小さな魚が集まり、“大きな魚”のフリをして泳ぐ『スイミー』という絵本を知っているだろうか?
Twitterユーザーのじょうだんさん(@joudan555)は小学生時代に『スイミー』を読み、「本当に魚群って大きな魚に見える形になるの?」と疑問に思っていたのだそう。
そして、福島県いわき市の「アクアマリンふくしま」を訪れた際、その疑問が解決されたというのだ。その瞬間を撮影した1枚の画像がこちら。大きな水槽の中に姿を見せた、細長い体をした1匹の“大きな魚”だ。

そう、実はこの写真、小さな魚の群れである“魚群”を撮影したもの。輪郭部分を見ると、小さな魚が集まって、大きな魚となっていることがより分かるだろう。
じょうだんさんも偶然、撮影できたものだそうで、「たまたま撮れていただけなので本当に奇跡。尾びれや頭の形などスイミーを思い出して懐かしくなった」と話していた。
Twitterでも「すごい迫力ある写真ですね」「まさにスイミーの世界ですね」「すごいです感動しました」といったコメントが寄せられており、12万7000のいいねが付く話題となっている(1月12日時点)。
捕食者から生き残るため…
まさか絵本の世界をリアルで見ることができるとは…。驚きと共に少し夢を感じる瞬間を撮影した写真だ。ところで、飼育員はこの現象を普段から見ているのだろうか?
アクアマリンふくしまの黒潮・サンゴ礁水槽担当の藤井芳さんに話を聞いてみた。
ーースイミーのような魚群の魚について教えて。
キンメモドキ(スズキ目ハタンポ科キンメモドキ属)という魚です。
大きさ:体長約6cm。
生息域:千葉県以南のサンゴ礁域。
特徴など:群れを作り、ときに大群となる。体の割に眼と口が大きく、胸部と肛門に発光腺がある。
食性:動物プランクトン。
普段みられる様子:昼間は岩礁域やサンゴ礁の岩の中などに隠れていて、夜に餌を求めて活発に行動する夜行性。

ーーなぜこのような動きをしているの?
群れは先頭の仲間に付いて行こうとするため、丸い塊や細長い形、時には大きな魚の形などさまざまに形を変えます。
群れの効果は、捕食者に襲われたときに個体が多いことで自身が襲われるリスクを下げる。たくさんの個体が散り散りに逃げることで、捕食者が的を絞りづらくさせる効果があります。他にも群れでいることで餌を見つけやすい、繁殖に有利などの効果もあります。

ーー大きな魚に見えることはよくある?
大きな魚のように見えるのは人によってとらえ方が違うので一概に言えませんが、職員が餌を与える時はよく群れが動くので時には大きな魚のように見えるかもしれません。魚の形に見えても一瞬で群れの形は変わります。

ハート型も!?その時々でいろいろな形
ーーどれくらいの頻度、時間帯で見ることができるの?
群れは常に動くので頻度や時間は一概には言えませんが、キンメモドキの習性から薄暗くなってくる時間帯での遊泳が活発になると思います。

ーー大きな魚の他に、見たことのある魚群の面白い形を教えて。
運が良ければ、ハート型も時々見ることができます。その日その時で、いろいろな群れの形をみることができます。

ーーSNSで話題となっていることに対しては、どう感じている?
「リアルスイミー」と喜んでくれてうれしいです。よく水槽の前で見ているとお客様が「スイミーだスイミーだ」と喜んでいます。自然界と同様のキンメモドキの習性をお客様にお見せすることができて嬉しいです。

「アクアマリンふくしま」では、2階の「サンゴ礁の海」コーナーの水槽で約1万匹のキンメモドキを飼育しており、群れはその全個体で形成されているのだそう。
午後~夕方の時間帯が群れの動きが活発になるとのことなので、いろいろな形の魚群を見たいのであれば、この時間帯を狙ってみるといいかもしれない。
小学校の時スイミーを読んで、本当に魚群って大きな魚に見える形になるの?って疑ってたけど旅行先の水族館で疑いが晴れた歴史的瞬間がこちら pic.twitter.com/ibRFh9wLp8
— じょうだん (@joudan555) January 2, 2023
また、5月7日までスイミーの企画展「絵本すいぞくかん」を開催している。絵本『スイミー』の世界をより楽しむことができるかもしれない。