日本の大手飲料メーカー「サントリー」が、中国でウイスキーの新たな可能性に挑戦する。

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中国・上海は、カフェの数が世界最多と言われる街だ。

そこで、2023年に「ウイスキー100周年」を迎えたサントリーは、中国の“コーヒー人気”に狙いをつけた。

ウイスキーをコーヒーへ数滴垂らす
ウイスキーをコーヒーへ数滴垂らす

サントリーがウイスキーの魅力をアピールするために提供しているのは、ウイスキー「碧AO」を数滴垂らしたコーヒー。

森雅章記者:
飲む前からウイスキーの香りが漂っています。味わいはほぼコーヒーで、昼間でも気軽に味わえそうです。

このコーヒーのアルコール度数は1%未満で、時間帯を問わず飲めるのも特徴。サントリーは「ウイスキーをまだ知らない若い世代にも知ってほしい」という。

サントリージャパニーズクイジィン&ウイスキー・日高理惠さん:
ウイスキーをあまり飲まないけど、コーヒーは好きという方にいいかなと思います。

ウイスキーコーヒーを試飲した人たちの感想は――。

試飲した人:
コーヒーに加えてウイスキーの香りも味わえるので、クセになりそうです。

 

試飲した別の人:
とても自由で調和がとれている。何でも受け入れる上海文化にぴったり。

日本のウイスキーと上海のコーヒー文化の融合。今後の進展に注目したい。

「山崎」以外のブランド認知で更なる成長へ

「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の、鈴木智子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
サントリーの中国市場での試み、マーケティングや消費者行動を研究されている鈴木さんの目には、どう映っていますか。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
中国のウイスキー市場が急速に伸びています。特に高級ウイスキーが好まれ、スコットランドから中国へのウイスキー輸出は、外出が制限されたコロナ禍でも、123%増となっています。

また、サントリーの「山崎」も、中国では高級ウイスキーとして人気があります。

今回、サントリーは「ウイスキーコーヒー」に比較的新しいブランドの「碧AO」を使用しています。「山崎」以外のブランドを認知させることができると、更なる成長につながります。

堤 礼実 キャスター:
今回、水割りやロックなどの楽しみではなく「ウイスキーコーヒー」という提案をしています。これについては、いかがですか。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
中国のウイスキー人気は、年齢層の高いハイエンド消費者によって支えられています。

この層に向けたマーケティングに特化していると、若者への浸透が進まず、ウイスキー好きの高齢化とともに市場自体が縮小する可能性もあります。

今回の「ウイスキーコーヒー」という提案は、若者世代を取り込む狙いがありそうです。

中国の若者にとって「はじめてのウイスキー体験はサントリー」。そして、「ウイスキーといえば、サントリーである」。こうした刷り込みを行うことができると、市場で存在感を示すことにもつながります。

ハイボールで成功例があるサントリー

サントリーは、若者をウイスキーに振り向かせる成功例をもっています。

いま、日本でハイボールが浸透しているのは、サントリーのマーケティング戦略が成功したからです。

堤 礼実 キャスター:
確かに、ハイボールを注文される方、とても多いように感じます。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
若者世代がハイボールをビール感覚で、グビグビとジョッキで飲む習慣を広げたのは、サントリーなんです。

さらに美味しいハイボールが飲めるように、飲食店を対象にセミナーを開催するなど、その楽しみを広げることに成功しました。

これまでの中国におけるウイスキー愛好者とは違う消費者セグメントにも、日本のウイスキーが親しまれるといいなと思います。

堤 礼実 キャスター:
日本でウイスキーづくりが始まって100年。今では国際的にも高い評価を得ています。次の100年で、日本の美味しいウイスキーが、更に世界に広まっていったらいいですよね。

(「Live News α」5月18日放送分より)