高市早苗経済安保相(宇宙政策相兼務)は9日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、機密情報の扱いを有資格者に限定する「セキュリティ・クリアランス(適格性審査)」制度に関して、資格保有者が情報を漏洩した場合の罰則を特定秘密保護法の罰則に合わせて「懲役10年以下」とすることが望ましいとの認識を示した。

また、軌道上に残る不要となった人工衛星などの「宇宙ごみ(スペースデブリ)」の回収について、5月に仙台市で開かれるG7(主要7か国)科学技術相会合で議題とする考えを強調した。

セキュリティ・クリアランス制度に関し、高市氏は「セキュリティ・クリアランスを持った人が機微な情報を流してしまった場合には、特定秘密保護法と同じくらいの10年以下の懲役あたりがマスト(必須)の要件だ」と表明した。

同時に「本人が(資格を)拒否したら調査されないし、(資格を)要らないという人に強制するものではない」とも述べた。また、資格取得者は海外渡航などで一定程度行動制限を余儀なくされることが予想されることを踏まえ、米国の制度なども参考に一定の報酬を付与する必要があるとの見解を示した。

高市氏は、日本の技術者や研究者がセキュリティ・クリアランスを保有していないことで、個人や企業が国際共同開発プロジェクトや先端技術を扱う学会、海外の政府調達などから排除されていると指摘。海外の機微技術を使った自社製品をめぐり海外企業との間でビジネス上の交渉が進まない事例もあるという。

政府のセキュリティ・クリアランス制度に関する有識者会議の座長代理を務める鈴木一人氏(東京大学公共政策大学院教授)は、国際共同開発プロジェクトなどに参加するためには米国など各国が導入しているセキュリティ・クリアランス制度とレベルを合わせる必要があるとの考えを示した。

一方、宇宙ごみ(スペースデブリ)について、高市氏は「自分の国が出したデブリは自分の責任で回収する。日本が先行すると代金をもらって回収に協力できるというひとつの大きなビジネスチャンスだ」と強調し、日本として宇宙ごみの回収を産業化していく考えを明らかにした。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
経済安全保障推進法が2022年5月に成立したが、残された課題としてセキュリティ・クリアランスの問題がある。セキュリティ・クリアランス制度がなぜ今必要なのか。

高市早苗氏(経済安保相・宇宙政策相):
日本でも政府が調査して適正評価をするという意味でのセキュリティ・クリアランスは、特定秘密保護法にはある。でも、これは外交、防衛、テロ、スパイ行為・諜報活動の4分野に限られている。いま国防と経済の境目が曖昧になってきている。高度なデュアルユース技術は防衛にも、産業にも、私たちの生活に身近なところでも使われている。だから、いわゆるその経済版、産業技術版といったものを考えている。これ(特定秘密保護法)の技術版がないことで何が起きてるか。防衛装備品とは全然関係のない国際共同開発でも「あなたはセキュリティ・クリアランスを持っているのか」と聞かれる。セキュリティ・クリアランス保有者が会社にいないために長期間、様々な交渉しても結局契約に至らない。自社開発の製品に海外の機微技術を使ったときに自社製品であるにもかかわらず、その海外企業とのやり取りがうまくいかない。最も気の毒なのは研究者だ。デュアルユースに関する学会に参加しようとしても「クリアランスフォルダー・オンリー」ということでクリアランスを持ってない人は参加できない。最先端の機微技術を学ぶ、研究する機会が奪われている。私の目的はどちらかと言えば、セキュリティ・クリアランスがないがゆえに日本企業が海外の政府調達からはじかれたり、海外の民間企業との取引がうまくいかなかったり、海外の最先端の情報が得られるような学会に技術者、研究者が参加できなかったりといったデメリットをなくそうと取り組んでいく。

松山キャスター:
軍事と民生両方に使えるデュアルユース技術でかなり高度な技術、情報が今飛び交っている中で、同じ基準でないとなかなか情報共有ができないという事情があるようだ。鈴木さんは政府が主催するセキュリティ・クリアランス制度に関する有識者会議で座長代理を務めているが、日本はセキュリティ・クリアランスの審査基準を米国と同等のレベルまで引き上げるべきだと考えるか。

鈴木一人氏(東京大学公共政策大学院教授):
学会や国際共同開発プロジェクトに参加するためには、やはり同じレベルのセキュリティ・クリアランスを持ってないといけないので基本的には同じ基準になると思う。米国、英国、カナダ、豪州、各国に制度はあるが、それぞれ微妙に違いはある。多少の差はあるが、基本的なラインは同じように分厚い身上書を書いて資格取得に必要なデータ提供が求められる。そういうことをすることで初めて参加できる学会や国際共同プロジェクトがある。日本が最先端技術に触れるためにはセキュリティ・クリアランスは必要だ。

