人工知能を使った対話型ソフト「チャットGPT」を開発した、アメリカのベンチャー企業「オープンAI」のアルトマンCEOが10日に総理官邸を訪れ、岸田総理大臣と面会した。

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オープンAI・アルトマンCEOは、記者団に対して、「(岸田首相と)AI技術の長所や、短所をどう軽減するかについて話した」と述べた。

岸田首相も記者団に対し、「プライバシー、あるいは著作権といったリスクも指摘をされている。国際的なルール作りについても意見交換を行った」と述べた。

面会後、アルトマンCEOは日本への進出を考えていることを明かした。

文章を瞬時に作成できる「チャットGPT」をめぐっては、学習への悪影響を懸念する声もある。

文部科学省は、教育現場での活用に関する指針をまとめる方針だ。

禁止でなく技術を活用して定着を

「Live News α」では、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
対話型AI「チャットGPT」の開発企業のトップが岸田総理と面会する一方、文科省は教育現場での取り扱いを示すガイドラインの検討を始めていますが、萱野さんはどうご覧になっていますか。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
「チャットGPT」は教育の現場に、大きな動揺を与えることは間違いない。大学教育の現場でも、すでに対応に追われている。

目下の問題は、学生がレポートや論文の作成、「チャットGPT」に任せることをどう防ぐかという点。

例えば、上智大学では「リポートや論文の作成の際に、無許可での使用は認めない」としている。

考えなくてはならないのは、教育現場で「チャットGPT」を禁止することに、どこまで意味があるのかという点。

堤 礼実 キャスター:
確かに、仮に大学で「チャットGPT」の使用を禁止しても、それを徹底させるのは、難しいかもしれませんね。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
そもそも長い目でみれば、テクノロジーの発達を人類が禁止するという形でコントロールすることはできないものとして考えるべき。

よりよい使い方を定着させることでしか、人類はテクノロジーをコントロールできない。

そのため大学などの教育現場は今後、「チャットGPT」を禁止するのではなく、どうやったら教育に活用できるのかを模索していくことが求められる。

例えば、知識の整理などは「チャットGPT」に任せて、課題を発見したり、知識を組み合わせることで、新しい考え方を提示することに活用する、といったように、今後は「チャットGPT」を活用した上で、何を新しく生み出せるかという点で知性が試されることになる。

教員は常識の見直しが求められる

堤 礼実 キャスター:
教育の現場を含め「チャットGPT」の使用や、その向き合い方を、大いに議論することが必要なのかもしれませんね。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
「チャットGPT」の登場は、「教育の崩壊」につながるものではなく、すでに機能していない教育の側面を浮き彫りにするものだと考えるべき。

例えば感想文を書かせたり、記憶の正確性を問うような教育は、本当に今の時代の知性を育てることにつながっているのか。「チャットGPT」の登場を契機に、教員は今までの常識の見直しが求められる。

堤 礼実 キャスター:
対話型AIは、作業のミスを減らすことができたり、時間の節約ができたり、とても便利なものだと思います。ただ、人にしかできないこと、人にしか出せない魅力もあるはずです。すべてをAIに任せるのではなく、良き相棒としてうまく活用できるといいですね。

(「Live News α」4月10日放送分より)

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