福岡市西部を流れる室見川で親しまれてきたシロウオ漁。しかし2023年は、「漁獲量の減少」を理由に「休漁」が決まった。そんな中、市民ボランティアが産卵場を作るプロジェクトに参加し、文字通り「一石」を投じた。

漁獲量が減少しているシロウオ

2023年2月18日に行われたシロウオの産卵場の「造成プロジェクト」。

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岸本貴博記者:
室見川の河口から、約500メートルの地点です。現在、干潮の時間です。大勢の市民が川に降りてきています

シロウオは、体長3cmほどのハゼ科の魚だ。春先に海から上ってきて、川底の石に卵を産みつける。それを待ち受けて「やな」で捕らえるシロウオ漁は、室見川の春の風物詩として古くから親しまれてきた。

しかし…。

福岡大学・伊豫岡宏樹助教:
去年の収穫量は、「やな」を小さくしたこともあるかもしれないが、25~26kgだった。一番取れていた時期のデータは、1,800kgとかそれくらい取れているので、そのデータをもとに、室見川シロウオ組合の組合長と話をして、今年は休漁しましょうとなりました

室見川のシロウオの漁獲量は、1988年には800kg以上取れていたが、その後は減少に転じ、1996年には一気に12kgまで減少した。一時的に増えた時期もあったが、100kg台、200kg台の年が続き、2023年はついに資源保護のための「休漁」に追い込まれた。(※2022年はコロナで休漁)

シロウオの産卵場所が…

福岡大学工学部の伊豫岡宏樹助教は、この産卵場の造成プロジェクトを13年継続している。

福岡大学・伊豫岡宏樹助教:
シロウオは、石の裏に卵を産むって言いましたけど、ひとつは川底に石が出てないといけません

伊豫岡さんは、室見川でシロウオの漁獲量が減った理由として「川幅の拡幅」と「護岸の改修」を挙げている。

今から半世紀ほど前の室見川の様子が残されている。川岸には緑が茂り、豊かな水辺の生態系が形作られていた。

その後、室見川は水害を防ぐことを目的に川幅が広げられ、護岸はコンクリートで固められてしまったのだ。その結果、川の流れは全体的に遅くなり、山から流れてくる土砂が海まで到達せず、川底の石に覆いかぶさるため、シロウオの産卵場所が徐々に失われていったと伊豫岡さんは考えている。

福岡大学・伊豫岡宏樹助教:
それをどうにかするには、川の形を変えたりとか大変なんですけど、それができるようになるまでは、地域の人たちと何かできることはないかなということで、産卵場づくりをやっています

川の変化を実感

呼びかけに応じて集まった約100人のボランティア。土砂に埋まった川底の石をくわで掘り返し、川に投げ込んでいく。

川に石を投げこむことで、川底に再び凹凸ができ、石の下に穴を掘って産卵するシロウオが、卵を産みやすい環境ができるというのだ。

大きな石だけを選んで川底に一直線に並べ、せきをつくる中学生。

ボランティアの中学生:
なるべく、少し隙間を作りながら、密接に置ければいいのかなと

福岡大学・伊豫岡宏樹助教:
せきは面白いですよね。シロウオは、きっと産卵場として使うと思います。川の流れもあるし、水深もある程度浅いし。(中学生に向け)石が浮いていたら卵を産まないから、少し石を踏んでやるといいよ

ほかの参加者も室見川でのボランティアを通して川の環境の変化を肌で感じていた。

参加者:
毎年だったらこの時期、この作業をやるときに「やな」が出てるんですけど、今年はなくなっちゃいましたもんね。ぜひ、産卵場を広げてあげたいなと思ってね

参加者:
絶対、ここに卵を産んでもらおうと思って信念もってやってます(笑)

この日、ボランティアはシロウオが産卵しやすい場所をつくったほか、川の粗大ゴミも回収した。川の中に捨てられているタイヤやビニールシートなどは、川をさかのぼってくるシロウオだけでなく、さまざまな生き物にとっても大きな障害物になるのだ。

室見川のシロウオ漁は、江戸時代から300年以上の歴史がある。半世紀前のように元気よく川を上って来るたくさんのシロウオの姿が見たい。その思いを込め室見川に、文字通り「一石」を投じたボランティアたち。室見川の豊かな生態系を取り戻すためには、市民によるこうした地道な取り組みのほかに、河川の環境を守る根本的な対策が必要といえそうだ。

(テレビ西日本)

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