熱気を帯びる福岡の住宅市場。土地の高騰とともに建築コストも上がっているが、それでも住宅が売れるのは、共働き世帯の増加と低金利の住宅ローンがあるからだ。しかし今、長期金利上昇の可能性に警戒感が広がっている。

福岡の住宅市場「土地はずっと高騰」

福岡市中央区の須崎公園近くに完成予定の「レーベン福岡天神ワンタワー」。

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2022年1月の販売開始からわずか1年で、1LDKタイプから3LDKタイプまで153戸が事実上、完売となっている。

タカラレーベン・松島勇一郎課長:
108平方メートルの3LDKタイプ。リビング、ダイニングで22.6畳、キッチンで3.6畳。このタイプの販売価格は2億円前後です

1LDK3,500万円台から3LDK2億円台と、高額にもかかわらず販売が好調だった理由とは…。

タカラレーベン・松島勇一郎課長:
今、福岡市内というところが、非常に活気が出てきている。開発事業もあって、具体的にビジネスセンタービルとか目に見えて動いているので、街の力がそもそも強い

福岡の住宅市場は熱気を帯びている。福岡市の住宅メーカー「ディー・アンド・エイチ」は30年以上、注文住宅を手掛けてきた。

ディー・アンド・エイチ・松下秀志主任:
4年前くらいから土地に関しては市内、周辺もずっと高騰している状況。まだ、いまから上がっていくのではないかなと。早めに決めたいなという方も多くなっている

福岡市内で住宅を建てる場合にかかる費用は5,000万円程度から。土地の高騰とともに建築コストも上がっていて、その影響は大きくなっている。

ディー・アンド・エイチ・松下秀志主任:
もともと45~50坪で土地を求めていた方が、金額を納めるためにコンパクトな土地で予算を抑えたいという方が増えている。30坪から、32~33坪をお求めになる方が多い

福岡市中央区で建設が進むマンション。地下鉄の六本松駅まで徒歩5分という好立地が売りだ。ファミリーに人気の3LDKは、10年前は広さ80平方メートルが主流だったがこのマンションでは65平方メートルとなっている。

福岡地行・マンション事業部 中村健人さん:
こちらのモデルルームが、六本松の3LDKの間取りになっています。ここに本当は3畳の洋室があるんですけど、外して広めの2LDKの間取りにしています

この部屋の販売価格は約5,300万円。このマンションでは、30戸のうち残りは3戸しかない(2023年1月28日現在)。

福岡地行・マンション事業部 島津裕子事業本部長:
以前だったら、75平方メートルくらいの3LDKを購入されていたお客さまも、5,000万円の予算で買おうとなると、場所を優先したら(今は)60平方メートルとかコンパクトな物件になる。物件価格の上昇に対して、年収が上がるわけではないので

上昇する福岡市のマンションの平均価格全国の給与所得平均年収はほぼ変わらない
上昇する福岡市のマンションの平均価格
全国の給与所得平均年収はほぼ変わらない

平均年収は、ほとんど上がっていないにもかかわらず、福岡で見てもマンションの平均価格は10年間で2,000万円近くも上昇している。それでも住宅が売れるのは、共働き世帯の増加と低金利の住宅ローンがあるからだ。

福岡地行・マンション事業部 島津裕子事業本部長:
金利の影響力をご理解いただいたら、物件価格も大事だが、金利の低いいまは、買い時というのを理解して、購入の最後の一押しになっている

2021年に六本松エリアで新築マンションを購入した男性は、約6,000万円のローンを変動金利にした。

福岡市でマンション購入・30代男性:
4LDKの物件だったのを3LDKにプラン変更して、広さ的には90平方メートルくらい。低金利なので、金利の部分で払う金額が少ないのは、支払総額が低くなるので買いやすかった

日本の住宅市場を支えてきた低金利。しかし日銀は、大規模緩和を修正する方針を定め、長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%に拡大。さらに2023年春には、異次元のかじ取りを行ってきた黒田東彦総裁が交代。住宅ローンも含めた長期金利が上がる可能性もある。

韓国の“不動産バブル”崩壊か

住宅ローンの低金利は維持されるのか。それとも見直しが進むのか。お隣の国、韓国では金融緩和見直しによる長期金利の大幅な引き上げが人生までも左右していた。

FNNソウル支局 仲村健太郎特派員:
もともと韓国では、2022年の夏ごろまで不動産価格の高騰が続いていました。ソウルのマンションの平均価格はこの5年で2倍以上に跳ね上がり、平均で1億円を超える、まさに「不動産バブル」の状態でした

韓国のマンション価格変動率(全国)
韓国のマンション価格変動率(全国)

ところが、韓国の中央銀行は、政策金利を過去最低だった0.5%から3.5%まで引き上げたため、不動産価格が下落。マンション価格の変動率で見ると、2019年から急激に上昇していたものが、2022年後半から大きく落ち込んだのだ。

FNNソウル支局 仲村健太郎特派員:
業界関係者によるとこの動きは、今後もまだ続くとみられ、「不動産バブル」崩壊の兆しと捉えられているようです

ソウルに住む50代のキムさん(仮名)は、約1年前にマンションを購入。価格は日本円で約6,300万円だった。キムさんは貯蓄のほか、家族と知人に1,200万円、金融機関から1,900万円を借り入れた。

しかし、当初2.61%だった変動金利が4.3%まで上昇。そのためローン返済が一気に苦しくなった。

ソウルに住むキムさん(仮名):
未来に対して不安です。ずっと不安、年齢もとったから。家を購入したことを最近、後悔しています

キムさんは、今は2つのアルバイトを掛け持ちしながら、実に収入の9割を返済に充てている。

FNNソウル支局 仲村健太郎特派員:
韓国で住宅ローンの利用者は、平均でも年収の6割を返済に充てているとのデータもあります。住宅ローンの金利は今後も上がる見込みで、マンション価格の下落に歯止めがかかる兆候は見られないのが現状です

キャナル別館 賃貸マンションに建て替えか

韓国で起きている悲劇とも言える現状。日本の長期金利はどうなるのか。

福岡市博多区の複合商業施設「キャナルシティ博多」のイーストビル。2011年に開業したこの建物を巡り、驚きのニュースが報じられた。

濱田洋平記者:
こちらのイーストビル。マンションへの建て替えが検討されていることが分かりました

ネット販売が伸び、店頭販売が厳しくなっている小売業界。関係者によるとイーストビルを取り壊し、今後、賃貸マンションに建て替えることが検討されているという。

福岡市在住の不動産鑑定士は、分譲ではなく賃貸マンションへの建て替えが検討されていることについて、長期金利上昇の可能性が影響しているのではないかと分析している。

不動産鑑定士・扇幸一郎さん:
住宅ローン金利が上がると、払える金額を考えた場合に、この物件は買いにくいという判断になる。イーストビルあたりは場所がいいから、かなりの高所得者じゃないと買えない、分譲マンションになるということで。金利上昇になるかもしれない局面であれば、賃貸の方が安定するという判断をしたのではないか。不動産市場を左右するのは、金利の水準と言っても間違いない。これが最も不動産市場を動かす

不動産市場を左右する金利。利上げは避けられないとの見方が広がる中、警戒感が広がっている。先行きは、不透明だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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