日本航空は空気抵抗を減らし、燃費を向上させることでCO2を削減できる機体を公開した。

“サメ肌”で空気抵抗”減”→消費燃料”減”

日本航空などは機体の表面の一部にサメ肌のような凹凸をつけ、空気抵抗を減らすことで消費燃料を抑える実証実験を行っている。

実際に機体を触って確かめる記者
実際に機体を触って確かめる記者
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井上文那記者:
飛行機のお腹の部分に加工が施されています。かなり細かい凹凸なので、目で見てもあまり分からないんですが、触ると少しざらっとしています。

これが機体全体に加工されると、最大2%の燃費が向上。

大型機で羽田からロンドンまで飛行した場合、7トンのCO2削減につながるとしている。

現在は2機で実証実験を行っていて、2025年度には導入機体を増やしたいとしている。

機体の一部をサメ肌上にする取り組みは、全日空でも行われていて、2022年10月から運航している。

航空業界”燃費向上”に様々なアプローチ

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
航空機の機体をサメ肌にすることで燃費の向上をはかる試み、長内さんは、どうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
JALは2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、それに向けての取り組みになります。

2022年10月にANAも”サメ肌加工”による燃費向上を発表しましたが、今回、JALもそれに続く形となりました。

航空業界の脱炭素へのアクションというと、従来の原油からつくる燃料と比べるとCO2の排出量を大幅に減らせる、バイオ燃料のSAFが注目されていましたが、今後、リブレット(=”サメ肌加工”)は航空業界の流行になるかもしれません。

内田嶺衣奈 キャスター:
脱炭素に向けて、あの手この手で、なんでも試してみようという姿勢は大切ですよね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
そもそも航空業界にとって、燃費の向上はコストの削減にもつながるので、長年、様々なアプローチをおこなってきました。

例えば、航空機の機体を軽くすると燃費が向上するため、様々な技術革新の対象になってきました。

30年くらい前までの航空機は、金属むき出しのピカピカのシルバーが多かったのですが、最近見かけなくなりました。

このシルバー色は、実は塗料ではありませんでした。当時、機体を塗装するとコストがかかり、さらに重量が増すことで燃費も悪化するため、アルミ合金を磨き上げて、そこに酸化皮膜加工をするベアメタルというむき出しの金属の色でした。

それが1980年代の日本で自衛隊のF-2戦闘機を開発する際に、機体に炭素繊維素材を使う技術が確立しました。

その後、アメリカのボーイングや欧州のエアバスも軽量な炭素繊維素材を採用するようになり、いまでも日本は欧米に航空機のボディを供給する重要な役割を担っています。

日本のモノづくりの技が活かされる

内田嶺衣奈 キャスター:
今回の”サメ肌加工”にも、日本のモノづくりの技が活かされているのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
リブレットの溝の深さは50ミクロン。髪の毛の太さ程度のもので、この加工には熟練の職人技が必要となります。

かつては塗装をしないことが燃費向上になっていたわけですが、今後はサメ肌加工を施した塗装が航空機の燃費向上の役割を果たすということになりそうです。

内田嶺衣奈 キャスター:
地球への優しさと、コスト削減を同時にかなえられる、この取り組み。航空業界の共通の目標である脱炭素に向かって、ますます広まっていてほしいと思います。

(「Live News α」2月28日放送分より)

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