長崎県の島原半島を中心に、鉄道、バス、フェリーなどの事業を展開する「しまてつ」こと「島原鉄道」。鉄道路線は長崎県の諫早駅と島原港駅を結んでいるが、少子高齢化やコロナ禍で年々利用者が減少している。厳しい経営が続く中、あの手この手で集客アップを図ろうとしている。

顧客満足度90%以上の人気観光列車

午前11時。長崎県の中央に位置する諫早市の諫早駅から島原半島の島原駅に向けて、一風変わった観光列車「しまてつカフェトレイン」が出発した。

しまてつカフェトレイン
しまてつカフェトレイン
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アテンダント:
移動中はガタンゴトンと揺れる列車の中で、いつもとは違うゆっくりとした時間をお過ごしいただければ

観光列車「しまてつカフェトレイン」の内部
観光列車「しまてつカフェトレイン」の内部

島原鉄道の観光列車「しまてつカフェトレイン」は、通常の列車を一部改装しただけのアットホームな雰囲気で、土日を中心に年間100本以上運行している。

乗客:
せっかく島原に行くので、おいしい食べ物を知れるので、一緒に乗りたいなと思いました

タイからの乗客:
(車窓が)きれい。乗ってよかった

諫早から島原までを2時間ほどかけて結び、車窓を楽しみながら島原半島でつくられたスイーツなどを堪能できる。

この日のメインスイーツは、雲仙市小浜町の洋菓子店「オカモト・シェ・ダムール」の人気商品「イチゴのタルト」。

オカモト・シェ・ダムール 岡本大心さん:
小浜でとれたイチゴを農家から直接いただいて使用している、県外からのお客さまも利用されるので、活性化にうちが協力できることがあればどんどん使ってもらいたい

小浜産の新鮮なイチゴをふんだんに使ったタルトで、たちまちお客さんは笑顔に。

イチゴタルトを食べた子ども:
おいしかった

母親:
(しまてつカフェトレインの乗車は)3回目くらい。子どもたちも好きなので

列車は、島原市の大三東駅に立ち寄る。コマーシャルのロケ地として全国的に知られ、島鉄もSNSなどで積極的にPRをしてきた「日本一海が近い」駅だ。

福岡からきた客:
やっぱりほっとする、落ち着く

カフェトレインの顧客満足度は、脅威の90パーセント以上。その仕掛け人が2018年に就任した永井和久社長だ。

島原鉄道・永井和久社長:
一番大きいのは、地元の頑張っている生産者やお店の人に協力していただいて、地産地消を楽しめる食材を提供できるところが、ほかの観光列車にない魅力になっているのではないか。4年前に考えて種をまいた部分が、コロナ禍でも少しずつ芽を出して花が咲いてきた

逆転の発想!「赤字」をアピール

少子高齢化やコロナ禍の影響で、島鉄の利用者は年々減少傾向にある。
2021年度は103万人あまりと、ピーク時の1966年度の5分の1ほどに落ち込んだ。それでも、地域の足としては欠かせない存在で、定期券を利用する人が利用者の約6割を占める。

高校生:
島鉄がないと学校に行けないですね。僕はあり続けてほしい

島原鉄道は、利用者の減少から2008年に島原外港・加津佐間を廃止し、2018年には長崎バスグループの傘下に入った。永井社長は、長崎バスを運営する長崎自動車の出身で、経営再建を託された。

島原鉄道・永井和久社長:
元々30年ぐらい事業は赤字。地元の市とか県とか国とか、補助金とか支援を頂きながら運営している中で、われわれ自身も甘えてばかりいるわけにはいかない

取り組んだのが、インパクトのあるグッズ展開だ。
約30種類あり、中でも地元の生姜を使った「”アカジ”ンジャーシロップ」や、3色全てが赤の「赤字ペン」と、商品名にあえて「赤字」と入れる自虐っぷり。

消せるインクを使用した「赤字ペン」
消せるインクを使用した「赤字ペン」

「赤字ペン」は2代目で今回はなんと赤字(書いた文字)を消すこともできる。

島原鉄道・永井和久社長:
私自らが明るく「赤字です」とか、「厳しいです」とか話をして、そこに取り組んでがんばろうという姿勢があれば、まわりの皆さんも少しは癒やされるのではないか

島鉄社員は「社長自らグッズの提案をしてくれるので、作るほうからしたらやりやすい」と笑顔で話した。

島場鉄道はオフィスもユニークだ。
島原市にある本社入り口に書かれている社名では、「島原鉄道」の「鉄」は、本来、金偏に「失」だが、「金を失う」ことを避けたい思いから、「失」ではなく、「矢」が使われている。

地元企業とのコラボなど挑戦続く

島鉄は地元企業とのコラボグッズ作りも進めている。

丸政水産営業企画部・吉田尚久部長:
「のり海苔でござる」という商品です。これが本当の「ノリ鉄」です

島原市の丸政水産とタッグを組んだノリやふりかけ。パッケージには列車のイラストも描かれ、旅のおみやげとしても人気だ。

丸政水産営業企画部・吉田尚久部長:
コロナ禍で消費が低迷している。ノリから魚などいろいろやっているが、店に出している商材が厳しかった。島原市も人口減少という問題を抱えている中で、地元企業同士がタイアップして商品を作ったら面白いと思った

明治時代に地元の有志が民間の力で立ち上げた島原鉄道は、2023年で創業115年を迎える。

島原鉄道・永井和久社長:
鉄道は115年の歴史で駅の周辺に学校、病院、役場など全部がそろっている、それがまちづくりを形成している。しっかりと将来に向けて地域づくり、暮らしを守るためにわれわれがどういう形で存続していくか、そういった議論をしていきたい

苦境に立たされながらも光るアイデアと地元との連携で、島原鉄道はこれからも日々進化を続ける。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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