地球にやさしい秘密は“エコスメインキ”

東京・中央区にあるコスメショップ「Maison KOSÉ銀座」では、白地にベージュピンクのラインをあしらった、バッグのようなデザインの春らしいギフトボックスが、大人カワイイ色合いのアイシャドウやフレグランスなどとともに並んでいる。

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このギフトボックスには、地球に優しいヒントがあった。

Maison KOSÉ販売員:
こちらのボックスのピンクの部分は、化粧品を再利用したものになりまして…

東京・北区にあるコーセー製品開発研究所では、化粧品を再活用する取り組みを行っている。

使われなくなった化粧品を粉末状にしたもの
使われなくなった化粧品を粉末状にしたもの

新商品の開発や色見本を作る過程などで発生する“役目を終えた化粧品”を形を変えて再活用。

コーセー研究所・築山文彦さん:
我々はメーカーとしても作る責任があるので、やはり循環型というか、どこにも負担をかけないような形で化粧品を提供できるっていうのは、我々としても非常にメリットが大きい。

こうして“役目を終えた化粧品”を顔料に置き換えた、印刷用のインキ“ecosume ink:エコスメインキ”が誕生した。

モーンガータ×コーセー×凸版印刷

“エコスメインキ”は3社がタッグを組んだことで実現した。

凸版印刷マーケティング事業部・安河内雅人さん:
凸版印刷はサステイナブルな取り組みにチャレンジしているが、余ってしまった、廃棄されているものを再利用して、お客様に届けたいと思っていて、化粧品の中身というなかなか再活用ができてこなかったものを、新たにインキという形にできているのはすごく価値がある。

“エコスメインキ”は、廃棄コスメから作る絵の具を開発した会社「モーンガータ」がコーセー、凸版印刷とタッグを組んだことで実現。

キラキラとして発色も良い、アイシャドウから作られたインキ
キラキラとして発色も良い、アイシャドウから作られたインキ

アイシャドウならではの、キラキラとしたラメやパール感が加わり、落ち着いた色味ながらも
華やかさのあるインキに仕上がった。

”エコスメインキ”を使ったギフトボックスの展開図
”エコスメインキ”を使ったギフトボックスの展開図

“エコスメインキ”を使って、ギフトボックスの展開図が印刷され、

光を反射するピンクラメのライン
光を反射するピンクラメのライン

できあがったボックスに光を当てると、ピンクのラインのラメが上品な輝きを放つ。

このギフトボックスはコーセーの路面店、Maison KOSÉ銀座店と表参道店の2店舗にて、商品を購入した人に数量限定で提供。なくなり次第終了となる。

今後は印刷用インキだけでなく、役目を終えた化粧品を店舗資材や文具に生まれ変わらせる計画も進行中。化粧品業界全体のアップサイクルがさらに広がりそうだ。

モーンガータ・田中寿典さん:
我々が開発した絵の具だけではなく、印刷用インキをはじめ、いろんな領域の分野の技術に落とし込んでいくことで、有効利用される量も増えて活用しやすい素材になっていくのかなと思います。

“廃棄処分”がブランド毀損リスクになる時代

「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
今回の試み、いかがですか。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
マスク着用が原則不要となったことで、化粧品売り場も賑わいを見せています。

化粧品は、その種類の多さから衣料品よりもリサイクルが難しいとされ、さらに衛生面などの問題から違う役割を与えるのもなかなか難しいのです。

化粧品を違う商品にアップサイクルするサステイナブルな取り組みが、化粧品業界で広がっていけばと思います。

内田嶺衣奈 キャスター:
捨ててしまうのは、“もったいない”。この“もったいない”、何とかできないかという発想とチャレンジが大切なんですよね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
経済産業省の商業動態統計によると、ドラッグストアのコスメ関連商品の在庫率は350%。つまり販売額の3.5倍の在庫を抱えています。

その結果、売れ残りも発生し、毎年生産量の1~2割が廃棄処理されているといわれています。

化粧品に限らず、売れ残り商品の割安販売はブランドイメージの毀損につながりかねず、タブー視されてきました。

2018年にイギリスの高級ブランド「バーバリー」が売れ残り商品の大量廃棄で大きな批判を受けるなど、今は廃棄処分することこそ、ブランド毀損のリスクにもなり得るのです。

今回のような、地球に優しい化粧品のアップサイクルは、消費者にも支持されるはずです。

消費者を巻き込む“循環型“ビジネス展開を

内田嶺衣奈 キャスター:
化粧品のアップサイクルの輪が、大きく力強く回るようになるといいですね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
今回の試みは、消費者の引き出しやポーチの中にある、使い切れていないアイシャドウやチーク、口紅などの化粧品にも応用可能なのではないでしょうか。

私たち消費者は、キッチンから出るゴミのリサイクルへの取り組みはうまくなりましたが、
バスルームや化粧台から出るゴミのリサイクルは遅れているといわれています。

化粧品業界がサステイナブルな業界となり、消費者を巻き込む形で循環型のビジネスを展開する必要があります。化粧をし、華やかに装う人類の文化を、美しい地球と一緒に未来に受け渡すことができるといいですよね。

内田嶺衣奈 キャスター:
私自身も、物によってコスメを使い切る難しさを感じています。肌に直接ふれるものなので、使用期限なども気にしなければいけないんですよね。

こうした化粧品のアップサイクルの輪が広がると、多くの女性が感じている「いつか使うかも」と捨てられず、つい、ため込んでしまっている悩みが解消されるかもしれません。

(「Live News α」3月14日放送分より)