eスポーツの注目が高まる中、新潟県上越市の高校に1月、「eスポーツ部」が発足した。部活動としてゲームの練習に励む6人の部員たち。活動から見えてきたのは、新たなコミュニケーションの形だった。

「eスポーツ」が部活動に!

新潟県上越市の関根学園高校。放課後になると生徒たちは車に乗り込みある場所へ向かう。

関根学園高校
関根学園高校
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そこで待っていたのは、暗い室内に鳴り響く大きなゲーム音に、カラフルな電飾。七色に光るキーボードをたたき始めたのはゲームだ。

生徒:
僕たちは、パソコン部eスポーツ科です!

これはれっきとした部活動。1月に関根学園に発足したばかりのパソコン部eスポーツ科で、現在は6人の部員が所属している。

関根学園高校 パソコン部eスポーツ科 安中一吹 部長:
チームワークというか、人と話していて楽しい。ちゃんと、いい雰囲気の部活にできているなと実感している

コンピュータゲームやビデオゲームなど、電子機器で行う対戦をスポーツとして捉えるeスポーツ。この日は、声を掛け合いながら、自動車を選手に見立てたサッカーゲームの練習に取り組んでいた。

生徒:
ああ、惜しい!移動のときとか便利だよ

オリンピック種目への採用を目指す動きや国体の開催などで注目されるeスポーツ。2025年には2020年と比べ、市場規模が約100億円拡大し、約180億円に上る見込みだ。その一方で…

関根学園 渡邉隆 理事長:
今、日本人の中でゲームというと遊び。「学校でそれをやらせるのか」ということで、なかなか大変。保護者の方たちの理解が非常に重要

発足には高いハードルも

ゲーム=娯楽というイメージがあるため、部活動としての理解を得るのが難しい現状もある。

保護者:
ゲームという観念が抜けないので、やり過ぎて学習に支障をきたすのではないかと心配はあった

学校の部活動として行うには、他にも高いハードルがある。

学校法人 関根学園 渡邉隆 理事長:
道具が高いので、色々な人の協力がないと、この世界というのは支えきれない

eスポーツに必要なパソコンやイスなどを揃えるには1000万円ほどの費用がかかるため、資金の調達面で大きな課題が。それでも学校側は、このeスポーツに大きな可能性を感じていた。

学校法人 関根学園 渡邉隆 理事長:
国も性別も年も環境も全く違う人がゲームを通ずることによって、フリーの中での人間関係ができる。障害のないフリーの世界をわたしも見てみたい

身体的な能力に左右されにくい「ゲーム」というツールを使うことで、誰もが平等に楽しめる世界。「そこで構築される新たな人間関係が教育面でも重要な役割を担う」と、関根学園の渡邉理事長は話す。

そんな思いに共感したのが、デジタル技術で地域の魅力の向上を目指す地元の企業だ。

地元の企業はeスポーツを始め、eビジネス・eラーニング・eサイトシーイング・eヘルスケアと5つのeを使い、上越市を盛り上げていこうと「5e協議会」を立ち上げ、その起爆剤となればということで出資を決意。

5e協議会に属する数社から出資を受けることで、パソコン部eスポーツ科は活動を始めたのだ。

丸互 前川秀樹 社長:
「eスポーツをいずれちょっとやりたいな」というのは最初から考えていた。上手い具合に、地元の高校でそういう部活動をやっていきたいという話を聞いて、じゃあということで始めた

ゲームを通して高齢者と交流

室内で行うイメージが強いeスポーツだが、こうした協力への恩返しの意味も含め、部員たちは積極的に地域へと飛び出していく。

関根学園 パソコン部eスポーツ科 安中一吹 部長:
初めて。今、ちょっと緊張している

不安を抱きながら、たどり着いたその場所は…

山中麻央アナウンサー:
介護施設です。こちらでは、お年寄りの皆さんが楽しそうにeスポーツをしています。そのそばでは、関根学園高校の生徒たちが一生懸命、手取り足取り、ゲームのやり方を教えています

生徒:
これで車のハンドルのように動かして

介護施設を訪れる前の不安はどこへやら。ゲームを通して、お年寄りとの触れ合いを楽しむ生徒たち。

施設の利用者:
よかった~

そこには年齢や性別に関係なく、ゲームを楽しめる平等な世界が広がっていた。

施設の利用者:
なかなか尻込みしていてできなかったけど、楽しかった

施設の利用者:
私ね、長生きしてよかったと思った

生徒:
生徒とか、おじいちゃんとか関係なく、みんなで一緒にゲーム仲間みたいな感じで楽しめてすごくよかった

eスポーツで交流をすることで、認知症予防になるのではないかと、福祉サービス会社の社長もeスポーツに期待を寄せていた。

リボーン 飛田尚文 社長:
eスポーツをすることで脳の活性化、手先を使う。これは認知症を防げるというふうに思っている。このようなことが社会全体に広がっていけば、色々な問題が解決するのではないかと思う

学校法人 関根学園 渡邉隆 理事長:
人間の考え方のベースとして、すごく大切なものをつくる。上越市の発展につながるし、地方から世界に伝わっていく大きなコミュニケーションツール。それがeスポーツだと、私は思っている

画面と向き合っているだけにも見えるeスポーツ。しかし、その画面の先に広がっているのは、新たなコミュニケーションの形だった。

全国大会での優勝を目標にゲームに励む部員たち。月に一度、プロのゲーマーに来てもらい、直接指導も受けている。

関根学園 パソコン部eスポーツ科 安中一吹 部長:
どんどんチームワーク高めていって、技術も磨いていって、優勝に一歩ずつ近づけるように頑張っていく

eスポーツという新たな分野の部活動がどんな未来を描いていくのか、彼らの今後に注目だ!

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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