「産後3カ月の記憶はほとんどない…」双子を自然妊娠。しかも、その双子を2組、4人も育てている愛媛県内のある一家。ダブル双子育児のリアルに密着した。
ダブル双子のお世話
YouTubeチャンネルの『ちむほげちゃんねる/“かわいい”だけじゃないダブル双子育児のリアル』は、にぎやかな双子育児の日々を発信しているチャンネル。この家族は、なんと4歳と生後8カ月の2組の双子がいる、愛媛のダブルツインズファミリーだ。
ダブルツインズを育てるママの美弥さん(32)は、フリーのグラフィックデザイナー。そして、パパの涼平さん(33)の夫婦。
4歳のいとちゃんとうたちゃんは、二卵性の女の子の双子。いつもニコニコのいとちゃんは、変顔をしてみんなを笑顔にするのが大好き。うたちゃんは「お先にどうぞ」ができる、心の優しいしっかり者の女の子。
うたちゃん：
ママ、あげる
美弥ママ：
ありがと、うーちゃんはいらないの？
そして、2022年8月に生まれたもう1組のツインズが、妹・ももちゃんと、弟・はるたくん。現在、生後8カ月ですくすく成長中だ。
3月10日、パパは仕事がお休みで、上の双子・いとちゃんとうたちゃんは朝から幼稚園。下の双子・ももちゃんとはるくんをパパとママ2人でお世話する。
午前11時半、離乳食をあげる時間だ。
記者：
メニューは？
美弥ママ：
ストックしてたお野菜たちと、シラスのベビーフードです
きょうは、2人がかりで下の双子に離乳食を食べさせる。
美弥ママ：
はるたがあんまり食べなくて嫌になっちゃった？
涼平パパ：
ミルクやない？
美弥ママが急いでミルクを作る。
美弥ママ：
大体途中で「ミルク欲しい」ってなっちゃう
その間、涼平パパは、はる君をあやしながらももちゃんには離乳食、まさに「子育て二刀流」。さらに、双子育児ならではの便利アイテムも積極的に活用する。
美弥ママ：
便利アイテムは、双子のいる家庭には大体あると思うんですけど
涼平パパ：
1人だったら手であげてもいいんですけど、時間かかっちゃうんで、ミルクあげる間何もできないんで、多分、その間にこれ片づけたりとかできた方が。やれることはやれる時にやっとかんと、イレギュラーですごいぐずっちゃって、できなくなっちゃったりするんで、ちょっとでも時間が空いたら家のことしたりとか、しとかんと
美弥ママが書いているのは、オリジナルの育児ノート。
美弥ママ：
「今これくらいミルク飲んだよ」とか「ご飯食べたよ」とかを書いてます。どっちにあげたかわかんなくなっちゃうんで、自分がやっててもわかんないんで…
涼平パパ：
ほんとわからんなるよね、どっちウンチしたっけ？さっきどっち替えたっけ？あれ、きのうのことやっけ？って
美弥ママ：
あといつからウンチでてないっけとかもね
午後3時半、ももはるをパパに託して、美弥ママはいとちゃんとうたちゃんたちを迎えに行く。
美弥ママ：
いとうた、きょう何したの？
うたちゃん：
鉄棒
いとちゃん：
おっきい鉄棒
うたちゃん：
こんなぐらいの鉄棒
美弥ママ：
おっきいやつしたん？へぇ～
いとちゃん：
いとい～っぱいしたよ
うたちゃん：
うたもいっぱいしたよ
帰宅した2人は、取材に来ていたカメラマンを見つけると…。
うたちゃん：
や～！誰かきてる！びっくり～
いとちゃん：
（カメラマンを見て）大きなカメラちゃん！
“大きなカメラちゃん”に、いとちゃんとうたちゃんはテンション爆上がり。
午後4時半。この日の夕飯担当はパパ。献立はみそ汁、ニラと豚こま炒め、そしていとちゃんとうたちゃんのリクエストの卵焼きだ。
記者：
料理はこれまでしてきた？
涼平パパ：
いやしてなかったですね、全く。全くしてなかったですね
涼平パパは、下の双子のももちゃんとはるくんの出産を機に、2022年9月から半年間、育児休業をとった。
うたちゃん：
パパ来て、これ自分でしたんよ
涼平パパ：
（料理を中断して）どれどれ、え、すごいじゃんうーちゃん
記者：
料理も一時中断が多い？
涼平パパ：
育児をしよって僕が一番大変、ストレスやと思ったんが、自分のスケジュール通りいかんくて、何しようと思っても中断せんといかんくて。これが一番いやだなと思いましたね。自分のペースでできないっていうのが一番でしたね。仕事より全然…いやっていったらいかんのですけど、全然大変でした
一時中断しながらも、手際よく20分ほどで完成した。
いとちゃん、うたちゃん：
いただきます！
涼平パパ：
ごめん、パパ失敗しちゃった許して！
午後5時、家族みんなでいつもよりちょっと早めの夕飯だ。双子同士のケンカもアクシデントもなく「穏やかな1日の終わり」…とはいかなかった。なにやらダイニングで不穏な空気が…。
