福岡・糸島市では長年、700トンにも上るカキの殻を数百万円の費用をかけて焼却処分してきた。この問題を解決すべく、再利用の道を模索し、カキ殻をさまざまなものに活用する人々を取材した。

大量の“カキ殻”を再利用

今が旬の「カキ」。糸島市内にはシーズン中、25のカキ小屋がオープンし、40万人を超える人が訪れる。

カキ小屋を訪れた大学生(20代):
5人前食べます! 5kgです

カキ小屋を訪れた大学生(20代):
おなか一杯になるまで食べます。10kgくらい

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それでは、大量に出るカキの殻の行方はどうなっているかというと…。

テレビ西日本・日高真実リポーター:
カキの殻が山積みになっています。ものすごい量です

その量なんと、1シーズンで700トン。糸島市内全てのカキ小屋が、このカキ殻専用廃棄場1カ所に殻を廃棄している。

700トンのうち200トンはカキ小屋から出されたもので、残り500トンは養殖中に死んだカキの殻だ。これらのカキ殻は長年、産業廃棄物として焼却処分されていたが、数百万円もの費用がかかることから再利用の方法が模索されていた。

そこで誕生したのが、JA糸島と漁協が共同開発した、カキ殻を石灰化した「シーライム」と名付けられた肥料だ。

テレビ西日本・日高真実リポーター:
糸島産カキ殻の石灰と書かれています。触ってみても、さらっとしていて臭みは全くありません

作物の成長に欠かせない栄養素であるミネラルを豊富に含むカキ殻は、肥料に適していて、試験的に育てた作物にも大きな成果が現れている。

JA糸島・古藤俊二さん:
カキが時間をかけて育つときに、たくさんの海のミネラルを含んでいく。この魅力っていうのは、ほかの同じような石灰って色々ありますけど、カキ殻にしかない大きなポテンシャルですね

シーライムの販売は年間約1万5,000袋。カキ小屋から排出される200トンの殻全ての再利用に成功している。

学生たちが生み出した「カキ殻ブロック」

しかし、養殖中に死んだカキの殻500トンの使い道はまだ見つかっていない。カキ小屋では、商品としてカキを提供する際、殻の表面の不純物を磨き落とすが、養殖中に死んだカキの殻の表面にはフジツボや海藻が付着したままだ。肥料化には付着物の処理が必要で、そのコストを考えると再利用は難しいのが現状なのだ。

そうした中、九州大学では残りの500トンのカキ殻も再利用しようと、建築を学ぶ学生たちが「あるもの」を考案した。

九州大学大学院・西村香太郎さん:
今も若干、香りがしたりするんですけど、磯の雰囲気を感じられるように含有量をなるべく多く使いたいなっていうのはあって

学生たちが考案したのは、砕いたカキ殻とセメントを混ぜ合わせたカキ殻のブロック。プロジェクトを率いるのは、九州大学大学院の教授やOBの建築家で組織する「BeCAT」。建築を通じて社会課題の解決やまちづくりに取り組む研究・教育チームだ。

副センター長の末廣香織さんは、カキ殻ブロック開発に手応えを感じている。

「BeCAT」副センター長・末廣香織さん:
廃棄物を減らすということもあれば、カキ殻をかなり多く含むものは光を反射するので、より白い色になるので夏場の暑さの低減につながるとか、そういう可能性もあるかなということを我々の間では話しています

「糸島らしさ」を大切に

カキ殻を建築資材にー。その第一歩として目を付けたのがカキ小屋だ。糸島市では安全面などを考慮し、仮設の施設で運営するカキ小屋の常設化を推進している。

学生たちは、その建設にカキ殻ブロックを使う構想を温めているのだ。

九州大学大学院・西村香太郎さん:
もっと糸島が糸島らしさを保ったまま、未来に持続可能的につながっていけばいいかな、みたいなのが1番の思いかなと思います

研究員は、建物の壁だけでなく、テーブルや椅子にもカキ殻ブロックを利用するデザインを考えている。

「BeCAT」副センター長・末廣香織さん:
地域で出される廃棄物を地域でうまく循環するというのが大事なので。お金の問題とか法律の問題とか、いろんな厳しいことがあると思うんですけど、学生と協力して乗り越えていきたいと思います

カキ殻ブロックには、現時点では、加工しやすいカキ小屋から出たものが使用されているが、今後は養殖場から出たカキ殻も活用できるよう研究を進めたいとのことだ。

(テレビ西日本)

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