3月8日は、国連が定める“国際女性デー”。この日にちなんで、女性について考えるテーマで取材した。

"女性〇〇"からの脱却「女子アナやめましょ」その真意は?

2022年、関西テレビの竹上萌奈アナウンサーがつづったある文章が、文藝春秋の「SDGsエッセイ大賞」の優秀賞を受賞した。そのタイトルは「【女子アナ】やめましょ」。

【女子アナ】やめましょ:
「女性弁護士」や「女性警察官」など、女性を強調した呼び方にさえ異議が唱えられつつある現代で、いまだに「女子」とくくられる私たちの職業は不気味だ。

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「女子アナ」という呼び方を”不気味”と表現することで、女性だけ性別を強調されることへの疑問を、note(メディアプラットフォーム)に投げかけた。

≪note文章≫
「『器量・若さ・清潔感・素直さ・笑顔…男が女に求めるものが“女子アナ”なんだよ!』と、昔、飲み会の席でおじさんに唾を飛ばされながら力説されたことがある。今思うと寒気がするが、当時新人だった私は華やかな世界で活躍したいという思いから、その理想像を目指すものと、うのみにしてしまったが、次第に違和感を覚えていく」

なぜ、こんなことを書いたのか?

竹上萌奈アナウンサー:
ニコニコしていて、あえて言ってしまえば、飾り物のような扱いの中に自分の価値を見出していくのが、女子アナの仕事なんだっていうのも違和感でありましたし。我々が女子アナであることに甘んじているという状況を、無意識に発表し続けることによって、これは良くない方にも加担しているんじゃないのかなって思えるようになりました

「女子アナ」に対する違和感は、「災害報道」の研修で宮城県の小学校を訪れた時、決定的なものになった。

竹上萌奈アナウンサー:
人が亡くなったり、命がかかった現場で取材をしたり、お仕事をさせていただくっていう時に、飾り物ではいけないでしょ、そんな生半可な気持ちで亡くなった方がいるとかそういうお話を聞くっていうのはあり得ないでしょと

(Q:この時に「女子アナ」をやめたと?)
竹上萌奈アナウンサー:
「やめよう」と自分の中で、その時は誓ったという感じですね

“男性中心”の落語会…伝統破る魅力とは?

同じように職業に「女性」をつけて呼ばれている人がいます。落語家の桂 二葉さん(36)。2021年、日本一の若手落語家を決めるNHK新人落語大賞で、女性で初めて大賞を受賞した。

上方落語界でいま最も勢いのある噺家に、竹上アナウンサーは聞いてみたいことがあった。

二葉さんは、大阪市出身の36歳。彼女が出る公演はいつも満席で、チケットは毎回、即完売する人気ぶりだ。

二葉さんのファン:
元気が本当に出るんです。笑えない時に、二葉ちゃんの落語見せてもらったときにすごくパワーもらえて

二葉さんのファン:
夫:彼女のファンで
妻:お父さんが一番大ファン。主人写真撮ってもらって
夫:大事に携帯においてます。声も高いしね、聞いてて心地ええな

よく通る声と子どもや、振り切った“アホ”など愛嬌のあるキャラクターが魅力的な二葉さんの落語。

しかし、男性中心の落語界で随分悔しい思いもしてきたと言う。

落語家 桂 二葉さん:
「女やからできひん」というふうに言われているのがずっとあって。男の落語家が男を演じて、男の落語家が女を演じる、で、子ども演じる、そのパターンで出来上がってきてる芸能。やり手が女に代わると、結構違和感があるんですね。例えば、なりきられへん役とかもある、大きい商家の旦那とか、それは持ち合わせてないので、要素

「なりきれない役」をどう演じているのか…?二葉さんは、演じる人物を性別や年齢で型にはめず、自分の中でとらえたイメージでしゃべるようにしている。

男性を演じるときも不自然に声色を変えたりはしない。

落語家 桂 二葉さん:
どんな登場人物も私がしゃべっているという気持ちでしゃべっています。自然であること、嘘がないことですね。なんかこう芝居しているなっていうかね、自分の気持ちがこもってないなっていうの分かるじゃないですか。ああいうの嫌なんですよ、だから嘘がなくしゃべりたい。

“女性落語家”への違和感 賞受賞も「女性初」だから注目?

自身の持ち味を生かし伝統を打ち破ったことが評価され、NHK新人落語大賞では、審査員全員が満点をつけての圧勝だった。

さらに、2022年、大阪の天満天神繁昌亭で一年で、最も貢献のあった落語家に贈られる「第17回繁昌亭大賞」を受賞。これも女性で初めてだった。

上方落語協会 笑福亭 仁智 会長:
やっぱりこの時期(コロナ禍)にね、動員力があるというのはすごい力ですわ。ことし17周年は繁昌亭の顔は、桂二葉やというようなことでやろうと思ってます

落語家 桂 二葉さん:
恐れ多いですけども、お役に立てるなら一生懸命やりたいと思います

活躍するようになりメディアで取り上げられる時、いつもついてまわるのは「女性落語家」という肩書だった。

そんな二葉さんと竹上アナウンサーが「女子○○・女性○○」について語り合った。

落語家 桂 二葉さん:
NHKの新人落語大賞って、女性初なんですよ、女性初だから、これだけ取り上げてもらっている

竹上萌奈アナウンサー:
女性落語家ってやっぱり枕につくじゃないですか、記事とかになると、そういうの見て二葉さんはどう感じる?

落語家 桂 二葉さん:
何かビビってんのんかなとかね

竹上萌奈アナウンサー:
ビビってる!?

落語家 桂 二葉さん:
何かとりあえず付けときたい、みたいなね。上のおっさんらが付けとんねん、絶対。怖がってんちゃうかなとかも思います

竹上萌奈アナウンサー:
怖がっているっていうのは?

落語家 桂 二葉さん:
何ぞ付けとかな、自分が安心せぇへんのちゃうかな、とか。知らないですよ?

ちょっとモヤっとする…肩書に“女性”必要? 

竹上萌奈アナウンサー:
「女性」って付けることで、ちょっとだけランク落ちるんじゃないかなみたいな?

落語家 桂 二葉さん:
何ちゅうのか…下に置いとくみたいなね

しかし、この憤りがまだうまく世間に伝わっていないことも実感している。

竹上萌奈アナウンサー:
どうしても、そういう今思ったようなことを男性に言うと…

落語家 桂 二葉さん:
引くでしょ

竹上萌奈アナウンサー:
フェミニストだったのか

落語家 桂 二葉さん:
そういうこと言うてんちゃうねんと、ただ、差別なくね、みんなが楽しく生きていけたらいいってことじゃないですか。この女性落語家の“女性”っていうの取るの、しばらく時間かかるかもしれないですけど、やっぱりだんだんなくなってくると思う。私らが言うたり、行動したり

竹上萌奈アナウンサー:
やっぱり言うことって大事

落語家 桂 二葉さん:
言うことって結構大事ですよね。言わんと分かれへんですもんね

竹上萌奈アナウンサー:
直接、「嫌です」とか言えるタイプでは正直なくて

落語家 桂 二葉さん:
言うたげましょか、一緒に

女子アナとしてではなくアナウンサーとして、女性落語家としてではなく1人の落語家として、その道のプロとして頑張ってやっていきたい…2人は、そんな気持ちを確認し合った。

(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月6日放送)

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