2月23日に天皇陛下が63歳の誕生日を迎えられた。誕生日当日には、即位後初めてとなった「天皇誕生日一般参賀」が行われ、抽選で選ばれた約4000人が祝賀のため皇居を訪れた。また、誕生日に先立ち2月21日には記者会見が行われ、宮内庁はご近影として、庭園課が育てた盆栽を眺めながら歓談されている様子を公開した。

陛下のおことばに込められた思い、「盆栽」にまつわるエピソードなど、フジテレビ皇室担当の橋本寿史解説委員に話を聞いた。

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陛下の「平和への思い」

――お誕生日に先立って行われた21日の記者会見では、宮内記者会から代表質問が事前に提出されました。

陛下のお考えを直接伺う機会が少ないですし、記者も本当に色々と考えて、この時期・このタイミングでお伺いしたいことを質問として5問出させてもらっています。

地方への行幸啓(天皇・皇后がご一緒に外出されること)が復活したことについて、ご家族について、宮内庁の情報発信の強化について、体調について、そしてこの1年の振り返って印象に残っている出来事、今回はこの5つについて伺いました。

――この中で印象に残ったことなどありましたか。

お伺いしたいことを記者が質問を出しているわけですが、この1年を振り返るということに関しては、陛下がご自由にお話できる部分があります。今回は、戦争のある世界情勢について、平和ということについて、陛下がたいへん思いをお持ちだということがよく分かりました。

たとえば「ほかの国々ともお互いの違いを乗り越えるべく対話を重ね」というおことば。それから、「世界の多様な文化や価値観、政治や社会に目を開いて、そこから何かを学び取ること、それとともに、国内でも多様性を涵養(かんよう)していくことが不可欠です」という、国連難民高等弁務官を務められた緒方貞子さんの言葉の引用。本当に色々なことに、示唆に富んだおことばを述べられたというのは大変印象に残った部分です。

陛下はずっと平和に対する思いというのを抱かれています。この時代に戦争が起きていることに大変心を痛められているというのを感じる内容でした。

「盆栽」「庭園」「エレナ王女」…皇后さまとの出会い

――お誕生日に合わせて映像も公開されました。

ご近影ということで、宮内庁から映像が公開されました。映像に出てきたのは「サンシュユ」という大きな盆栽、それと宮内庁が監修して扶桑社が出している『宮中の盆栽ー大道庭園の四季』という本です。

――陛下は中学生の頃から盆栽がお好きで、友人から「じい」というあだ名で呼ばれていたというエピソードもありましたね。

そうですね。今回の映像に関して、一つ気になることがあったわけですけれども、これがお庭にまつわるお話なんです。映像公開に際して宮内庁で説明があったのですが、その中でちょっとドキッとするワードが出てきたんですね。

大道庭園で行われる「春飾り」の準備(2022年12月)
大道庭園で行われる「春飾り」の準備(2022年12月)

宮内庁の庭園課が、「大道庭園」という場所で盆栽をいろいろと手入れして育てているわけですが、その大道庭園について「陛下お一人で行ったのは、スペインのエレナ王女をお連れした際です」という説明があったんですね。

「エレナ王女」というお名前は、私たちはそれを見聞きするとちょっとドキっとするのです。

――それはなぜでしょうか?

エレナ王女は、今のスペイン国王・フェリペ6世のお姉さんに当たる方で、1986年に来日されました。上皇さまが東宮御所に住まわれている時で、そこで歓迎のレセプションが行われたんですね。そして当然その時には陛下も浩宮さまとして出席をされているんですけれども、実はそこには皇后さまもお父さまに連れられて来ていたんです。そこで初めて陛下と皇后さまが出会われたわけです。

ですから、「エレナ王女」という名前を聞くと、陛下と皇后さまの初めての出会いというエピソードにつながり、実は盆栽にはそういった意味合いも込められているのかなとも思いながら映像を拝見してしまいました。

“希望”を示す「春」

――そして2月23日には、陛下にとっては即位後初めてのお誕生日の一般参賀が行われました。

今回は約4000人が宮殿の前に集まって祝賀し、そこに対して陛下もおことばを述べられました。

おことばの中で、陛下は「春」という言葉を2回使われていました。陛下のお誕生日の時期ですと、春に向けての第1歩というような、そんな季節の中で「春」と聞くと、私たちも温かく希望に満ちた感じを持ちますよね。

上皇さまは、お誕生日(12月23日)の一般参賀の時には「冬至」という言葉を使われていました。「冬至」というと、そこから今度は日が1日ずつ延びていく。上皇さまも前向きな、希望のようなことの中で「冬至」という言葉を使われていたのかなと思ったので、陛下も「春」という言葉で、これから先の希望というものを示されたのではないかと考えました。

――新年一般参賀に続き、愛子さまも初めて出席されました。

愛子さまは、新年の一般参賀に出られたこともあり、とても落ち着いた雰囲気でいらっしゃいました。両陛下とお話しをされているようにも拝見しました。
それから、皆さんマスクをされているんですけれども、笑顔なんだなってすごく感じました。

おことばでも述べられていましたが、陛下の方のお気持ちとしては、新型コロナの拡大で参賀を希望する方が全て来られないということを本当に残念に思っているということ、それと同時に、たくさんの方が来られてますので感謝のお気持ちを示されていたということですね。

――新年一般参賀の時には、第1回目の参賀の動画が約2時間後に宮内庁のホームページにアップされたという話がありましたが、今回は?

今回は1時間かからずに公開していたので、このあたりもスキルアップを感じました。

――SNSを担当する新設の広報室ももうすぐ始動しますね

4月からですね。令和も5年になりましたし、今の時代とともにあるのが皇室の姿だというのは陛下の思いでいらっしゃいますので、「今の時代」というのをどう読み解くかというのが宮内庁の仕事として大切なことだと私は思っております。

FNNプライムオンラインYouTube・皇室チャンネル「皇室親話」より)

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プライムオンライン編集部
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