「PTA」は保護者が自立的に、子供たちのために様々な活動をする「任意の団体」だが、現実には「入るのが当たり前」との印象を持つ人も少なくないのではないだろうか。
鹿児島テレビではPTAについて、小・中学校に通う子供がいる保護者を対象にアンケートを実施した。寄せられた回答は10日間で400件超。関心の高さをうかがわせた。

問われる“PTAの在り方”

PAT加入の現状について聞いたところ「ほぼ強制加入」との回答が81%、「不参加の意思表示がなければ加入」が13%で、任意の団体と言えるPTAはかなり少数であることが分かる。

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アンケートでは、PTAの在り方を疑問視する切実な声も多く寄せられた。

・任意と説明しながらも強制加入が当たり前(鹿児島市・小1/小3の母親)
・役員決めの時の空気が“公開処刑”(鹿児島市・中3の母親)
・子供のための活動なのに子供を残して打ち合わせに参加しないといけない(鹿児島市・中1の父親)
・子供1人につき2回役員をしないといけない(鹿児島市・小1/小5の母親)
・フルタイムで仕事をしていて活動時間や参加するための仕事の段取りなどが精神的に負担(鹿屋市・小2の母親)

時代が変わりつつある中、PTAの在り方が問われている。鹿児島テレビでは、自由な形を模索する、鹿児島市のある小学校のPTAの取り組みを取材した。

3月10日夜。鹿児島市・清水小学校の校区公民館。保護者が集まり、約2週間後に開催されるイベント「清水フェス」についてのミーティングが開かれていた。発起人は清水小PTAの尾曲弘さんだ。

「清水フェス」実行委員長・尾曲弘さん:
「自分の地元ってにぎやかで楽しいな」とか、いつも道ですれ違うおばちゃんだったけど、フェスをきっかけにしゃべれるようになったとか、マルシェとかフリマとかイベントを組んでいるので交流のきっかけになってくれたらいい

コロナ禍で希薄となった地域のつながりを子供たちに実感してほしい…。
初開催のイベントを企画・運営するのはその思いに賛同した有志の保護者たちだ。ほぼ全員がイベント運営は素人。それぞれ仕事や家事の合間を縫って、準備が進められた。ミーティングや設営の備品作り。時には意見のぶつかり合いもあったという。

「やりたい人がやりたいことを」

3月26日、イベント当日。小雨にもかかわらず会場の清水小グラウンドには多くの人が訪れた。地元のパン屋さんや洋菓子店の商品販売に、スポーツ少年団の競技体験ブース。消防団は防火服の試着や消防車両も用意。老若男女、多くの地域の人が一堂に会した。

訪れた人:
(コロナの影響で)こんな大きなイベントはあんまりなかった。全部楽しい!

地域の民生委員:
お年寄りと関わることは、普段子供たちはない。こうした触れ合いをすればもっと街がよくなるのでは

「清水フェス」実行委員長・尾曲弘さん:
きつかったが、終わってしまえば結果オーライで楽しかった。ただ楽しかっただけでなく、実行委員の中でも全然知り合いではなかったが今回のフェスを通じて何でも言い合える関係が築けたというのがすごくうれしかった。やってよかったと思う

実は、このフェスを作りあげたのは全員がPTAというわけではない。清水小学校のPTAは2022年度から「任意加入制」に移行した。そのことがイベント開催の大きな背景となっている。
PTAの形を変えた当時の会長は、きっかけの一つにコロナ禍をあげる。

清水小 元PTA会長・上村宏明さん:
コロナ禍で2年間活動していなかったが、ものすごい支障が出たかというと何も出なかった。そもそも活動自体を1回白紙にしているので、絶対これをしなければいけないということがない。やりたい人が手を挙げて「私こういうことがやってみたいんです」ということで企画をして進めていく

上村さんが数年かけて移行した新たなPTAは「やりたい人がやりたいときにやりたいことを」がテーマ。入退会は自由。限られた人員の中、本当に子供たちのために必要な事は何なのか、保護者が考えるきっかけがこの改革で生まれ、今回の「清水フェス」という形になった。

「交流の機会減った」という声も

自由加入のPTAは、組織として成立するのだろうか。
全国各地のPTAを取材した経験を元に、PTA改革の本「さよなら、理不尽PTA!」を執筆したライターの大塚玲子さんにその点を聞いてみた。

全国のPTAを取材・大塚玲子さん:
加入、参加が任意だと「やる人いなくなっちゃうよ」と思われてきたが、別にそんなことはなく、少ないなりにやっている事例も最近も増えてきている。人数が少なくなったのであれば、その人数でできることをやろうと頭を切り替えることができればそれで続いていく。究極を言えば、誰も来なかった時にはその活動をやらない、という覚悟を持つことでもある

実際、清水小のPTA加入率は2割ほどだが今回のようなイベントが開かれた。その一方、清水小のPTAに加入していない保護者の中には「仕事もあり、活動に参加しなくてよいのは助かるが、保護者同士の交流をもつ機会が減ってしまった」との意見もあった。
今後求められるPTAの在り方について大塚さんに聞いた。

全国のPTAを取材・大塚玲子さん:
今までのやり方だと逆に嫌悪感を生むというか、学校、地域にも、PTAだけでなく距離をつくるような働きさえしてきてしまったと思う。参加者の意思を尊重して活動に参加してもらうということになっていけば印象もだいぶ変わると思う

強制されると負担に思う気持ちも大きくなってしまうため、活動の大小を問わず少しでも子供のために何かやりたいと思っている人が、もっと気軽にその思いを形にできたら、それが本来あるべきPTAの形なのかもしれない。

(鹿児島テレビ)

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