中国の体制に批判的な中国人・民主活動家などを探し出し、その居場所を中国当局に報告。日常的に監視・脅迫する「秘密警察」が日本にもあると指摘されている。その活動実態について、国際ジャーナリストでスパイ研究が専門の山田敏弘さんにお話を伺った。

「秘密警察」の目的は“海外にいる反体制的な中国人”の監視・弾圧

アメリカ司法省は17日、チャイナタウンの雑居ビルに入居していた中国の「秘密警察」の関係者2人を逮捕したと明らかにした。また、スペインのNGO「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、中国の秘密警察は世界53カ国102カ所あると報告されている。

大阪や神戸にも拠点があると推察されるということだが、中国の秘密警察の本当の目的は、海外にいる中国人を監視・弾圧することだ。

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デモやツイッターで反体制的な言動を行い、中国国内への反体制支援を行っているような中国人が監視・弾圧の対象となる。

こうした問題人物を自発的に帰国させていて、2021年4月から2022年7月までの1年余りで帰国させられた中国人の数は世界中で23万人に上るということだ。

ものすごい人数を自発的に帰国させているようだが、強制的ではなく自発的だ。「反体制的」というのはどんな人たちのことなのか?

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
中国政府にとって不都合な言動、中国の批判的なツイートなどをする人たちのことです
(Q.自発的な帰国…をさせるのはなぜでしょうか?)
中国が、国外に無断で警察を置くことは主権侵害になりますし、また強制的な帰国は人権侵害にもなります。なので自発的に帰国させるよう活動しています

“自発的に”帰国させるマニュアルも

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
ストーカ-して監視して、恐怖心を煽って本人を追い詰めています。わたし自身アメリカの政府関係の人と話をしている時に、3年前からそういう話を聞くようになりました。アメリカでは突然、中国人が次々と消えているという話が出ていて、いよいよ問題が顕在化してきたという感じです

問題人物を自発的に帰国させるためのマニュアルまで、秘密警察にはあったそうだ。

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
去年、中国の警察がハッキングされたり、人権団体が調べたところ卑劣な手口が明るみになりました。例えば、“中国国内の医療保険・社会保険を無効化し使えなくする”とか“中国国内にいる子供を公立学校に通えなくする”などと脅し帰国を促すわけです

自発的に帰国させる形はとっているようだが、帰国せざるを得ない状況に追い込んでいる。中国の秘密警察だが、表向きは私たちの暮らしに溶け込んでいるということだ。

海外に住む中国人のためのサービスセンターやホテルを営んでいるケースが多く、アメリカニューヨークではラーメン店、カナダではコンビニエンスストア、イギリス・ロンドンでは法律事務所、ナイジェリアでは鉄鋼販売会社が秘密警察の拠点になっているという報告もある。

中国の「秘密警察」 その拠点は大阪や神戸にも…!? 

表向きは秘密警察だと分からないようにして、問題人物が帰国するよう追い込んでいるわけだ。外務省などの発表によると、日本国内に2カ所の秘密警察が存在するとされていて、1つは東京秋葉原のビジネスホテルが入る雑居ビル、もう1つは福岡だ。

他にも銀座や名古屋、関西では大阪や神戸にも秘密警察の拠点があるとみられている。

山田さんは「日本でもすでに急に帰国する、姿を消す中国人が続出している」と指摘されています。日本国内にある「秘密警察」が暗躍しているということなのか?

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
公安の方に聞いたところ、拠点があるのは認識していました。東京の拠点は完全にマークしていました。また中国人が急に帰国するケースが相次いでいることも把握していて、その背景には“自発的な帰国”があることは間違いありません

視聴者からこんな質問が届いた。

Q:日本人も秘密警察に見張られているのでしょうか?

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
中国に反体制的な発言をしている人はネット上では監視されていて、日本人も対象です。日本に来ている中国人や留学生もです。そういう人たちが一時帰国した際に、拘束されるなどの動きもあると聞いています。秘密警察は日本国内での動きも間違いなくチェックしていると思います

山田さんも見張られているのか?

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
あるかもしれません。私もツイッターやって発信していますが、ダイレクトメッセージがきたり、誹謗中傷が来たり、それが変な日本語だったり…。見張られているという自覚はあります。
(Q:認識されているんですね)
仕事で中国に行かないといけないような人は、SNSも含めて言動は気を付けないといけないと思います

またこんな質問も…

Q:中国の秘密警察を取り締まる方法はありますか?

国際ジャーナリスト 山田敏弘さん:
日本ではなかなか難しいと思います。一方、アメリカは摘発に力を入れています。2018年トランプ政権以降、力を入れて取り組んでいます。日本は秘密警察の活動を把握しつつも、直接取り締まる法律はないので、摘発は出来ないのが現状です

日本にも拠点があるとされる「秘密警察」。中国当局は「事実無根である」と主張しているが果たして…。日本政府はすでに中国に対し「仮に、我が国の主権を侵害するような活動が行なわれているのであれば断じて認められない」と申し入れたということだ。

(関西テレビ「newsランナー」4月20日放送)

関西テレビ
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