5月のG7広島サミットを前に開かれた“ジュニア会議”。G7各国出身の高校生24人が広島に集まり、4日間にわたり「平和」「持続可能性」などについて協議。核廃絶と広島、長崎の被爆とその影響を全世界で共有すべきとする「成果文書」を発表した。
この会議に参加した広島の女子高生の取り組みと思いを取材した。

G7各国出身高校生が核廃絶、核軍縮への思いを共有

3月27日から4日間行われた「G7広島サミットジュニア会議」。

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広島の高校生のほか、G7各国出身で日本在住の15歳から17歳までの高校生24人が「平和」「持続可能性」「多様性」の3つのグループに分かれて、原爆資料館を見学したり、グループディスカッションを行った。

原爆資料館にはメンバー全員が訪れ、“被爆の実相”に触れたほか、8歳の時に被爆した小倉桂子さんの証言に耳を傾けた。

カナダ出身 カイ・オリバーダウストさん:
私は原爆による被害や惨状を初めて目の当たりにして衝撃を受けました。

最終日には、これまで話し合った内容をまとめてグループごとに「成果文書」を発表。(「成果文書」は広島サミット県民会議のホームページに公表されている。)

「平和」のパートでは「ヒロシマとナガサキへの原爆投下の被害と人類に与えた影響について世界中で共有していくべきだ」と提言。

イギリス出身 ステファン・ジョンソンさん:
G7広島サミットで各国の首脳には世界の平和に繋がるような具体的な解決策を提示してほしいと思っています。私たちの議論や提案がサミットに取り入れられることを期待しています

カナダ出身 カイ・オリバーダウストさん:
条約や禁止事項によって核軍縮や核廃絶を求めていかなければなりません

広島出身 寺迫桃花さん:
日本はオブザーバーとしてであっても、核兵器禁止条約の批准の交渉に参加するべきです

日本の国際的役割、歴史の重みを実感する授業

「平和」パートの成果文書を発表した寺迫桃花さん(16)は、広島、福山市の英数学館の高校1年生。この学校は国際的な人材育成を目指す小学校から高校までの一貫校で、寺迫さんのクラスは英語での授業がメイン。

ジュニア会議を前に、各国の参加学生とオンライン会議が行われていた。
広島市立大学広島平和研究所・ロバート・ジェイコブズ教授:
日本が核兵器禁止条約に署名していないことに驚いた人はいますか?

寺迫さん:
今の日本は平和な国だと信じていたので、ちょっと驚きました

フランスの参加者:
私はあらゆる場で議論を続けなくてはならないと思います。なぜなら、2回の原爆投下が日本にもたらした影響はまだ続いていると感じているからです

歴史の授業では、いろいろな役を演じることで、その当時のイシューを実感し、考えることも実践。

寺迫さん:
私たちは何を終わらせたいの?
生徒一同:
アパルトヘイト

世界史の授業の一場面
世界史の授業の一場面

寺迫さん:
いつ終わらせたいの?
生徒一同:
今!

これは、1976年に南アフリカで起きた、アパルトヘイト=人種隔離政策に反対する学生らの暴動について学ぶ世界史の授業の一場面。

寺迫さん:
授業で学ぶだけではなくて、自分たちで演じることで問題を身近に感じることができる。みんなで暴動を起こしている人たちのビデオを見たり、入り込んで演技することで色んな人のことを考えるきっかけになる

寺迫さんは幼いころをカナダのバンクーバーで過ごし、様々な国籍の人たちと関わってきた。

小学生の頃から世界史に興味があり、ハワイにある真珠湾や原爆資料館を訪れ、戦争の悲惨さ、そして平和の大切さを積極的に学んできたという。

ロシアのウクライナ侵攻でジュニア会議参加を決断

そんな中、ジュニア会議への参加を後押しする出来事が、ロシアによるウクライナ侵攻だった。

広島にはウクライナから35家族57人が避難。このうち2人が寺迫さんが通う英数学館に編入。アレクサンドルさんが寺迫さんと同じクラスに入った。

寺迫さん:
最初すごく驚いた。自分と同じ年の子が、故郷から家族と離れて1人で言葉も分からない国に来た事。携帯電話で翻訳しながら話したり。体育の授業とか、イベントも一緒にやった。体育祭と文化祭とか楽しい思い出がいっぱいあります

アレクサンドルさん(写真中央)
アレクサンドルさん(写真中央)

アレクサンドルさんは2022年9月、家族の元に帰ったが、寺迫さんは定期的に連絡を取り合っている。

ジュニア会議を前に学校では、先生にこんな意気込みを語っていた。
英数学館アメリカ人・ジェイソン・ハリス先生:
あなたが各国出身の学生を原爆資料館や慰霊碑を案内するなら、あなたは彼らにどんなことを感じたり学んだりしてほしい?

寺迫さん:
私は世界から核兵器をなくすことを勧めたい。核兵器保有、非保有など事情が異なる学生と話をすることで平和とは何かについて話してみたいです

寺迫さんとほかの高校生らの思いは「ヒロシマとナガサキへの原爆投下の被害と人類に与えた影響について世界中で共有していくべき」という成果文書に込められている。

「成果文書」は広島サミット県民会議のホームページに。

(テレビ新広島)

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