2023年1月、鹿児島空港では3年ぶりに国際線の運航が再開され、3月には海外のクルーズ船の寄港も予定されている。にわかに動き出したインバウンドで、県内経済にようやく明るい兆しが見えている。
今後の課題や新たな戦略を取材した。

韓国から訪れた観光客が向かうのは…

2023年1月12日、韓国からのチャーター便が鹿児島空港に降り立った。訪れた韓国人観光客のお目当てはゴルフ。

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観光客が向かったのは、薩摩川内市、祁答院町のゴルフ場。韓国の首都・ソウルの緯度は日本の新潟県と近く、今の時期、ゴルフ場は積雪などで使えない。

韓国からのゴルフ場利用客:
全部満足している。また来たい

祁答院ゴルフ倶楽部 チェ・インギル総支配人:
季節的にほかの所より暖かいし、おいしい食べ物がいっぱいある。ゴルフもできる、温泉もあることが一番の人気の理由。やっとチャーター便が運航し、鹿児島の空の道が開いた。うれしく思う

ゴルフに、温暖な気候。今回チャーター便の運航を再開した大韓航空が、地方空港の中で最初に再開を決めるほど、韓国人観光客にとって鹿児島は人気のスポットとなっている。

大韓航空 イ・ソグ日本地域本部長:
大韓航空としては、地方空港の中で(鹿児島が)最初の運航になる。(運航初日の時点で)ほぼ完売し、3月以降の延長も検討している

さらに関係者によると、同じく韓国にある格安航空会社のティーウェイ航空も3月以降、チャーター便を運航する見通し。今後は定期便の運航再開にも大きな期待がかかる中、課題もある。

コロナによる人員減少…課題となる地上職員の補充

南国交通 岩切俊一常務:
コロナで2年半ぐらいにわたって縮んでしまった航空業界を元に戻すことは、簡単にすぐ、というのはなかなか難しい

航空機の誘導や荷物の積み降ろし、カウンター業務などを担い、旅客機の運航に欠かせない“グランドハンドリング”と呼ばれる空港の地上職員が不足しているという。

南国交通では、航空会社からの依頼を受けて人員を手配するが、コロナによる国内線の減便や国際線の閉鎖で、コロナ前より最大で70人近くが減ったこともある。現在は30人ほど増員しているが、チャーター便の対応では、国内線の職員を応援で回したという。

南国交通 岩切俊一常務:
航空業界で働きたい人の奪い合いというか、鹿児島だけの問題ではなく、全国的に(人材不足の)傾向がみられるのではないかと思います

南国交通では3月以降、さらに21人を採用する予定だが、少なくとも半年程度の研修期間が必要になる。

南国交通 岩切俊一常務:
国際線の復活というのは、鹿児島県の観光、経済面に非常に大きい好影響があると思っているので、少しでもグランドハンドリングの受託を進めていかなければならない。今、一生懸命急いでいるところ

“外国クルーズ船”で新たな観光客の流れを作れるか

もう一つ、観光関係者が期待するのは、外国のクルーズ船の寄港。こちらも約3年ぶりの再開で、3月から年内に90回の寄港が見込まれている。

クルーズ船の乗客はこれまで、鹿児島市内での買い物などが定番コースだったが、新たに準備が進められているのが大隅半島への誘客。

鹿屋市 ふるさとPR課 原口賢剛課長:
われわれ鹿屋市としてはチャンスとして捉えている。鹿屋港を活用し、大隅にどう波及させるか

クルーズ船が到着する鹿児島市の人工島・マリンポートかごしまからチャーターした小型の高速船で鹿屋港に向かうというもの。

鹿屋市では、2019年から外国クルーズ船の観光客の取り込みを図ろうとしていたものの、直後、コロナ禍に。それでも2022年度は県民を対象に切り替えて直行便の運航を始め、サイクリングやすし握りなど、大隅の魅力を感じる体験ツアーで新たな選択肢として名乗りを上げている。

若松正大記者:
現在使われている桟橋のほか、大隅に新たな観光客を呼び込むため、新しい桟橋の設置も予定されています

県は現在、鹿屋港に新しい桟橋を整備していて、外国人観光客が錦江湾から雄大な桜島を眺めながら大隅に渡るツアーが実現すれば、新たな経済波及効果が期待できる。

小型船を運航する「なんきゅうドック」 今村弘彦会長:
大隅の観光が発展するように、大隅に行ってもらうために頑張りたい

鹿屋市 ふるさとPR課 原口賢剛課長:
鹿屋市としては、5月ぐらいに外国クルーズ船からの誘客を図れるような取り組みをしていきたい

少しずつ動き出したインバウンド。かつてのにぎわいを取り戻し、新たな戦略でさらにプラスを。
コロナ禍で厳しい状況が続いた鹿児島の経済にとって起爆剤となるか、注目される。

(鹿児島テレビ)

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