統一地方選挙は終わったが、地方議員の“なり手”不足に悩む自治体が増えている。その背景にはいったい何があるのだろうか。

"8年ぶり"の選挙…北海道占冠村の現状とは

人口約1400人、北海道上川地方の占冠村。

4月18日に告示された村議会選挙は、定数8に対して9人が立候補。8年ぶりの選挙戦となった。

立候補者:
自分の評価を、ぜひ知りたい

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立候補者:
議会の欠員解消が第一の目的

2カ月前、村議選を巡って深刻な問題が持ち上がっていた。

占冠村議会議長(当時)・児玉眞澄さん:
立候補者が1減となるかもしれないので、現職議員はできる限り立候補をお願いする。定数割れすると恥ずかしい

当時の村議会議長が、現職の議員に立候補を促した。

4年前は定数と同数の8人しか立候補せず、無投票当選。さらに、任期中に1人が亡くなり欠員1の状態が続いていた。

"子育てと議会活動"…両立に悩むママ議員

朝6時半、開店前のスーパーで商品を並べているのはパートの大谷元江さん、70歳。村議会の副議長を務めている。

大谷さんが村議になったのは8年前。かねてから政治に興味があったが、夫が亡くなったことをきっかけに立候補した。

占冠村議会副議長(当時)・大谷元江さん:
男性より女性が前に出ることを嫌がる男の人がいっぱいいる。夫が亡くなって身軽になり、反対する人がいなくなったので立候補した

女性の村議は2人だけ。大谷さんは立候補の意思を固めたが、今回が最後と決めていた。

議員の“なり手”がいないことを、どう感じているのだろうか。

占冠村議会副議長(当時)・大谷元江さん:
私は女性をと思っているので、女性に声をかけようと思うが、男性が選挙に出るより問題は多い。「私でやれるんだからやれるよ」と話をするが、なかなか「うん」と言うのは難しい

占冠村の村議は、年4回の本会議や委員会などで年間20日以上拘束される。

それ以外にもさまざまな会議や調査があり、町内会などのイベントへの参加も少なくない。

報酬は月14万円。約4カ月分の期末手当と、公共交通機関の実費が支給される。

暮らしと議員の活動のはざまで悩んでいる人がいた。

占冠村議会の最年少議員で1児の母、下川園子さん。46歳だ。

ママ友とともに雑貨店を運営し、8年前地区唯一のスーパーが閉店したことから週3日開くことを決めた。

村議になったきっかけは。

占冠村議(当時)・下川園子さん:
子育てを始めて「こうだったらいいのに」と思うことが増え、行政懇談会などで相談したがなかなか伝わらない

下川さんは立候補するか悩んでいた。なぜならば、長男の高校進学が間近に迫っていたからだ。

占冠村には高校がない。家族で高校のある自治体に転居することも選択肢の一つだった。

占冠村議(当時)・下川園子さん:
自分のことだけで選挙に出るか出ないか決められない。出るからには任期は4年あるので、途中で辞めることは考えられない

悩んだ末、立候補を決めた下川さん。若い子育て世代の村議が現れない理由を、どう考えているのだろうか。

占冠村議(当時)・下川園子さん:
議員報酬だけだと生活が成り立たない。生活をベースに考えると難しい世界。議員報酬だけでは子どもを育てられない

結局、定数8に対して9人が立候補。

今回の統一地方選で北海道内126の市町村議会選挙があったが、53の自治体が無投票だった。

8年ぶりの選挙戦となった占冠村。立候補した児玉さんが、ポスターを張っていた。

立候補した・児玉眞澄さん:
他の人の、仲間のポスター。お互いに協力する

他の候補の分まで張っている。

お決まりの街頭演説は?

立候補した・児玉眞澄さん:
車も出さないし、街頭演説も人は集まらない。街宣車を出すと「うるさい」と

子育てと議員の両立に悩む下川さんもポスターを張った。こちらも街頭演説はなし。

8年ぶりの選挙戦に有権者は。

占冠村民:
今まで選挙を経験したことがない議員が、どんな考えなのかわかるのが今回の意義

占冠村民:
選挙になってよかった。無投票では議員の気持ちがわからない

投票日は季節外れの雪が降る、あいにくの天気。投票率は73.57%で8年前より9.5ポイント低くなった。

当選した・大谷元江さん:
みなさんの期待に応えられるように、精いっぱい頑張ります

当選した・下川園子さん
責任を重く感じる。期待に応えられるよう頑張る

翌朝、ただひとり落選した候補者を訪ねると。

落選した・藤本重克さん:
欠員解消のため出るのが大きな私の目標だった。とりあえず欠員は解消された。次に私みたいに勇気を振りしぼって出てくれる人がいればいい

最下位の当選者と、わずか2票差だった。

8年ぶりの選挙は村の将来を考えるきっかけとなったのだろうか。

北海道文化放送
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