グラム、見た目や色もかわいらしく、電池は6年間しっかりもつ。

1年生:
お守りをもらったのでうれしい

1年生:
ランドセルにつけて学校に行きます

登下校中などに専用の受信機を設置した事業所や店舗といった「見守りスポット」の前を通ったり、専用のアプリに登録した人とすれ違ったりすると、位置情報が記録される。通信機能がついた見守り端末は1年生全員と、2年生以上は希望者に無償で配布される。

勧興小学校・中村幸江校長:
登下校時の児童の危機管理の面からいくと、できるだけ多くの目で見守ることが大事だと思う。その見守りの手段の一つとして活用できればと考えている

佐賀市企画政策課・富永誠一さん:
企業側が費用を負担して、そこに対して行政がサポートして、広がりを持たせて事業を進めていくという非常に新しい形

地域全体で安心・安全な環境づくり

サービスを開発・運営しているのは福岡市の企業「otta」だ。

otta・山本文和社長:
当時住んでいた町で、誘拐事件があったことが一つのきっかけ。同じ娘を持つ親として、そういうことに巻き込まれてほしくない、そういった思いから

児童に配布する端末代など初期費用は運営する会社が負担していて、地域の企業から協賛を募り、運営費をねん出する仕組みだ。

現在全国27の自治体に導入され、幸いにもこれまで大きな事件は発生していないが、転校したての児童が帰る方向がわからなくなり、役立ったケースもあるという。

otta・山本文和社長:
私たちのサービスは地域全体で安心安全な環境を作っていて、全児童が使える、ここが地域の抑止力とか犯罪の起きにくい町を作っていくことに寄与できているんじゃないかな

佐賀市内では2022年、声かけが37件、つきまといが25件発生している。この見守りサービスを、いざというときに役立てようと、今回佐賀市内2つの警察署が覚書を結んだ。

佐賀北警察署・高井豊署長:
正確性や時間の短縮、迅速な発見活動につながるものだと期待している

勧興小学校に小学3年生の娘が通う保護者も、見守りサービスを活用している。

勧興小に子供が通う母親:
もともとGPSを子供に持たせようかなと思っていたタイミングだったので「ちょうどいい、ラッキー」と

子供が学校から帰宅後遊びに行き、行き先がわからなくなり警察に届ける寸前のことがあったことから、位置を特定するGPSの購入を検討していた。

サービス導入後、仕事の休憩時間などを含めて、1日に4回以上チェックしているという。

勧興小に子供が通う母親:
機械代がないので、その分お得ですし、月500円くらいだったらということで

この見守りサービスには、無料と有料の2つのプランがある。無料プランは位置情報を記録・保管し緊急時のみ警察への捜査協力として情報提供が可能なものだ。有料プランではひと月500円ほどで、保護者のスマートフォンで子供の位置情報の履歴が確認できるほか、見守りスポットを通過した際の通知設定が可能となる。

通学路に“見守りスポット”

勧興小学校の通学路に面した老舗菓子店には専用の受信機が設置され、見守りスポットとなっていた。

北島・香月道生社長:
こちらにルーターを置いています。場所とらないんで、ちょうどいい場所があり簡単に設置できるので協力させていただいた

勧興小学校の校区には19カ所、神野小学校の校区には21カ所の見守りスポットがある。設置された受信機から30メートルから50メートルの距離を見守り端末を持つ児童が通過すると、位置情報が記録されていく仕組みだ。

北島・香月道生社長:
本当は子供たちの登下校を見守ってあげるのが私たちの役目だが、なかなか仕事の関係でできないから、その代わりにこの機械がやってくれるのはいいこと。費用は電気代だけ。微々たるもの

また、社員の中にはアプリをインストールした人も。

北島・販売部外商課長:
佐賀市内はもちろん、県内あちこち唐津とかまで行くので、何かしら役に立てればと。今まで見守りはなかなかできてなかった

アプリ「見守り人」は端末を持った児童とすれ違った際、その位置情報が自動的に報告されるもので、知らないうちに見守り活動に参加できる仕組みだ。

「高齢者サービスにも広げていきたい」

県内では4月から有田町でも同様のサービスが始まっていて、佐賀市、有田町ともに子供たちへの見守り活動の強化が期待されている。

佐賀市企画政策課・富永誠一さん:
まずは子供の見守り2校からスタートして、ここから徐々に学校のエリアを増やしていき、市全体のエリアが増えてくれれば、今度はさらに子供だけではなく高齢者など社会問題もあるので、そういった部分まで広くサービスが行き渡ればいいなと

勧興小に子供が通う母親:
まだ使い始めてメリットデメリットがわかっていないので、使っていって気になることがあれば何か発信していきたい。地域がまだ周辺だけなので、もうちょっと広い範囲になったらいいなと思っています

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ

佐賀の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。