自民党の平井卓也元デジタル相と国民民主党の玉木雄一郎代表は30日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、対話型サービス「チャットGPT」に代表される生成AI(人工知能)開発の可能性と課題について議論した。

平井氏は「チャットGPTのような莫大な資源を使うAIはサステナブル(持続可能)ではない。このままではだめだ」と指摘。「日本は軽量化も省エネ化もできる。そこに日本の勝ち筋があると見ている」と述べた。

生成AIの利活用に関し、著作権をめぐる問題が生じていることに関し、玉木氏は「創造的に何かをやるというインセンティブが消えてしまわないような工夫が必要だ。クリエイターの権利を保護する必要がある」と強調。著作権者が希望すればデータ収集(学習)対象から除外される「オプトアウト」や、著作権者に対価を支払うなどの一定のルール作りが必要だとの認識を示した。

平井氏は「著作権者に何らかの報酬が行くようなシステムを日本がいち早く世界に先駆けてつくれば、世界に一気に広まる」と話した。

番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士・元大阪府知事・元大阪市長)は生成AIをめぐり欧米から規制論が浮上していることに関し、「日本はAI(開発)で出遅れている。だからもっとアクセルは踏んでいくというスタンスを(政治的に)決めなければいけない。欧米がブレーキを踏むからといって日本がブレーキを踏むのは違う」と主張した。

以下、番組での主なやりとり。

平井卓也氏(元デジタル相・自民党デジタル社会推進本部長):
これからAIを使っていくにあたり、透明性、要するに開発段階や利活用のガイドラインのようなものはやはりきっちりつくっていかなければいけない。イノベーションを社会に取り込んでいこうということは合意している。人権や民主主義を壊したらダメだといった、同じ考え方の国では共有できる。しかし、国のガバナンスを一党でやる場合にも(AIは)使えてしまう。(今回のG7デジタル・科学技術相会合で)民主主義を大切に考える国としては当然のことを決めた。 
 
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
中国のような専制主義国家が生成AIのような技術を使うことにへの懸念も(G7会合合意の)原則に入っている。

平井氏:
そうだ。インターネットフリーダムの話も同時に別の会合で決めているのはそこだと思う。

橋下徹氏(番組コメテーター・弁護士・元大阪府知事・元大阪市長):
(G7デジタル・科学技術相会合で合意した)AI活用5原則は当然守ることだが、規制と活用のバランスで言えば、やはり政治はバランスだけではなく、どちらかのスタンスを決めなければいけない。国家運営はアクセルやブレーキをどう踏むかだ。AIに関して米国がブレーキを踏み始めるというのは、ものすごくアクセルを踏みまくってどんどんAIが進展していっているから当然ブレーキを踏まなければいけない。日本はAIで出遅れている。だからもっとアクセルを踏んでいくというスタンスを決めなければいけないのではないか。欧米がブレーキを踏むからといって、日本がブレーキ(を踏む)というのは違う。

平井氏:
EU(欧州連合)もブレーキを踏んでいるわけでない。英国なども見て莫大な研究開発予算をつけている。米国も確かに大きな問題としては電力や環境破壊の問題がある。いまのままの莫大な資源を使うチャットGPTのようなAIはサステナブルでない。このままではだめだ。そういうところにこれから一斉に研究開発の分野が向いていく。省エネのような話は日本は大得意だ。チップにしても、通信、光のことにしても。日本がAIを十分に使いこなし、研究開発を進めることによってものすごく軽量化もできるし、省エネ化もできる。私はそこに日本の勝ち筋はあると見ている。
 
松山キャスター:
一つ問題として、AIが使うデータの著作権問題がある。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
玉木さん、こちらのイラストをどこかで見たことがあるか。

玉木氏:
富嶽三十六景だ。

梅津キャスター:
そうだ。葛飾北斎の浮世絵、富嶽三十六景の中の一枚にとてもよく似ている。北斎の実際の絵がこちら。一方、左側の青い画像は、番組スタッフが画像生成AIを使って作ったイラストだ。その際に入力したキーワードが「葛飾北斎の浮世絵、波、富士山」などで、わずか数秒でこの画像が完成した。この画像については北斎没後170年以上経っており著作権は消滅しているため問題はない。しかし、仮に北斎が存命だとしたら問題になるのかもしれない。AIはインターネット上の著作物を学習することで画像を生成している。著作権が切れていない物に関してもAIは学習し、それが作者に無断で行われているため、その是非がいま問われている。橋下さんの意見は「人間だって学習している」と。これはどういう意味か。

