岩手・盛岡市に「町医者」として様々な病気や相談に応じる男性医師がいる。「患者におごる自販機」や「無料の食事提供」など、様々なツールで患者とコミュニケーションを図り、地域医療を支えている。

患者と真摯に向き合う“町医者”

松嶋大医師(48)は「町医者」として、JR仙北町駅(盛岡市)のすぐ近くの集合住宅の1階にある「なないろのとびら診療所」の院長をしている。

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なないろのとびら診療所 所長・松嶋大医師
医療が自分のそばにある、地域の中に普通にある敷居の低さとか、自分の在り方のために「町医者」と言っている

松嶋医師は新潟や沖縄などで地域医療に携わり、2017年に診療所を開業。診療所は内科などの総合診療で、認知症や緩和ケア・訪問診療に力を入れている。さらに、病状や悩みを丁寧に聞く診察をモットーとし、患者からも信頼されている。

患者の家族:
患者さんの話をしっかり聞いてくれるところがとてもいいと思って通っている

「患者を孤立させない」取り組み

松嶋医師の診療所には待合室がなく、「おちゃのま」と呼ばれるコミュニティースペースが待合室の代わりとなっている。

診察を待つ「おちゃのま」には話しやすいアットホームな空間になっている
診察を待つ「おちゃのま」には話しやすいアットホームな空間になっている

なないろのとびら診療所 所長・松嶋大医師
「おちゃのま」を私たち通称「屋根のついた公園」と呼んでいるが、「おちゃのま」という公園の中に本とかカフェとか診療所という遊具で公園に来やすくなる仕掛け

全国でもレアな「医者が患者におごる」自販機
全国でもレアな「医者が患者におごる」自販機

「おちゃのま」に変わった自動販売機がある。大手飲料メーカー「サントリー」が全国で導入している、専用のカードをかざすとドリンクが無料でもらえる「おごり自販機」と呼ばれるものだ。

社内のコミュニケーションを図るため「社長が社員へおごる」といった活用方法で主に企業が導入しているサービスだが、「医師が患者におごる」全国でも珍しいケースだ。

患者:
すごく助かっている。アットホームな感じで、とても落ち着いて診察が受けられる

なないろのとびら診療所 所長・松嶋大医師
今回のコロナ禍で地域の隣近所ですらコミュニケーションが希薄になってきた。何かコミュニケーションを取り戻したいと考えた

松嶋医師はほかにも、自宅に眠っている食材を買い取り、訪れる人に安く販売するサービスや、無料の食事提供なども行っている。その一つ一つが、患者を地域に孤立させないための取り組みだと話す。

なないろのとびら診療所 所長・松嶋大医師
患者さんが亡くなった時に、非常に孤独に亡くなっていく場を見たり、ひとり親の方が孤軍奮闘している姿とか、そういうことをたくさん経験してきて、ひとり親の方が体調が良くなっていただくにはどうしたらいいだろう、目の前の方が幸せになるにはどうしたものがいいかと思った時に、継ぎはぎのように色々作っていった

目の前の人に最善を届けることをモットーに取り組んできた松嶋医師。これからも地域の人たちを支える「町医者」であり続ける。

(岩手めんこいテレビ)

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