ジンベイザメなどの大型魚にくっついているイメージがある“コバンザメ”が、壁の一角に集まり、仲良く“寝ている”様子がTwitterに投稿され、驚きの声が寄せられている。

投稿したのは、独学で図鑑や水族館などから魚の知識を学んでいる「夢海@560魚種食べた人」さん(@YUMEUMI27)。午後7時少し前に大阪の水族館「海遊館」で撮影したというコバンザメがこちら。

(提供:夢海@560魚種食べた人さん)
(提供:夢海@560魚種食べた人さん)
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数匹のコバンザメが水槽端の壁に集まって並び、頭の吸盤を使って同じ体勢で壁に張り付いていたのだ。どのコバンザメも上を向いている。

みんな静かに流れに揺られ、その場から動く様子は見られなかったそう。この様子に夢海@560魚種食べた人さんは「閉館間際にみんなで揃って同じところで眠るコバンザメ好き」とコメントしている。

Twitterでも「えーーーっ!!こんなして寝るの!!おもしろーい!!」「ナニこれ!!可愛すぎる」といったコメントが寄せられ、26万9000のいいねがつく話題となっている(8月4日時点)。

実は寝ているわけではない

仲良く集まっている可愛らしい様子だが、普段からよく見られる光景なのだろうか? そもそも本当に寝ているのだろうか?

気になる点を海遊館・魚類担当の喜屋武樹さんに教えてもらった。


ーーこの姿は普段からよく見られる光景なの?

普段から見られます。その中でも特に閉館前はほぼ全個体のコバンザメが集まっています。


ーー実際のところ寝ているの?

日中でも集まっていることがあるので、寝ているわけでは無いと思われます。その場所がコバンザメにとって落ち着く場所なので集まっていると考えています。野生下でもたくさんのコバンザメが集まっていることがあるそうです。

落ち着く場所という理由で集まっている(提供:大阪 海遊館)
落ち着く場所という理由で集まっている(提供:大阪 海遊館)

ーーなぜ、この壁の部分が落ち着くの?

コバンザメを飼育展示している海遊館の「クック海峡」水槽には、水の流れが強い場所がいくつかあります。コバンザメが集まっている場所は、その水の流れが比較的緩やかで、くっつきやすい面なので、みんな集まりやすくその場所で落ち着いているのだと考えています。


ーーこの様子を見てどう思う?

なんでそこが心地いいんかなぁと不思議に思います。

水の流れが緩やかでくっつきやすい壁(提供:大阪 海遊館)
水の流れが緩やかでくっつきやすい壁(提供:大阪 海遊館)

アクリル面にくっつく姿を見られたら超ラッキー

ーー投稿画像の壁の他にも集まる場所はあるの?

実は他に集まる場所は無く、投稿画像の壁にしか集まらないのです。ちなみに、時々2匹ほどアカウミガメにくっついていることがあります。

アカウミガメの甲羅とお腹にくっついている(提供:大阪 海遊館)
アカウミガメの甲羅とお腹にくっついている(提供:大阪 海遊館)

ーー集まり始める時間帯はある?

決まった時間に集まることはありませんが、午前中はエサを与える時間で、コバンザメもそわそわして水槽の中をよく泳ぐため、集まっていないことがあります。

午前中はエサを期待しているのか、水槽を泳いだり、ウミガメにくっついたりしており、午後になると壁に集まっています。


ーー他に、くっつく場所としてはどこがあるの?

できるだけ平らな面を好みます。そのため、でこぼこした擬岩にはほとんどくっつきません。また、アクリル面にも時々くっつきますが、お客様の姿が見えてしまうからか稀です。なので、壁を好んでくっつくのだと考えています。一方で、アクリル面にくっついているときは、コバンザメの名前の由来でもある、コバンの部分が良く見えるので超ラッキーです!

アクリル面にくっついているラッキーな姿(提供:大阪 海遊館)
アクリル面にくっついているラッキーな姿(提供:大阪 海遊館)

ーーTwitterで話題となっているが、それに対してはどう感じている?

実は、海遊館の職員数名はコバンザメが壁に集まっていることを知っていて、社内で何度か話題になっていました。今回Twitterで話題になり、お客様にもこの興味深さが伝わったのだと感心と喜びの気持ちでいっぱいです。


ーー最後にコバンザメの魅力を教えて。

コバンザメは皆様ご存知で有名な魚ですが、実は未だ謎が多い生き物なのです。背びれが変化してできた小判のような形の吸盤は、ざらざらしたサメの体やぬるぬるしたエイの体にもくっつくことができる、そのくっつき能力の高さから、人間の生活に役立つことが期待され研究されています。

ですが、実はくっつくだけでなく、ジンベエザメに付いていっているコバンザメは、時々ジンベエザメから少し離れた位置を泳いでいるのですが、ジンベエザメが泳ぐ水流をサーフィンするときの波のように利用しているのか、ほとんどヒレを動かさずにジンベエザメと移動する事ができているのです。こんな興味深いコバンザメについて、今後も海遊館で発見があったら積極的に発信していこうと思います。

正面から見たコバンザメ(提供:大阪 海遊館)
正面から見たコバンザメ(提供:大阪 海遊館)

壁の一角に集まるコバンザメたちは寝ているのではなく、くっつきやすい場所で落ち着いていたのだそう。もしかしたら休んでいたのかもしれない。ちなみに、自然界でどのような場所で寝ているのかは分からないという。

海遊館では、この謎が多いコバンザメを常設展示の「クック海峡」水槽で7匹、「太平洋」水槽で1匹飼育しているという。そわそわエサを待ち水槽中を泳ぐ姿、カメと共に泳ぐ姿、そして壁や水槽のアクリルにくっつく姿、いろいろな姿を見せるコバンザメを実際に見に行ってみるのもいいかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。