鹿児島の一本釣りカツオの水揚げ量が2022年、初めて日本一となった。日本一をきっかけに、さらに一本釣りカツオがPRできると漁業関係者の期待が高まっている。

鹿児島県知事に「日本一」報告

2022年、鹿児島市中央卸売市場に水揚げされた一本釣りカツオは7,898トンで、2位の宮城・気仙沼を約400トン上回り、初めて日本一となった。18日、漁業関係者が水揚げされたカツオを携えて鹿児島県庁を訪れ、塩田康一知事に日本一を報告した。

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県庁では、当日の朝に水揚げされたばかりのカツオの刺身が提供された。

箸が止まらない塩田知事
箸が止まらない塩田知事

箸が止まらない塩田知事は、笑顔で「おいしいです」と一言。漁業関係者も「それだけ食べてもらえれば、おいしいということが伝わる」と満足そうだった。

1匹ずつ針と糸を使って魚を狙う

カツオの漁には日本近海で漁を行う「近海漁業」と、日本から遠く離れた漁場へ行き漁を行う「遠洋漁業」などがある。

また漁の方法も、1匹ずつ針と糸を使って魚を狙う「一本釣り」と、大型の網を包み込むようにして取る「巻き網漁」などがある。今回、鹿児島が日本一となったのは「一本釣り」の水揚げ量だ。

3月から5月のカツオは、南から黒潮にのって北上する。この時期とれるのが「初ガツオ」で、さっぱりした味わいが特徴。北上したカツオは秋ごろ、脂をたくわえて南下する。それが「戻りガツオ」だ。

毎日50トン前後を水揚げ

午前5時30分の鹿児島市中央卸売市場魚類市場には、たくさんの「初ガツオ」が水揚げされてきた。まさに日本一の活気だ。

九州中央魚市・山口博久鹿児島市場鮮魚部長:
日本一に初めてなって、鹿児島のカツオを全国の人に食べてもらいたいという気持ちですね

この日の水揚げは約30トンだったが、おおむね、1日50トン前後の水揚げがあるという。

撮影:黒田輝彦
撮影:黒田輝彦

1匹ずつ釣りざおを使って釣る一本釣りは、大きいサイズだと10kgほどもあるカツオが、頭の上をポンポン飛び交う迫力ある光景が見られる。

漁業関係者によると、巻き網漁で一斉に捕獲されたカツオは、狭い網に押し込められたストレスで肉が固まる傾向があるが、一本釣りのカツオにはストレスが少ないため、弾力のあるモチモチとした食感を楽しめるという。

撮影:黒田輝彦
撮影:黒田輝彦

また、一度に大量に魚を取らないため環境資源にも優しい漁法といわれる。

水揚げされたたくさんのカツオは体の模様が浮き出ていて、キラキラと輝き、つやがある。九州中央魚市・山口部長によると、「4月は小さかったが、5月になって大きいのが釣れてきた。2kg~5kgサイズが多くなってきた」という。主な漁場は種子島・屋久島、奄美大島近海で、日帰りなので鮮度が良いのが魅力だ。

黒潮の流れや、海水温の変化でカツオが鹿児島近海に集中したこともあり、全国さまざまな船が、鹿児島市の魚類市場を拠点に漁を行っている。一本釣りの練習をする漁師に聞いてみた。

漁師(高知県):
高知県の船です。3月初めに出てきて、水揚げはずっと鹿児島でしている。一本釣りの魅力は、自分たちの手で1匹ずつ釣るところ

漁師(徳島県):
徳島から。鹿児島の魅力は、漁場が豊かなことと錦江湾(鹿児島湾)でえさが豊富にとれること。鮮度も手入れもよく持ってきているので、たくさん食べてもらい、鹿児島の人にカツオの鮮魚の魅力をお伝えしたい

新幹線で輸送しその日に店頭へ

水揚げのあとは、いよいよセリが始まった。

威勢の良い掛け声の中、次々と競り落とされていく。

鹿児島の新鮮な魚を各地に広める新たな試みも。2023年2月には、九州新幹線の客室にカツオなどの水産物を積み、福岡市に輸送する実証実験が行われた。

新幹線で魚を運ぶ
新幹線で魚を運ぶ

朝に取れた魚は、トラック輸送だと福岡に届くのは翌朝だが、新幹線で運ばれた魚は、その日の午後には福岡の店頭に並んだ。今後、ますます鹿児島の新鮮な魚を全国に届けることが期待される。

九州中央魚市・山口博久鹿児島市場鮮魚部長:
漁が3月に始まり、11月まであるので、鹿児島に揚がる魚は鮮度が良く、おいしい。皆さんに食べてもらいたい

新鮮なカツオをすぐ食べられる

水揚げされたばかりの新鮮なカツオをすぐに食べられるのが、市場内にある「市場食堂 城南店」。

新鮮な魚介類を、市場内で堪能できる。漁業関係者の舌もうならせる定食がズラリ…それもそのはず。

鹿児島近海で水揚げされたばかりのカツオを板前が手際よくさばき、最高の素材をより引き立ててくれる。

こうしで完成したお店の人気メニューが、刺身定食(税込1,600円)。その日のおすすめの魚が盛られている。

この日のメインは、やっぱりカツオ。ルビーのように輝いたカツオの刺身がひときわ目を引く。

久木崎みなみリポーター:
もちもちっとしてます。食感がしっかりしていますが舌の上でとろける感じ。甘みもあり味がしっかり乗っています。おいしい。臭みとか全然なく、食べやすいです

わら焼きにしたカツオのタタキもいただく。

久木崎みなみリポーター:
わぁ、分厚い。口に入れた瞬間、鼻に抜ける香ばしさがたまらない。もちもちの食感も増した感じがします。とりたてだからこそ、うまみがダイレクトに感じられます

わら焼きにしたカツオのタタキ
わら焼きにしたカツオのタタキ

市場食堂・山下司さん:
鹿児島の魚はおいしいから毎日食べてほしい。新鮮でおいしい魚を食べたら元気が出ますよ。それだけだね、何も言うことはない

「日本一」で一層のPRを

鹿児島市中央卸売市場“いお・かごしま”魚食普及拡大推進協議会・山口憲一郎会長は「日本一になったということで、いろんな人と話もしやすくなったので、これをきっかけに、いろんなところでPRをまだまだしていきたい」と話す。

今後は「日本一」というフレーズを使って鹿児島の一本釣りカツオをPRできることから、漁業関係者も期待している。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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