福島県の最南端、茨城県との境にある矢祭町。人口・約5,300人の小さな町が「読書の町」を宣言し、子どもたちに本を好きになってもらうための挑戦を続けている。全国に先駆けた取り組みを取材した。
学年が上がるにつれ減少
福島県教育委員会の調査で、子どもが1カ月に読む本の数は…小学生は「12.2冊」 中学生は「3.0冊」 高校生は「1.5冊」ということが分かった。
1カ月に読む本が「0冊」と答えた割合は学年が上がるにつれ増えていて、理由として中学生では「勉強・塾・宿題などで忙しい」高校生では「スマートフォン・携帯などのほうが楽しい」などと回答している。
図書館なかった町が読書の町に
こうした中で、矢祭町では子どもたちにたくさんの本を読んでもらおうと、2023年度から始めた取り組みがある。
矢祭町の小学生が授業を受けていた場所は、教室ではなく図書室。学んでいたのは、図書室の本の並べ方。その名も「子ども司書講座」と呼ばれる授業だ。
2007年まで図書館がなかった矢祭町。本を買う余裕が無かったことから、読まなくなった本を無料で譲ってほしいと全国に呼びかけた。
大きな反響を呼び、寄付された40万冊以上の本を集めた「もったいない図書館」が開館した。
「読書の町」を宣言した矢祭町。子どもたちを対象にした講座も、司書の仕事を知り本に興味を持ってもらおうと、2009年に矢祭町が全国で初めてスタートさせた。
矢祭町もったいない図書館の緑川宏子館長は「図書館ってどんなところなのか、分からない方が大勢いた。図書館で司書が、どんなふうに本をオススメするのか、オススメした本はどこにあるのか、どうやって調べればいいのか。司書の講座を通して、本を知るっていうことにつながるのではないか」と語る。
小さな町の取り組みは全国へ
その後、子ども司書講座は矢祭町から全国に広まり、今では200を超える自治体が取り組んでいる。
矢祭町では、これまで希望者を対象に行ってきたが、少子化の影響で受講する児童が減ったことから、2023年度からは授業の一環で全ての小学生が取り組むことになった。
受講した児童は「歴史とか漫画をよく読む。作者が分かっていたら、作者の名前の頭文字を探してみたい」「ラベルを読むのが難しかったり、ちょっと分からなくてもいっぱい調べたら分かるようになったのが、楽しかった」と話す。
子どもたちは12回以上講座を受けると、小学校卒業と同時に「読書推進リーダー」に認定される。
発起人の一人で、図書館の館長・緑川さんは「本から学ぶもの、言葉や想像力。そして知識として得たもの、それを自分の人生の中で大きく羽ばたかせるのには、幼児期からの読書活動があること。読書推進リーダーとして、自分たちが図書館の本を使ってどんなふうに読書を活かしていくか、そういった知恵を養っていただきたい」と話す。
ワクワクする読書通帳
学校の図書室で児童たちが熱心に取り組んでいたのが「読書通帳」専用の機械で本のバーコードを読み込むと、借りた日付や本のタイトル、毎月借りた本の総額まで表示される。これだけの金額の本を”無料で読むことができたと”、お得さも実感できるという。
通帳を使っている子どもたちに話を聞くと「記録していくのがワクワクします」「この通帳を全部埋められたらいいな」「前より2倍くらい借りるようになった」という。どれだけの本を読んだか目に見えて分かるので、読書量の増加にもつながっていた。
このように、学校の図書室でも使えるのは珍しいそう。読書通帳は、自治体ごとに配布していて、利用できる場所がそれぞれ決まっているので、気になる方はお住いの地域の自治体に問い合わせを。
小さな町が宣言した”読書の町” 本に触れて育った子どもたちが、どのように羽ばたいていくのか、矢祭町の挑戦は続く。
(福島テレビ)