約半世紀にわたり、岩手・盛岡の繁華街のにぎわいをリードしてきたニッカツゴールデンビルが、2023年4月末で閉館する。利用客や店の経営者、管理人…それぞれに今何を思うのか、内記和人記者が取材した。

「フォーラム盛岡」に業務を集約

盛岡市大通の映画館通りにそびえる、ニッカツゴールデンビル。「日活ビル」と呼ばれ、親しまれてきた。

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1975年の開業以来、最大25の飲食店などが入居し、半世紀近くにわたって盛岡の繁華街をリードしてきたが、4月で閉館し、取り壊されることになった。

店舗が退去し、静まりかえった“日活ビル”
店舗が退去し、静まりかえった“日活ビル”

内記和人記者:
4月末に閉館するニッカツゴールデンビル。建物の中は映画館以外の全ての店舗が退去していて、ひっそりと静まり返っています

アートフォーラム
アートフォーラム

映画館「アートフォーラム」は唯一営業を続けてきたが、4月20日の営業を最後に劇場を閉め、近くの「フォーラム盛岡」に業務を集約する。

訪れた客:
寂しいですね。取り扱う映画が大きい劇場と違ってマニアックで、雰囲気があっていい

開業以来、常に映画館が入っていた「日活ビル」。アートフォーラムのマネージャーを務める小原拓郎さんにも、高校時代の思い出がある。

アートフォーラム・小原拓郎マネージャー:
センター試験の後に友達とここでホラー映画を見た思い出がある。ビルの取り壊しということで、私たちも残念に思っている

閉館の理由は“建物の老朽化”

「日活ビル」は48年前、映画館通りに開業した。

地下1階・地上5階建て、県内初の大型商業ビルだった。

閉館の大きな理由は、建物の老朽化。内装には至るところに劣化が目立つ。排水管など見えない部分の破損も相次ぎ、管理会社は2022年に建物の維持を断念、閉館を決めた。

「ここで出会ったんだ」客も店も思い出のビル

このビルが最も活気にあふれていた頃を知る1人・伊東拓郎さん(58)。経営する「ヌッフ・デュ・パプ」は、テナントの中でも特に高い人気を誇る飲食店だった。

ヌッフ・デュ・パプ・伊東拓郎代表:
いよいよこれからコロナも収まり、V字回復に向けて頑張ろうという矢先の出来事だったので、非常に複雑な心境もあった

ほとんどの店舗が退去した2022年10月、ヌッフ・デュ・パプも27年続いた「日活ビル」での営業を終えることになり、店は常連客でにぎわっていた。

常連客:
盛岡のシンボルみたいな感じもあるかと思う。時代の流れなのかな。でも、とても残念

閉館を惜しむ利用客の声に触れることで、伊東さんは店の歴史の重みを実感していた。

ヌッフ・デュ・パプ・伊東拓郎代表:
「ここで出会ったんだ」とか「プロポーズをしたんだよ」とか、そういう話を聞くと、感慨深いものだなと思う。その思いや出会いが僕らを作り上げてくれたと思う

店は4月現在、「日活ビル」から100メートルほどの場所に移って営業している。管理会社によると、退去した約10のテナントは、多くがビルの近くに移転したということだ。

「ちょっとね、寂しいですよね」

そして「日活ビル」には生き字引と呼ばれる人がいる。

ビルの副支配人・長瀬正明さん
ビルの副支配人・長瀬正明さん

ビルの副支配人・長瀬正明さん(74)は、華やかな日活ビルの裏側で施設の管理を20年務めてきた。

繁華街を一望できる屋上
繁華街を一望できる屋上

この日、特別に案内してくれたのは、かつてビアガーデンでにぎわったビルの屋上。今は立ち入り禁止となっているが、繁華街が一望できる長瀬さんお気に入りの場所だ。

屋上のボイラー室で
屋上のボイラー室で

また、屋上にあるボイラー室も特別な場所だった。

ニッカツゴールデンビル・長瀬正明副支配人:
一人になれる時間。ボイラーはごうごうと音がする、炎の音が。聞かせてやりたい

閉館が迫る今、裏側を支えてきた長瀬さんにとっても、脳裏に浮かぶのはにぎわっていた日々の光景だ。

ニッカツゴールデンビル・長瀬正明副支配人:
全ての店がはやっていた。それぞれにおなじみさんがいて、常連客がいて。ちょっとね、寂しいですよね

利用客、テナント、管理人…多くの人に愛された「日活ビル」。
それぞれの胸に様々な思い出を残して、48年の歴史に幕を下ろそうとしている。

(岩手めんこいテレビ)

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