橋下氏:
著作権といっても、しっかり認識しなければいけないのは、表現物に対して権利が発生するということ。AIが作成した表現物が誰かのものと似ていれば、著作権侵害だ。だけどもちまたにあるデータをいろいろ入手すること、日々インターネットなど様々なところにある表現物を自分の頭の中に入れていくこと、これ自体は著作権侵害でもなんでもない。いったん頭に入れた物を表現したとき、これが他人の表現物に類似した場合に著作権侵害になる。これが著作権の基本原則だ。AIはものすごく情報収集能力が高い。自分が作ったものをAIに吸収されると自分のものの著作権を侵害されたように感じる。世界を見渡すと、日本の著作権法はデータ入手のところはかなり自由だ。そういう著作権法になっているがゆえに、世界と比べれば日本はものすごくAI開発がやりやすい国だ。だから世界のAIの開発事業者が日本のほうに目を向けている。これは非常に大きなアドバンテージで、そのことをとても大切にして、AIの開発業者をどんどん呼び込んでくる、そういう国というものをしっかりと貫いてもらいたい。

松山キャスター:
例えば、英国などは営利目的で著作権のある情報を集めることに規制をかけようとする動きがある。日本としてはどう考えるか。

平井氏:
著作権法については橋下さんがいう通りだ。模倣と創造の線引き、真似して作るものとクリエイティブとの境目。人間の想像というのは何かの影響を受けて何かをつくっているが、AIは段違いのレベルで情報を集めてしまう。そのAIをどう扱うかだが、これも日本は世界に先駆けて、その権利をきちんとうまく回せるエコシステムを作ることが可能だ。つまり、元々のものをつくった人に何らかの報酬が行くようなシステムを日本がいち早く世界に先駆けてつくってしまえば、世界に一気に広がる。

橋下氏:
著作権侵害でAIを禁止にするのではなく、利益を害される人に、それこそ税できちんとサポートしてあげて、AI開発では世界で一番開発しやすい国にする。久々に日本が世界の中でリードできる分野なのかなと思う。

平井氏:
一方的に誰かが得するだけだと長続きしない。皆にそれなりのメリットがうまれる形を設定できると思う。技術は進んでいる。

松山キャスター:
アニメーションなど日本が強い分野がある。いまイラストレーターやアニメをつくっている人たちが懸念を示している。玉木さんはこの著作権の保護のあり方をどう考えるか。
 
玉木雄一郎氏(国民民主党代表):
まず、データを食べるところだが、著作権法30条の4で、情報解析は侵害の適用除外になっている。橋下さんが言ったように、いま(データを)食べるのはいくらでも食べられる。ただ、著作権者の利益を著しく不当に害する場合について法律が書いており、そこがどうなるのかは裁判も経ながら一定の事実を積み上げていく必要があるのかなと思う。そこはガイドライン等をつくるとか、あるいは一定の何かメリットを最初の創作者に対して与えるようなルールづくりをする。そうしないと、今はちょっとした挿絵なんかはもう生成できるので、多分イラストレーターの仕事が一部失われてきている。創造的に何かをやるというインセンティブが消えてしまわないような工夫が必要で、そこもルール作りだ。

松山キャスター:
画像などをAIでつくるときは、その出典元などを表示する仕組みのようなものが必要になるということか。
 
玉木氏:
あるいは一部の国で導入しようとしているが、私はこれは(AIに)読んでもらいたくないということを宣言して、宣言した人には、例えば、一定の金を払わないと(データを)取れないようにするなど、一定のルールを作っていく必要がある。クリエイターたちの権利も保護する必要はある。

平井氏:
そこはその通り。

橋下氏:
いま玉木さんが言ったオプトアウト、AIに(データを)食べられるのは嫌だということをきちんと制度化することを諸外国でやっているところがある。

平井氏:
フットプリントのようなものを大元に入れていくこともできる。技術で相当な部分解決できる。どういうバランスのエコシステムをつくるか。我々が出したホワイトペーパーにも書いてある。いち早く議論を進めたい。

日曜報道THE PRIME
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今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
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