東日本大震災による津波で大きな被害を受けた、宮城県石巻市。最も被害が大きかった自治体の一つともいえるだろう。そんな石巻市に、震災2年後にできた唯一の児童館がある。不特定多数の子供たちが集まる児童館。そんな時に災害が発生したら?実際の避難訓練から考える。

児童館の避難はどうする?

宮城県石巻市立町にある「石巻市子どもセンターらいつ」。休館日を除いて、午前9時半から午後7時まで。館内には体を動かせるスペースの他、絵本や漫画・遊具もあり、平日の夕方や休日は数十人の子供たちがやってくる。

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春休み最終日のこの日、利用者と一緒に避難訓練を行うことになった。訓練は、毎月1回は職員だけで。そして最低でも年に1回は利用者にも協力を呼び掛けて行っている。そこには、児童館ならではの事情がある。

石巻市子どもセンターらいつ 荒木裕美 館長:
児童館は0歳から18歳まで利用可能。未就学児は保護者と一緒に利用するので、大人もいたりするんですけど、児童館には多種多様な年代がいて、年齢層もその時によって違いますから、その場その場の臨機応変みたいなことは、実際に一緒に訓練をやらないと…というのもある。

「らいつ」の立地も重要なポイント。ここは、旧北上川から約300m。海からも2キロしか離れていない。実際、東日本大震災の際には、このあたりに1.2mの津波が押し寄せた。

石巻市子どもセンターらいつ 荒木裕美 館長:
ここから早い段階で山の上に逃げるということを、常に練習しておかないといざという時に動けないので、きょうはそれを狙いにして、とにかくここから避難する。

児童館ならではの命を守る工夫

「らいつ」では、小さな子供連れでも10分ほどで避難できる高台の神社を、一時的な避難場所として想定。さらに、市の指定避難所で標高40mにある石巻市総合体育館を、最終的な避難先としている。

この日は神社までの避難訓練を予定していたが、あいにくの雨…室内を中心に訓練を行った。

館内放送「地震です、強い揺れです」

職員「みんな伏せて!頭伏せて!」

この日の訓練は午後1時過ぎ、石巻市で震度5強を観測する地震があり、津波注意報が出された想定で行われた。

職員「地震がおさまったかな?ちょっと大きかったから、津波が来るかもしれないから、避難するよ!」

「らいつ」では定期的に利用する子供には「登録カード」を作ることで、本人や保護者の情報を把握。初めての利用など、登録カードのない人は連絡先などの記入を求めていて、その時点で誰が、何人いるのかを把握している。

職員「名前呼ばれた小学生から前に行ってねー」

揺れが収まって10分以内に、利用者数を把握して移動を開始するのが目標だが、この日は9分余りで、43人の利用者を確認し、外に誘導することができた。

参加した保護者:
自分の荷物が結構重たくて。今はスタッフさんに持ってもらったんですけど、実際に赤ちゃんを連れて、荷物も持ってとなると、意外と重たくて大変だなと。

こちらでは、利用者の中学生と職員が、移動中の気になる点について話をしている。

中学生「道路は渋滞すると思うんだよね、この辺り…。」

職員「そうそう…車は渋滞するし、ガラスのあるところは危なかったりするから、それをどうやってよけながら上に行くかということは考えなきゃいけない」

中学生「それはやった方がいい」

職員同士でも自然発生的に、会話をしながら訓練を振り返っている様子が、いたるところで確認できた。実践してみて初めて気づく問題点。児童館ならではの、命を守る工夫は、今も模索が続いている。

(仙台放送)

仙台放送
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