G7広島サミット開催を前に、被爆地・広島の中高生がニューヨークの合唱フェスティバルに参加した。緊迫する世界情勢を受け、ウクライナ語にも初めて挑戦。平和を願う若者たちの思いを歌声に乗せて世界へ届けた。

唱歌「ふるさと」をウクライナ語で

春休みの3月21日。広島市佐伯区の「広島なぎさ中・高等学校」で朝から練習する合唱部の生徒たち。

広島市佐伯区の「広島なぎさ中・高等学校」
広島市佐伯区の「広島なぎさ中・高等学校」
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合唱部はアメリカ・ニューヨークで行われる合唱フェスティバルに参加することになっている。本番を約1週間後に控え、練習に余念がない。

腹筋を使って発声練習をする合唱部の生徒たち
腹筋を使って発声練習をする合唱部の生徒たち

指揮をする合唱部顧問の縄裕次郎先生。歌の指導にも熱が入る。

披露する舞台は世界が憧れる音楽の殿堂・カーネギーホール。「ひろしま平和の歌」など5曲を歌う。その中の1曲、日本を代表する唱歌「ふるさと」では初めてウクライナ語に挑戦した。

日本語、英語、ウクライナ語の3カ国の歌詞が書かれた楽譜
日本語、英語、ウクライナ語の3カ国の歌詞が書かれた楽譜

広島なぎさ中・高等学校 合唱部・福冨香乃さん:
ウクライナ語は学校で習わない言語なので、こういうことがなければ学ばなかったかもしれない。テレビのニュースなどから情報を受け取っていたが、自分たちから発信することはなかった。この機会に発信できたらいいなと思います

平和への思いを歌に込めて渡米

出発を前にした壮行会。被爆地・広島で育った意味を歌に込めたい…。生徒たちは校長先生の言葉をかみしめる。

広島なぎさ中・高等学校・上野和之 校長:
平和都市・広島の代表として、世界中の人々に平和の思いを皆さんの歌声で伝えてもらえることを願っています

合唱部・大町百々恵 部長:
被爆地である広島から、現在戦禍に巻き込まれているウクライナへ熱い平和の思いが届けられたら私たちはうれしいです

期待と不安を抱えての出発。世界に平和の思いを伝えるため、初めてニューヨークに降り立った。

アメリカ・ニューヨーク
アメリカ・ニューヨーク

現地で練習の合間をぬって準備するものがあった。
それは、折り鶴。

同じフェスティバルに参加するウクライナの合唱団に舞台上で手渡すことになっている。

4年ぶりの合唱祭 折り鶴に平和託す

3月30日、いよいよ本番の日を迎えた。

ニューヨーク合唱フェスティバルは東日本大震災の復興を願って2012年から始まった。2023年はコロナ禍を経て4年ぶりの開催である。
広島なぎさ中・高等学校の合唱部の出番。これまで練習を重ねた仲間と、カーネギーホールの舞台に立つ。

カーネギーホールの舞台に上がる生徒たち
カーネギーホールの舞台に上がる生徒たち

合唱部・大黒天花 副部長:
これから披露するのは「ふるさと」です。今日は日本語・英語そしてウクライナ語で歌います

大黒さんが客席へ向けて英語でそう話すと、小さな歓声が上がった。

日本人の心の歌として多くの人々に歌われてきた「ふるさと」を3カ国の言語で合唱。中高生の透き通る歌声がホールに響きわたる。

会場から拍手が送られる中、ウクライナの合唱団へ心を込めて折った鶴を手渡した。その折り鶴を手にしたまま、ウクライナの合唱団は歌い始めた。

遠い国だったはずのウクライナ。しかし、今回の経験でその距離が縮まった。平和への思いをウクライナへ、そして世界へ届ける活動はまだ始まったばかりだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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