ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってからすでに1年以上が経過している。こうしたなか、一時は製造中止に追い込まれながら新製品を次々と発表しているウクライナのプラモデルメーカーがある。「いま起きている歴史に触れ、二度と繰り返してはいけない」という思いを日本のプラモデルメーカーも支えている。

静岡のメーカーも目を奪われたプラモデル

ICMのプラモデル
ICMのプラモデル
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海上自衛隊の飛行機や創業当時のフォード社の幹部たちの人形。製造したのは、ウクライナのプラモデルメーカー・ICMだ。

静岡県焼津市のプラモデルメーカー・ハセガワ
静岡県焼津市のプラモデルメーカー・ハセガワ

ICMの販売代理店を務める静岡県焼津市のプラモデルメーカー「ハセガワ」は、10年前にドイツで開かれた見本市でICMのプラモデルに目を奪われたという。

ハセガワ・根本営業部長「面白い商品だと」
ハセガワ・根本営業部長「面白い商品だと」

ハセガワ・根本 秀一 営業部長:
そこで商品を初めて見て、なかなか面白い商品だなということで取引を始めました

ICMの商品
ICMの商品

兵士などミリタリー系のプラモデルを中心に製造するICM。その技術は高く評価されている。

根本営業部長「出来が非常にいい」
根本営業部長「出来が非常にいい」

ハセガワ・根本 秀一 営業部長:
ディテールですね。パーツも細かく、あとモールド(凹凸)もシャープで、出来が非常にいいですね。なかなか日本のメーカーでは作らないような非常にマニアックなものが多く、こういうところのメーカーでしか手に入らないような商品ということですね

ウクライナ侵攻で製造・開発が一時完全停止

突然の取引停止
突然の取引停止

しかし、順調だった取引が突然停止。2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まったためだ。

首都・キーウに砲弾が降り注ぐ中、ICMは1カ月にわたり製造や開発を完全に停止せざるをえなかった。ハセガワの根本部長も「とくかく無事か心配ですぐにメールをした」という。

「ブレイブ・ウクライナ」シリーズ
「ブレイブ・ウクライナ」シリーズ

その後、ICMはウクライナ軍の兵士や対戦車ミサイル、戦闘機など、ロシアに抵抗するウクライナ軍をモチーフにしたブレイブ・ウクライナシリーズの製造を始めた。しかし、戦時中であることには変わりない。

「繰り返してはいけない」ICMから届いたメール

ICMから届いたメール
ICMから届いたメール

2023年4月、ICMからテレビ静岡に現状についてのメールが届いた。

「キーウは美しい春を迎えている」
「キーウは美しい春を迎えている」

「キーウはいま美しい春を迎えています。車や人々が行きかい子供は歩いて学校に行く、カフェやレストランも営業しています。しかし、サイレンが鳴ればすぐさまそれらの日常がすべて中断されるのです。」

「身内の1人は戦っている」
「身内の1人は戦っている」

「夫や息子など少なくとも身内の1人は自由のために今も戦ってくれています。毎日、彼らの無事を祈る日々です。」

「プラモデルで歴史に触れる」
「プラモデルで歴史に触れる」

「プラモデルはいまや非日常を味わうだけでなく、いま起きている歴史に触れる目的もあります。」

「二度と繰り返してはいけない」
「二度と繰り返してはいけない」

「戦争の恐怖は二度と繰り返してはいけないと認識しなければなりません。」

“平和への訴え”の支えに

プラモデル「キーウの幽霊」
プラモデル「キーウの幽霊」

ICMは「キーウの幽霊」と言われた実在しない戦闘機のパイロットや戦場ジャーナリスト、それに地雷探知犬といったユニークな新製品も次々と発表している。

ハセガワのブースに設置されたICMコーナー
ハセガワのブースに設置されたICMコーナー

また、2023年5月に開催された国内最大級の模型の祭典「静岡ホビーショー」に出展した、ハセガワのブースの一角には、ICMの新商品も並んでいた。

ハセガワはこうした製品の販売がICMの支援につながると考えている。

ハセガワのHPに並ぶICMの商品
ハセガワのHPに並ぶICMの商品

ハセガワ・根本 秀一 営業部長:
直接の支援というのはなかなか難しいですけど、ICMの製品を少しでも多く売ることで向こうが少しでも助かればと思っています。

ICMのプラモデル
ICMのプラモデル

戦争の終結を強く願うICM。プラモデルを通じて平和を訴えるその思いを日本国内のメーカーが支えている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

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