美弥ママ：
もう、パパがももちゃんを着替えさすまでに食べんかったら
うたちゃん：
うわ～ん
いとちゃん：
怒られる？
美弥ママ：
連れてくよ！
うたちゃん：
うわん！もお～
美弥ママ：
早く食べたらいいんだよ
うたちゃん：
とれんのよ～お豆腐が…
ご飯中に遊び始めた2人を見て、ママの怒りスイッチがON。なんとかうたちゃんは食べ終わったものの、いとちゃんは、なかなか進まない。
うたちゃん：
がんばってよ早く～遅い、遅い！
そんないとちゃんを、うたちゃんが励ます。たくさんけんかもするけれど、やっぱり2人は仲良しだ。
「遺書」は“命をかけた出産への覚悟”
笑顔いっぱいの一家だが、2度に渡る双子の妊娠・出産は、美弥さんにとって想像を超えた命がけのものだった。初めての妊娠で双子を自然妊娠。しかも…。
美弥ママ：
仕事とかもしてたんで、ちょっとやばいなってなって、病院行ったらそのまま入院
切迫早産になり、出産までの2カ月は絶対安静。リスクの高い「出産」の現実を知ることになる。
美弥ママ：
身体的にも切迫早産を防ぐための点滴の副作用がすごく強いので、ずっとマラソン走ってるような状態という感じで、心拍数も130以上がずっと続いてるような状態なので。私の場合は筋肉が溶けちゃって、血液中に流れて、腎臓など内蔵系が悪くなっちゃってていうところで、もう点滴が使えないってなった
はり止めの点滴を中止すると、すぐに破水。気持ちの準備もままならないまま、緊急帝王切開。出血も多く、リスクの高い手術だった。
美弥ママ：
すごい怖かったです。誰も連れ添ってくれないし、1人で挑まないといけないから。産声聞こえたときは、もう勝手に涙が出てきてって感じでしたね
小さく生まれたため、NICUでの入院生活をへて、双子育児の日々がスタート。手探りの毎日で、最初の3カ月の記憶はほとんどない。
美弥ママ：
うまく飲めなかったりとか、飲んでるのに泣いてたりとかして、全く眠れない。それが交互にやってくるから、寝れない。ただただ寝れないです
それでも美弥さんは「双子を授かってよかった」と話す。
美弥ママ：
イライラするけど、イライラで終わることはない。毎日双子で良かったなって思うし、かわいいなってすごく思う
さらに2022年、2度目の妊娠。まさかの…「双子」だった。
美弥ママ：
どうしようっていう心配がありました。体は自分が本当に死ぬ覚悟「どうなってもいい」どうなってもよくないけど、めちゃくちゃ覚悟がいりましたね。やっぱ産むってなったら…（2回目の双子出産って）未知のことなので。もしかしたら出産で死んでしまうかもしれない
美弥さんは、出産前にあるものを用意した。それは家族にあてた「遺書」だった。
家族にあてた「遺書」
ママは、いととうたのそばにずっとおるよ。さみしくなったら呼んでね。ママ、ぎゅって抱きしめに行くけんね。大丈夫だよ。生まれてきてくれてありがと。いととうたがママの全てです。ママを選んでくれてありがとう。大好きだよ
この「遺書」は、美弥さんにとって「命を懸けた出産」への「覚悟」でもあった。
美弥ママ：
うん、ちょっと大げさって言われることもあると思うんですけど。自分の中ではこれがリアルだった
記者：
でも、やっぱりこういう思いで産んだから、一人一人としっかり向き合ってるんだろうなって
美弥ママ：
うん、そうですね、なんかうん、大事にしたい、大事にしたい、うん、大事にしたい
「適当でも大丈夫だよ」
そして2022年8月、ももちゃんとはるくんが誕生し、6人家族になった。2度目の出産を機に美弥さんが始めたのがYouTubeでの発信だ。
美弥ママ：
どうせ大変なことするんだったら、大変なことも楽しみながらしたいなっていう感じでやりだして
涼平パパ：
日本で見たらW双子っていると思うんで、そういう人らが見てもらって、「自分たちだけじゃないんだ」とか参考にしてもらえたらいいなっていうのもありましたよね
さらに、2人が伝えたいのは「適当な」育児だという。
涼平パパ：
（YouTubeの）コメントで「私は1人でひ～ひ～言ってるので恥ずかしくなりました」とかってくることがあるんですけど、でもそれは違いますよって。結局全力を尽くしたら1人だろうと、2人だろうと、3人だろうと、多分みんな同じくしんどいっていう感じなんで、それで自分はダメだって思ってほしくないっていうのはすごいある
美弥ママ：
「こんな適当でも大丈夫だよ」っていうのは伝えたい。みんなインスタとかですごい人たちを見てると、やっぱり「あ～そんな自分あんまりできてないなって」思ったり、私もするんですけど「それでいいやん」っていうのをちょっと見せていけたらなって思いますね
（テレビ愛媛）
