福島県独自の観光プログラム「ホープツーリズム」が、いま注目されている。参加者が過去最多となるなど、教育旅行先としても話題の現場を取材した。
被災地を見て聞いて知る
「ホープツーリズム」は東日本大震災や福島第一原発事故からの教訓を後世に残すことが目的で、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」や富岡町の「とみおかアーカイブ・ミュージアム」などが、このプログラムに選定されている。
この記事の画像(9枚)リアルな体験を通して知る
2020年9月に福島県双葉町に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」には、東日本大震災や原発事故にまつわる資料200点が常時展示されている。
人気は語り部による講話で、震災や原発事故を経験したからこその話に多くの人が耳を傾けていた。
行動制限がない大型連休の効果で、5月3日は普段の土日に比べ約4倍の830人が訪れ4日も開館と同時に行列ができた。
神奈川県から訪れた中学生は「来てみて実際に見て感じるものとか、その場の雰囲気とかは、ここに来ないと分からないものなので、参加できてよかったなって思っています」と話し、新潟県から訪れた人は「津波だけではなくて、原子力発電の怖さっていうのを改めて感じました。最近電気代とか値上がりして『やはり原子力大事かな』なんて思っていたんですが、やはりやる(稼働する)以上は万が一の事故に十分備えた対応が必要」と話すように、改めて感じることがあったようだった。
東日本大震災・原子力災害伝承館の佐藤伸司さんは「見て聞いて知っていただく。これが全てですので、これだけ多くの方に来ていただいているっていうのはやりがいを感じていますし、伝え続けていかなくちゃいけないという風に思います」と話す。
過去最多の参加者数に
ホープツーリズムを開始した2016年度は、わずか1件35人の参加だったが、2022年度は1万7806人と過去最多となった。理由として、施設が増え受け入れ態勢も整い始めてきたことが挙げられる。約8割が県外から訪れていて、その大部分を占めるのは学生の教育旅行で、先生の口コミで利用が増えているという。
福島県観光交流局観光交流課の木村優介さんは「いわゆる複合災害を経験したのは日本の中でも世界の中でも、福島だけ。復興しようとする姿を感じていただきつつ、浜通り地域の良さも知っていただけるようにしたい」と話す。
福島県は、2023年5月8日にサポートセンターを富岡町に設置し、受入れ体制を更に強化することにしている。
(福島テレビ)