島根・奥出雲町で乳牛の「自然放牧」に取り組む男性の活動が、農林水産省などが農山漁村地域活性化の優れた取り組みに贈る「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」の優秀賞に選ばれた。
男性が目指す“酪農”について取材した。

管理の難しい“自然放牧”で「200年後にも喜ばれる牧場を」

1月18日、奥出雲町役場を訪れたのは、町内で酪農を営む大石亘太さん。「ディスカバー農山漁村の宝」優秀賞に選ばれ、糸原町長に喜びを報告した。

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この賞は、農山漁村地域の活性化につながる優れた取り組みを全国に発信しようと、農林水産省と内閣官房が選定。大石さんは、2022年11月、全国616件の応募の中から、グランプリに次ぐ優秀賞に選ばれた。

大石亘太さん:
やってきたことが、こういった形で認められまして、とてもうれしく思っています

島根・松江市出身の大石さんは、酪農家を目指して雲南市の木次乳業で研修に取り組んだあと、2014年、奥出雲町内に牧場を開いた。ダムを望むロケーションの牧場は、広さ24.5ha。そこで、約60頭の乳牛を自然放牧している。

大石亘太さん:
(牛の)名前はみんなあります。この子は「ナムチョ」、この子は「ムムチク」、あれは…「チルチャック」です

1頭1頭に名前をつけてかわいがる大石さん。日中は牧草地で牛を放し飼いにしている。牛たちがどこへ行くのか、何をするのかは、すべて「牛任せ」だ。

大石亘太さん:
僕が何も持ってないから、興味ない感じですね。「こいつエサ持ってないからな」みたいな、それがこの距離感。でも持っていたら、あっちの子もめざとく見てるんで。(エサをやると)放牧が終わってしまうので…。化かし合いは毎日です

自然放牧による飼育は牛の管理が難しく、飼育できる頭数も限られるが、放牧地の草がエサとなり、飼料代が抑えられる。また、牛たちにとってもストレスが少なく、適度な運動で健康的に育つメリットがある。

こうしたユニークな飼育法に加え、牧場の見学やエサやり、バターづくりなど、体験を通じて楽しめる牧場を目指す取り組みが今回、評価された。

大石亘太さん:
(牧場は)人間が入りやすいような山の形を牛が維持してくれますので、年数をかければ、だんだん公園のような牧場になっていくと思う。200年後にも、地域にこの牧場があって喜ばれるような、価値観が移ろう中でも、未来の人がここに牧場があって良かったと思えるような、そういう牧場づくりをしたいです

コロナ禍に伴う酪農製品の需要低迷や飼料価格の高騰など、酪農を取り巻く環境が厳しさを増す中、大石さんは今回の受賞を弾みに、楽しめる牧場の実現へ、さらに歩みを進めたいと意気込んでいる。

(TSKさんいん中央テレビ)

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TSKさんいん中央テレビ
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