生活保護費の引き下げをめぐる裁判で、大阪高等裁判所は国の引き下げの決定を認める判断を示した。一連の裁判で高裁の判断が示されるのは全国で初めてだ。

「生活保護費」を減額 原告が“逆転敗訴”

国は2013年から15年にかけて、物価の下落などを理由に、生活保護費を最大10%引き下げ、およそ670億円削減した。

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これに対し、大阪府内の受給者らは物価に連動した生活保護費見直しにあたって下落率の起点を(原油価格などが高騰した2008年に)恣意的に選択したのは誤りだ、などとして国の決定取り消しを求めて、2014年に国を提訴。

2021年、一審の大阪地方裁判所は、「著しく大きい下落率をもとに改定率を設定したことは、統計の客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く」として国の決定は「違法」だと判断。

全国で初めて生活保護費を引き下げた決定を取り消す判決を言い渡した。この判決を受け、国が控訴していた。

14日、2審の大阪高裁(山田明裁判長)は、生活保護引き下げ決定の違法性を認めた一審判決を取り消し、受給者らの請求を全て退ける判決を言い渡した。

判決理由を「厚生労働大臣の政策判断で行なったデフレ調整には一定の合理性が認められ、裁量権の範囲の逸脱や濫用があったとは認められない」などとしている。

生活保護費の減額を巡り全国で裁判 適法か違法か判断分かれる

判決直後、裁判所前で受給者らの弁護士2人が「不当判決」「司法の職責放棄」と書かれた幕を出して結果報告すると、集まった支援者らから「なんで?」などと、落胆の声が漏れた。

初めての高裁判決が出ると期待して裁判所前に駆けつけた京都府内に住む79歳の女性は、判決の結果を聞いて「裁判官も一度生活保護費で生活してみてほしい。そうしたら引き下げが妥当かどうか初めてわかると思う」と話し、肩を落とした。

国(厚生労働省)は「今後とも自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めて参りたい」とコメントを発表した。 生活保護費の減額を巡っては、全国29カ所で同様の裁判が起こされていて、適法か違法かで判断が分かれている。

これまでに19の地裁で判断が出ていて、9の地裁で減額の決定取り消しの判決、10の地裁で減額を容認する判決となっています。 一連の裁判で高裁が判断を示すのは全国で初めてだ。

(関西テレビ「newsランナー」4月14日放送)

関西テレビ
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