日韓最大の懸案になっているいわゆる「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」訴訟問題をめぐり、韓国の尹錫悦政権が公表した解決案について、自民党の松川るい外交部会長代理は5日、「おそらく唯一可能な案」と評価した。

出演したフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)で述べた。

尹政権は1月、韓国の財団が韓国企業の寄付を集めて原告への賠償を肩代わりする解決案を公表している。

松川氏は“元徴用工”訴訟問題に関し、「尹政権でないと解決は絶対にできない。これを解決することは日本の国益だ」との見解を示し、「韓国による解決がうまくいくように、日本もできる工夫はするべきだ」と強調した。

元駐韓大使の武藤正敏氏も「解決案はこれしかないのだろうと思う」と話した。

松川氏は、“元徴用工”訴訟問題が解決した折には、輸出にあたって優遇措置を適用する対象国に韓国を復帰させるべきだ、との考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
いわゆる“元徴用工”問題をめぐり、韓国政府が公表した解決案は、韓国企業などが寄付金を拠出し、韓国政府傘下の財団が原告への賠償を肩代わりする案となっている。    

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
この解決案は大きなステップと成り得るか。

松川るい氏(自民党外交部会長代理):
そう思う。尹錫悦大統領は大統領選挙戦中から一貫して日韓関係の改善に向けて深く決意している。全然ぶれていないところは評価するべきだ。今回の解決案のポイントは、原告の同意なく政府が決めれば実行できるところにある。この案の提示に大統領の非常に大きな決意を感じる。詳細はまだ決まっていないが、この筋のどこかでしか解決できないのではないか。もちろん韓国が解決する問題ではあるが、互いに民主主義国で世論があるから、韓国がうまく解決できるように日本はできる工夫はするべきだ。

武藤正敏氏(元駐韓大使):
この解決案しかないのだろうと思う。この解決案を出すにあたって尹大統領が何をしてきたかを見なければいけない。国内的に韓国社会の社会主義的な体質を変えようとものすごく努力している。市民団体ビジネスというのはものすごくもうかるビジネスだ。今まで日韓で合意ができても常にそれを覆して来たのは市民団体だ。それにつられて韓国政府はどんどん後退してきた。文在寅前大統領はこの市民団体ビジネスをものすごくもうかるビジネスに変えてしまった。韓国政府の補助金がいま市民団体に5兆ウォン、5,500億円出ている。毎年4,000億ウォン、440億円ずつ増えていた。その他にも地方公共団体からものすごく金が集まる、寄付金も集まる。だから、市民団体は問題を解決させないように、させないように圧力をかけてきた。韓国社会では「日韓関係をよくしよう」とはなかなか言えない。一方で、「日本はけしからん」と誰かが声をあげると、人々がワーッと集まる、そういう社会だ。ここにメスを入れる。これは尹大統領の一番大きなポイントだ。市民団体ばかりではない、民主労総(全国民主労働組合総連盟)という過激労組に対しても同じだ。

松山キャスター:
日韓間での決着に向けて、韓国側は日本政府の反省や謝罪、おわびというのを改めて求めてくるのではないかとみられている。

松川氏:
韓国との関係で新しい謝罪などはありえない話だ。そもそも徴用工問題では日本政府は謝罪すべきことはないとの立場だ。ただ、徴用工問題が日韓間の信頼関係を損ねている最大の課題、問題で、これが解決された時に日本政府も当然何かコメントは出すと思う。尹政権でないと解決は絶対にできない。これを解決することは日本の国益だ。日韓双方ともに置かれた立場を考えれば、いま以上に日米韓の安全保障連携が必要なときはない。しかも、尹政権以外でこれは多分解決できない。この案はおそらく唯一解決が可能なものだ。なぜならば原告の同意は要らない、国会の関係も要らない、ある意味、政府が決めてしまえば実現できる。日本として、向こう(韓国政府)が持つようにしてやれるギリギリのことは考えるべきだ。新しい謝罪はできないし、日本の被告企業の謝罪もないと思う。そういう制約の中でギリギリどういった工夫ができるのか。もしも解決されたら、日韓でさまざまなことができていくから、むしろ明るい未来に向けてのメッセージ、例えば、小渕・金大中時代ではないが、岸田・尹時代を開いていきましょう、といった未来に向けたメッセージを送るというのを主にして、歴代内閣の立場を維持していくことをアクノレッジする(認める)のがせいぜいではないか。

松山キャスター:
仮に今回韓国側が提示した案でうまくまとまれば、半導体関連物質の輸出で韓国を優遇措置の対象国から除外してきた事実上の対抗措置をどうすべきか。日韓でそれも含め包括的に解決する合意を目指すべきか。

松川氏:
そうすべきだ。輸出管理の問題はもちろん(“元徴用工”訴訟問題とは)別問題だ。なぜ日本が厳格化したか理由は二つある。一つは、実際に韓国の輸出管理体制がずさんだったから。日本が110人態勢でやっている検査を韓国は11人程度だったわけで、実際に当時はずさんだった。もう一つは信頼関係が欠如していること。前者について韓国側はそこそこ改善した。残っているのは信頼関係だ。信頼関係を損ねている最大の問題はこの徴用工問題だから、その解決の道筋が見えるのであれば、この措置をとった理由の根本がなくなる。同時に解決して構わない問題だ。

日曜報道THE PRIME
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