島根・出雲市で育てられるミニトマトが、そのおいしさを認められ、2023年、野菜のプロ「野菜ソムリエ」が審査するコンテストで銅賞を獲得した。直売所に並ぶと“即完売”というトマトの人気の秘密を取材した。

ミニトマトを求めて長い行列

出雲市の郊外の店の前にできた長い行列。

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列に並ぶ人に聞いてみると、「すごくトマトのおいしいお店があるって」、「そこら辺で買うよりおいしい」と答えが返ってきた。

やがて、開店。待ちわびた客が次々店内に入ると、そこにはずらりとミニトマトが並ぶ。

すると、客が店頭に並ぶトマトに手を伸ばし始めた。そして、口へ運ぶ。客からは、「8度も甘いね、10度を食べよう」「ほんと甘いわ。おいしい」と声が上がった。

販売40分でほぼ完売に…
販売40分でほぼ完売に…

「8度」「10度」は甘さを示す「糖度」のことだ。この店では、ミニトマトを試食し、甘さを確かめたうえで、気に入ったものを購入できる仕組みになっていた。訪れた客が次々と買い求め、開店から40分ほどで、この日、用意されたトマトが完売した。

このユニークな方法で販売されているミニトマトは、出雲市内の農園で栽培されている。生産者は勝部政則さんだ。北九州で40年近く、医療器具の販売に携わっていたが、6年前、ふるさと・出雲市に戻り、ミニトマトの栽培を始めた。

作っているトマトは、糖度は高いもので10度、イチゴやスイカなどフルーツ並みの甘さに育てている。

勝部政則さん:
私の娘が「のぞみ」という名前で、それに希少の「希」「まれ」という意味を込めて、「希(のぞみ)トマト」と名付けた

娘のようにトマトの成長を楽しみたいという思いと、おいしさで負けない、「まれ」なトマトを目指したいという思いが込められた。

野菜ソムリエに認められた味

勝部さんは、この丹精込めて育てた「希トマト」を2023年4月に開かれた「全国ミニトマト選手権」に応募。全国から応募があった107品の中から「銅賞」に選ばれた。

「全国ミニトマト選手権」は、日本野菜ソムリエ協会が生産者を応援しようと、2022年に初めて開催した。2023年の第2回では、57人の野菜ソムリエが実際に試食し、味や香りなどを審査。

勝部さんの「希トマト」は、甘味と酸味のバランス、そして、果汁と果肉の割合が高い評価を受け、銅賞に輝いた。

野菜ソムリエから高い評価を得た「希トマト」。その甘味を生み出す秘訣は、栽培法にあった。

勝部政則さん:
「アイメック」という農法で、「土壌」を触ってみていただければ分かるんですけど、全然感触が違うと思います。

嶋村采音アナウンサー:
ほんとですね、なんかプニプニというか

勝部政則さん:
ゲル状というか

特殊なフィルムが、水を含むと柔らかくなり、ゆっくり水を通し、トマトが十分な水分を吸収できない状態を作り、水分や養分をトマトが生育できるギリギリの量に抑えることで、甘みが増すという。

勝部政則さん:
私は、農業経験「ゼロ」で知識もないんですけど、膜がうまく水分を制御してくれるので、おいしいトマトができるんです

時には収穫ゼロになることも…

農業の経験はゼロだったという勝部さん、以前の医療機器販売の仕事で扱っていた人工透析などに使うフィルターが農業に使われていることを知って興味を持ち、トマトを作り始めた。

勝部政則さん:
栽培を始めて2年目の時に病気がまん延して、2カ月くらい、収穫がないことがありました。いろいろな失敗してきているんですけど、トマトは強いので、復活してくれるんです

試行錯誤を繰り返すうち、栽培は軌道に乗り、今では7人の従業員を雇用、年間12トンを出荷するまでになった。だが、今でも1個1個、糖度を測定して、「8度」以上のものだけを選別、手作業でパックに詰め出荷している。

勝部政則さん:
私のスローガンは、トマトが苦手な人でも好きになるトマトを作ることです

多くの人から愛される「希トマト」。勝部さんは、これからも愛情たっぷりに甘いトマトを育てていく。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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