コロナ禍で注目を集めた「キッチンカー」が、実際の店舗を新しくオープンするケースが愛媛で見られている。どこにでも出向ける車だけでなく、店舗でも自慢のメニューを提供。新たな挑戦に乗り出す狙いとは?

農園が始めたエスニック料理店

KaRuu・伊藤卓也さん:
これはジャークチキン。タマネギとかスパイスとかで漬け込んだ肉を炭でいぶし焼きにする。ジャマイカでは国民食です

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エスニック料理の店「KaRuu」は、松山市堀江町に1月11日にオープンした。看板メニューは、スパイシーな香りが食欲をそそる「ジャークチキン」だ。この店のこだわりは食材から。

KaRuuを経営・廣川慎太朗さん:
これがユーマイサイ(油麦菜)で、これがブロッコリー。特に珍しい野菜は、スーパーに並んでいても手が伸びないと思うので、1回食べてもらって

レタスの一種・ユーマイサイに、独特な香りが特徴のパクチーも。この店、実はエスニック料理向けの野菜を中心に育てる、東温市の廣川農園が始めた飲食店だ。

オープンと同時に第1号のお客さんがやってきた。

店舗スタッフ:
テイクアウト弁当。激辛で1つ

お客さん第1号:
友達から聞いて。友達は、キッチンカーのときにすごくおいしいから通ってたらしいんですけど。知ってから3カ月くらいなんですけど、やっと来られた感じが強いです

ーーこれからはいつでも来たいときに?

第1号の客:
来られます!

店舗になったことで出せるようになった食材も

元々キッチンカーだったKaRuuは、農園で育てたトウガラシを使ったジャークチキンを販売していた。今回、車からお店に変えたことで、メニューにもこんな変化があった。

KaRuu・伊藤卓也さん:
きのう採れたての廣川農園のケールです。新鮮さが全然違います。(キッチンカーでは)生野菜は出してなくて、調理した野菜だけで出していたので。生野菜を出せるのはうれしいですね

キッチンカーでは、衛生上の問題から販売できなかった生の野菜。店舗になったことで、廣川農園自慢の野菜を全面に押し出す一品が完成した。

ケールとブロッコリーを掛け合わせた「アレッタ」など珍しい野菜も含め、10種類もの旬が詰まったオリジナルサラダは、野菜本来の味が存分に楽しめる一品だ。

「アレッタ」など珍しい野菜入りのオリジナルサラダ
「アレッタ」など珍しい野菜入りのオリジナルサラダ

キッチンカー時代からファンの多いジャークチキンにも、野菜をたっぷりトッピング、もちろんサラダがセットだ。

利用客:
自分も農家で、それでオープンするって聞いたので。パクチーなどの香りや素材の味が生きていて。元々、廣川農園の野菜自体がおいしいので、すごくおいしかったです

KaRuuを経営・廣川慎太朗さん:
作りたてとかフレッシュな野菜とか、そういうのはお店じゃないと出せないので、その辺はお店をやってよかったと思います。普段食べないような料理とか、そういうのに触れ合ってもらえれば、僕はいいなと思って

キッチンカーから実店舗に 戦略は?

湯気の先にきらめくのは、炊きあがったばかりのごはん。米は宇和島市三間町で作られた「三間米」だ。しゃもじでまぜると一層つややかに。

Sunlit・池田有佐さん:
めっちゃきれいです。最高です。100点

お客さん:
おいしい

キッチンカー「Sunlit」では、この三間米に愛媛県産食材などを挟んだおにぎりサンドが人気だ。

梅干しとしば漬けを鶏のササミとあえた「うめしそチキン」に、みんな大好き「オムライス」など、見た目もボリュームも食欲をそそるおにぎりが勢ぞろい。

彩りきれいな「うめしそチキン」
彩りきれいな「うめしそチキン」

松山市から訪れた購入客:
(買ったのは)全部で13個です

今治市から訪れた購入客:
オムライス目当てで来ました

オーナーの池田有佐さんが、コロナ禍の2020年から2年半、東予から南予まで愛媛各地を車で走り、今では多くの常連客に愛されるキッチンカーだ。

Sunlit・池田有佐さん:
いつもは黙々とラジオを聞きながらやってますね

キッチンカーから始まったSunlitも、2022年9月に松山市末広町に店舗を構えた。
人気のキッチンカーが実際の店舗に挑戦、その戦略を聞いてみると…。

Sunlit・池田有佐さん:
戦略はないですね、本当に

なんと!?
なんと!?

まさかの“戦略なし?” しかし、さらにお店を見続けていたら、人気のヒミツが見えてきた。

店を手伝っていたのは…

開店10分前の午前10時50分。お店にやってきた男性が手にしていたのは…「差し入れ」だというパンだった。

こちらの男性、スタッフさんでしょうか?
こちらの男性、スタッフさんでしょうか?

ーースタッフの方?

Sunlit・池田有佐さん:
じゃないです!常連の、Sunlitのコアファンです

差し入れを持ってきたうえに、オープンの準備も手伝っている。でも、この人は“お客さん”だ。

Sunlit・池田有佐さん:
1年半ぐらい?

オープン準備を手伝う常連客:
ぐらいですかね

続いて、やってきた男性は…

ーーどこから?

購入客:
きょうは内子です。このあとは帰ります

なんとこの男性は、お店に来るためだけに内子から自転車で2時間かけてやってきたという。

Sunlit・池田有佐さん:
2年ちょっとキッチンカーを走らせてきたんですけど、県内いろんなところに行って、その場所場所でいろんなお客さまに出会って、「キッチンカーで行ってました」っていうお客さまも、すごく遠くの方とかも(店に)いらっしゃる

店をオープンしたことでつながりがさらに広がる

キッチンカーの機動力を生かして愛媛全域をまわった結果、熱心なファンが生まれていたのだ。そして、キッチンカーを始めたときから池田さんが大切にしてきたのが、お客さんとの会話だ。

Sunlit・池田有佐さん:
食って人生を豊かにするものだと思うし、一番コミュニケーションをとりやすいものかなって思います

コミュニケーションをとりづらいコロナ禍だからこそ、「愛媛のおいしい食」を通して人と人がつながれる場所を提供する。店をオープンしたことで、そのつながりがさらに広がっているという。

Sunlit・池田有佐さん:
キッチンカーだと、私とお客さまの1対1のコミュニケーションだったんですけど、店舗になると、私とお客さまと、また、そのお客さま同士がコミュニケーションをとれるっていう、コミュニケーションの場としてもいい場所になってるなと感じる

「生産者だからこそ出せる自慢の一品を食べてほしい」「食で人と人を結ぶ場所を作りたい」、コロナ禍で注目されたキッチンカーから、愛媛で今、新しい挑戦が始まっている。

(テレビ愛媛)

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