長野県小諸市の施設で働くインドネシア出身のデウィ・アングライニさんが2022年、全国で初めて技能実習生から介護福祉士に合格した一人となった。入所者から慕われ、アイドル的存在のデウィさん。その働きぶりと外国人の力を必要とする介護現場の実情をお伝えする。

いたわり 優しく

小諸市の介護型老人ホーム「ケアハウスのぞみ」。

介護福祉士資格を取得したインドネシア人のデウィ・アングライニさん
介護福祉士資格を取得したインドネシア人のデウィ・アングライニさん
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デウィ・アングライニさん(29):
昨夜、よく眠れましたか?

入所者:
眠れましたよ

デウィ・アングライニさん:
いつも遅い時間に寝てるじゃないですか

入所者:
寝つきが悪くてね

入所者に優しく話しかけるデウィ・アングライニさん。インドネシア出身の29歳だ。

デウィ・アングライニさん:
これから面会に行きますので、家族が来ますよ。下に行きましょう

入所者:
どこ行くの?

デウィ・アングライニさん:
1階に行きましょうね

介護福祉士の資格を取得

技能実習生として来日して5年。

2022年3月、全国で初めて、技能実習生から介護福祉士の資格を取得した一人となった。施設が期待を寄せている人材だ。

デウィ・アングライニさん:
(資格取得は)うれしいですね。何も言えないぐらい、うれしいです。利用者さんは人によって、性格が違って対応する時も違いますから、もっと勉強したいです

家族を支えるため 5年前に来日

インドネシアで助産師として働いていたデウィさん。10人きょうだいの9番目で、家族を支えようと23歳の時に日本行きを決意した。

デウィ・アングライニさん:
インドネシアだと助産師として(給料が)2万円ぐらいしかもらえませんでしたから、でも日本だと(インドネシアの)10倍ぐらいだから、インドネシアにいる家族を支えることができて、小さいころから日本のアニメをよく見てて、他の国より日本の方が安全な国というイメージがあり、日本に来ました

技能実習制度に「介護」が加わり、2018年、デウィさんは第1期生として今の施設にやってきた。

デウィ・アングライニさん:
他の人の役に立っている仕事だから、介護に決めました。利用者さんから「ありがとう」と言われてうれしいです

努力して勉強 日本語と介護福祉士

来日前に日本語学校で10カ月学んでいたが、やはり、最初は言葉の壁にぶつかった。

デウィ・アングライニさん:
日本語でコミュニケーションとるのは難しいです。(どう克服したのですか?)一生懸命、日本語を勉強しました

いずれ帰国して助産院を開きたいと考えていたが、日本の住みやすさもあって、研修3年で受験資格が得られる「介護福祉士」の試験に挑戦することに。猛勉強が始まった。

デウィ・アングライニさん:
この本は言葉が分かりやすいですけど、これはもう専門級ですね、難しかったです。とても難しいです。仕事終わってすぐ勉強して、毎日2、3時間勉強しました

施設のサポートと本人の努力の結果、みごと合格。「永住」が可能となる在留資格も得られることになった。

デウィ・アングライニさん:
何も言えないぐらいうれしい。信じられない、夢みたいですね

流ちょうに日本語を話しながら食事や入浴などの支援をこなすデウィさん。入所者からも慕われアイドル的な存在だ。

入所者(80代):
日本のことをよく勉強している方で、優しくて、手早くお仕事してます。今のままで続けていただければ良いなと私は思います

入所者(80代):
よその国から来ているだけあってね、真似はできない。立派な方ですよ、なかなか真似できない

毎日、家族と電話

忙しくても毎日欠かさないインドネシアへの電話。介護福祉士になったことを家族も誇らしく思っているようだ。

インドネシアにいる家族と通話
インドネシアにいる家族と通話

デウィ・アングライニさん:
(お父さん、どんなふうに話していますか?)私が日本で頑張っていて、(介護福祉士に)合格したのは両親もうれしくて、家族も自慢げ。他の人の役にもっと立ってほしいと両親が話してくれました

家族(電話):
DEWI Semangat ya!(デウィ、頑張れ!)頑張って

ユニットリーダーに任命

デウィさんは、これまでの働きぶりが評価され、3月から施設の3階フロアを取り仕切るユニットリーダーに抜擢された。

デウィ・アングライニさん:
リーダーになるのはちょっと信じられないですね。信じられないくらい、何も言えない。これからも頑張ります

ケアハウスのぞみ・石原新治施設長:
私も、もう5年見てきてますけども、努力、努力、努力。全てにおいて努力をして、ここまで上がってきてくれた人材です

介護の現場 外国人の力が必要に

介護の現場ではますます、デウィさんのような外国人の力が必要とされている。

要介護の認定者数は増加の一途。全国で2019年度末は669万人だったが、2022年11月末には698万人に。県内も11万2000人から11万4000人に増えている。

それに伴い介護職員の需要も増え、2019年度の職員数は県内で3万7000人だったが、2025年度には4万1000人が必要と推計されている。

賃金の問題に加え少子化もあって日本人の担い手が増える見通しは立たず、外国人の力が必要となっている。

ケアハウスのぞみ・石原新治施設長:
やはり、人手というのは少なくなっています。半分くらいが外国人の方が来て働いてもらっていて、とても戦力となって助かっています。(他に)技能実習生が7名いますけれども皆さん、デウィさんを慕って、デウィさんにいろいろ教えてもらいながら育ってきております

次の目標は「ケアマネージャー」

こちらの施設では介護職員22名のうち、8名はインドネシア、ミャンマー、ベトナムからの技能実習生。

デウィさんは後輩たちの憧れだ。

技能実習生(ミャンマーから):
(デウィさんの)優しいところは、分からないことなんでも聞いていいです、答えてくれます。厳しいところは、仕事で間違ったりしたら全然だめです(笑)。すぐ注意される(笑)

技能実習生(ミャンマーから):
仕事やる時も優しいし、笑顔でやっているから、私もデウィさんのようになりたいと思っています

デウィさんは技能実習生としての期間が終わる2023年8月以降も「在留資格」を得て、日本で仕事を続ける考えです。既に次の「目標」を定めている。

デウィ・アングライニさん:
介護福祉士の次は「ケアマネジャー」の資格を、その目的で今は頑張っています。(外国から働きに来る)皆さんは、何か目的を持って、お金のことだけじゃなくて、他の人の役に立ってほしい、他の人に優しくしてほしい

(長野放送)

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