韓国の少子化は日本の未来なのか?
日本では去年の出生数が初めて80万人を割ったが、韓国はさらに危機的な状況のようだ。
この記事の画像(24枚)FNNソウル支局の仲村健太郎記者がお伝えする。
日本の未来?少子化が止まらない韓国
韓国の去年の出生数は約25万人で、人口比で換算すると、日本の4分の3程度になります。
そして、合計特殊出生率、つまり「女性1人が生涯に産むと見込まれる子供の数」も2015年以降、下落が続いていて、去年は過去最低の0.78でした。
OECD加盟国のうち1を切っているのは韓国だけで、日本との比較でも、ここ20年以上常に下回っています。
この超少子化の背景には何があるのか。実際に子育て中のご家庭を取材してきました。
ソウル近郊に住むファンさん一家です。夫婦と保育園に通う息子の3人で暮らしています。
ファンさん一家・妻:
本当に思ったより子供1人を育てるのにお金がたくさんかかるなと感じている
物価の上昇に加え、急速な利上げにより住宅ローンの支払いは当初の3倍に膨らみました。日本円でおよそ45万円の月収のうち、半分近くがローンに、残りは食費や光熱費に消え、貯蓄はできていません。
ファンさん一家は将来の教育費への不安感も大きく、2人目の子供は持たないことを決めました。
ファンさん一家・妻:
ほかのママたちは英語幼稚園なども考えていて、私たちもどうしても考慮しない訳にはいかない。英語幼稚園は月150万ウォン(約15万円)くらいかかると聞きました
そもそも結婚する人が減っている
経済的な理由を挙げる人が多い一方で、出生率の低下について、韓国統計庁は「婚姻数の減少が影響を及ぼした」としています。
去年の婚姻件数は1970年以来で最少となっていて、この理由の1つが高騰する住宅価格です。
ソウル市内で働く30代のキムさんは2011年、大学進学を機に地方から上京しましたが、これまで厳しい住宅環境に悩まされてきました。
結婚を検討中の男性・キムさん(30代前半):
ここが私の住んでいたところ。“1号”と書かれていますが、実際に入ると部屋が“6つ”。部屋1つが2坪ぐらいですごく狭く、ベッドと机を置けば終わり。
韓国では結婚にあたり、男性側が新居を準備するという慣習も残る中、キムさんも交際相手と生活できる部屋を探しています。
しかし、現在ソウルのマンション価格は平均でおよそ1億3000万円。若者には到底手の届かない存在になっています。
去年、未婚の理由を尋ねた調査で「資金不足」の次は「雇用が不安定」でした。
韓国では若者の失業率が6.4%と日本の数値を上回っていて、格差社会で過酷な競争にさらされ、結婚や子育てを選ばない若者の厳しい現状が伺えます。
韓国で広がる“非婚主義”
こうした中、韓国では今、“非婚主義”という言葉が定着してきています。
非婚という言葉は、未婚とは異なり、「私は結婚しません」との意志が込められています。
ソウルで放送作家として活動するクァクさんも「非婚主義者」の1人で、3年前からインターネット上のメディアで結婚しないライフスタイルを紹介しています。
リスナーは約1800万人。大半が女性で、結婚後の育児や家事などの男女間格差を非婚の理由に挙げているといいます。
“非婚主義者”クァク・ミンジさん:
女性が犠牲にしなければならないことが多すぎて、(リスナーは)これまで自分が積んでいたキャリアなどを維持しながら生きていけるのかという心配がとても大きい。
去年の末に発表された世論調査で「結婚は必ずしなければならない」と考える人の割合17.6%にとどまり、2016年から9ポイントも下落しました。
若者の間では、結婚式ならぬ「非婚式」を挙げ「一生結婚しません」と宣言する動きも出ています。
「非婚手当」を支給する企業も
配偶者のいない社員が増える中、結婚祝い金と同じ水準の「非婚手当」を支給する企業が相次いでいます。
例えば、ある大手百貨店は「結婚しない」と表明した40歳以上の職員を対象に支援金や5日間の休暇、さらには、結婚式に贈る“花輪”の代わりとして“観葉植物”をプレゼントする力の入れようです。
去年9月の制度開始以降、申請者は30人を超えています。
大手百貨店に勤務・男性社員(46):
結婚をしたから優遇を受けて結婚をしなかったから優遇を受けられず、少し疎外される感じがあったが、会社として非婚者にも一緒に気を遣ってくれているんだと思った。
ほかにも独身者を対象に「ペット手当」を支給したり、月に1度、自宅の清掃サービスを提供したり、非婚手当の内容は企業によって様々です。
韓国政府は2006年以降、およそ28兆円の予算を投じて少子化対策に力を入れてきましたが、主に子育て世帯向けの児童手当や保育支援などに偏っていて、未婚率の増加には対応し切れていません。
今後、少子化の問題を解決していくには、住宅価格の問題解消に加え、安定的な雇用や賃上げ、共働きが多い状況下での育児や家事の分担など、社会全体の改革が求められていると思います。
(「イット!」3月3日放送)