松山キャスター:
では、視聴者はセキュリティ・クリアランスの必要性をどう考えているのか。(視聴者投票の)結果を見たい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):    
視聴者投票で「日本にもセキュリティ・クリアランスは必要か」との質問に「必要だ」という人が95%、「不要だ」という人が3%、「どちらとも言えない」とい人は2%だった。

松山キャスター:
圧倒的多数が「必要だ」と考えている。

高市大臣:
理解が進み始めたのはとてもありがたい。誤解ないようにこれだけは申し上げたい。特定秘密保護法もそうのだが、いま検討しているセキュリティ・クリアランスも敵性評価で様々なことを調査される。本人が嫌だと拒否したら調査はされない。「私は、セキュリティ・クリアランスは要らないよ」という人に強制するものではない。特定秘密保護法は対象分野が限られているが、(資格の)ポータビリティがない。役所の人は何年かごとに所属部署がかわる。そうすると、あれだけの調査を受けたにもかかわらず、クリアランスがなくなってしまう。そうではなくて、海外でも、例えば、トップシークレットなら6年、シークレットレベルなら10年程度、一回資格を取ったら何年か有効になるものでないといけないと思っている。

松山キャスター:
先ほど高市さんは官公庁で部署を異動した人も含めて情報の保持を図る制度が必要だと言った。デュアルユースを考えると、民間企業でも転職者が秘密を保持できるかを考えなければいけない。どのような方策を考えているか。

高市大臣:
政府の職員が対象の場合、民間企業の従業員が対象の場合、それぞれのケースがある。一度セキュリティ・クリアランスを保持した人というのは、それなりの信頼性があると国がお墨付きを与えた人物だ。クリアランスを持つ人が別会社に行く時、機微な情報を流した場合には当然罰則規定がある。米国などのケースを見ても、死刑はさすがにありえないが、特定秘密保護法と同じぐらいの10年以下の懲役、この辺りはマストの要件だと思っている。

梅津キャスター:
こちらの画像を見てもらいたい。人の大きさを超える大きな物体は実は宇宙から落ちてきたものだ。使われなくなった人工衛星やロケットの残骸などをスペースデブリ、いわゆる宇宙ごみというが、大気圏で燃え尽きることなく地上に落下するなど、いま深刻な問題となっている。日本はこの分野で世界初の挑戦を行っている。

梅津キャスター:
難しい挑戦をしているが、地球を覆うほどの宇宙ごみ=スペースデブリがある。写真は米国のスペースX社の宇宙船が出したデブリがオーストラリアに落下したもの。もう一枚は、ロシア製の宇宙船の一部と見られるものがベトナムに落下した時の写真だ。このようなことは今後増えるのか。

鈴木氏:
このロシアの人工衛星は古いものだが、中国がいま宇宙ステーションを建設するために打ち上げている「長征5号B」というロケットは、非常に高い確率で燃え尽きないで地上に落ちてくる。しかも、どこに落ちるかがわからない。というか、落ちる場所を狙って落としてないので、場合によっては地上で被害が起きる恐れもあり、非常に懸念されている。            

松山キャスター:
衝突の恐れや落下の恐れを考えると、なんとか回収しなければならない。日本としてスペースデブリの回収に取り組むのか。

高市大臣:
ええ。プロジェクトそのものはスタートしている。特に今年度から力を入れて2025年度には大型のデブリ回収に至る計画だ。いま宇宙空間で運用されている人工衛星は29%。約8割がスペースデブリだ。運用を終えた衛星や中露の破壊実験で飛び散ったごみに加えて、日本のH2Aロケットも上段のエンジン部分は宇宙空間に残ってしまう。長さ11m、幅4m、重さ3トン、それが宇宙空間を漂っている。よその国のロケットも同じで、巨大なデブリもある。日本のスタートアップ「アストロスケール社」が、世界初の宇宙ごみ回収事業に向けていまJAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力しながらやっている。素晴らしい技術だ。宇宙空間を時速2万8,000kmでブワーッとすごいスピードで飛んでいるデブリに、それも回転しながら飛んでいるデブリにぶつからないように接近し捕捉して安全な場所に移すという非常に優れた技術だ。実は今度のG7(主要7か国)科学技術相会合の議題にこれも入れることにした。自分の国が出したデブリは自分の責任で回収する。技術がないところは協力しあってやる。日本が先行すると代金をもらって回収に協力できるというひとつの大きなビジネスチャンスでもある。

松山キャスター:
産業化を図っていくということか。

高市大臣:
そうだ。

松山キャスター:
日本には技術的優位性があるのか。

高市大臣:
優位性がある。

松山キャスター:
なるほど。

日曜報道THE PRIME
日曜報道THE PRIME

今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論!「当事者の考え」が分かる!数々のコトバが「議論」を生み出す!特に「医療」「経済」「外交・安全保障」を番組「主要3テーマ」に据え、当事者との「議論」を通じて、日本の今を変えていく。
フジテレビ報道局が制作する日曜朝のニュース番組。毎週・日曜日あさ7時30分より放送中。今動いているニュースの「当事者」と、橋下徹がスタジオ生議論。