1円でも多い方がありがたい「時給」。
今、幅広い業界に激震をもたらしているのが、2月にイオングループが発表したパート従業員の「7%賃上げ」です。
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時給アップの対象となるのは、国内のスーパーなど、グループ会社で働く約40万人のパート従業員。3月以降、平均で7%程度引き上げるといいます。
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イオンのみならず、大手企業がパート従業員やアルバイトの時給を続々アップしています。
1日、一足早く入社式を行ったユニクロなどを運営するファーストリテイリングは、3月から国内の従業員の年収を最大4割引き上げ、それだけではなく2022年9月には、パートやアルバイト約4万人の時給も平均20%アップさせています。
そのほか、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、3月から月間支給額を平均7%アップ。
オリエンタルランドは、4月から時給を一律80円アップ、任天堂も4月給与から基本給を平均10%アップさせると発表。
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なぜいま、パート従業員をめぐる“時給アップ合戦”とも言える状況になっているのか。イオングループが大幅時給アップに乗り出した影響は?
専門家に詳しく聞きました。
人件費、年間約300億円増か? 賃上げの“ワケ”
イオングループは、スーパー・ドラッグストア、ディスカウントストアなどの事業を展開するグループ企業で、店舗数は全国で2万8店舗にも及びます。
国内のグループ従業員数は約50万人、そのうち40万人がパート従業員です。
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小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上している、経営コンサルタントのムガマエ株式会社の岩崎剛幸氏は、様々な企業がイオンの動向に注目している点として、日本の卸・小売業で働く非正規雇用者のうち“約6%がイオンのパート従業員”ともいわれている点があるといいます。
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さらに、2023年の春闘の賃上げ目標が「5%程度」だったのに対して、イオングループが「7%」としたことに、岩崎氏は 「賃上げ率が1%違うと人件費は数十億かわるため、7%はかなりの英断」と話します。
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今回の引き上げで、グループの人件費は年間で約300億円増加するといわれていますが、岩崎氏はこの増加を「企業価値を上げるための投資」と捉えています。
というのも、現在小売業は復調の兆しはあるものの、スーパーなどは、従業員の生産性を高めていかないと生き残りが厳しい状況にあるのです。
生産性を高めるためには、優秀な人材を確保していかなくてはいけません。
さらに、イオンの賃上げ発表が2月1日だったことにも意味があるといいます。
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ムガマエ株式会社 岩崎剛幸 氏:
3月に入ってから「春闘」で、決まっていくんですね。賃上げが。
ちょうど1カ月前というタイミングで発表すると、業界の中でもインパクトが大きいので、早めに従業員の方のモチベーションを上げて、お店の売上げを上げていくというところに動きたかったのが一番大きいですね。
パート賃上げの背景に“人材の取り合い競争”
なぜ、ここまで人材確保に力を入れるのか。その背景にあるのは、「人材の取り合い」です。
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以前は、優秀な人材を「スーパー同士」や「ドラッグストア同士」、扱う商品が同じ業態での人員取り合いでした。
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しかし、最近では、「ドラッグストア」でも野菜・肉などを販売するなど、扱う商品が似てきたことなどから、限られた人員を「スーパー」「ドラッグストア」「ホームセンター」「ディスカウントストア」などで、取り合いになっているのです。
そんな中、パート従業員の人たちは何を基準に企業をえらんでいるのでしょうか?
ムガマエ株式会社 岩崎剛幸 氏:
やはり一番大きいのは「時給が高い」、正社員であれば「給料が高い」ところがどうしても人気ありますよね。
「賃上げ」の波は中小企業にも
大企業だけではなく、中小企業からもパート従業員の時給を上げる動きが出てきています。
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京都市に本社を置く、サプリメントなどを販売する「わかさ生活」。従業員数150人、そのうち約3分の1がパート従業員だといいます。そのパート従業員の時給を、2月から200円、割合にすると15%もアップしているのです。
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3年前から、パートとして働く女性に話を聞くと…。
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「わかさ生活」で3年前からパート勤務 伊藤有輝子さん:
心のゆとりができたっていうのがすごく大きいところで、本当に嬉しかったし、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。もう給料明細を見て「やったー!」って。(月収で)だいたい2万6000円から2万7000円くらい(増えた)。かなり大きいです。
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賃上げにより、人件費は以前から数千万円増えたといいますが、それでも大幅な時給アップに乗り出した理由として、「わかさ生活」人事の杉浦綾氏は、「多くのパートが接客営業をしている“企業の顔”とも言える存在。そういった人のモチベーション向上のため」だと話します。
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広がっていく賃上げの波…。岩崎氏は最後に、根底にある“問題”について指摘します。
ムガマエ株式会社 岩崎剛幸 氏:
そもそも「働き控え」みたいなことが起きている状況がありますから、そこを改善していくのが大事なのと、もちろん中小企業だって賃上げできるものならしたいと思っているところが多いんです。だけど、エネルギー料も高騰しているし、原材料も高騰している、しかもそれをなかなか価格転嫁できていない状況があるわけですから、賃上げもできない。
しかも、社会保険料もだんだん拡大していますから、企業にとって厳しいわけです。
だからそこをまずしっかりと、短期的には政府が負担をしていく、保証をしていくというのをやった上で、全体的に賃上げと年収の壁を上げていくと。これを同時並行でやらないと厳しいと思います。
(めざまし8 「わかるまで解説」より3月2日放送)