ベランダからの転落事故はほんの十数秒で起きる

楽しいホリデーシーズンがやって来ました。 

子供たちがいつもより長い時間家にいる時期です。祖父母の家に集まったり、イベント等で友達が遊びに来たりする機会も多くなりますね。保護者が目を離したすきに…事故は一瞬で起きます。まさかと思わずに、今すぐにできるチェックでしっかりと予防しましょう。 

子供の安全に詳しい、NPO法人Safe Kids Japanの大野美喜子さんにお話を伺いました。

NPO法人Safe Kids Japan 大野美喜子さん
NPO法人Safe Kids Japan 大野美喜子さん
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大野さんは、ベランダからの転落事故はほんの十数秒で起きるといいます。本当にちょっとした時間で。小さな子供だけでなく、10歳児の転落事故の例もあるとのこと。そして日本の標準的なマンションのベランダの柵を子供は乗り越えることができるという実験結果もあるといいます。 

早速、窓とベランダを点検してみてください。 

チェックその1 子供がひとりで出られないようにしていますか

大野「ベランダからの転落事故などは親が見ているときは起こりません。目を離したときに起きます。だからこそ子供が“ひとりで”窓を開けられないようにしておくことが大切です。」 

ポイントは子供が「ひとりで開けられない窓」「ひとりでベランダに出られない対策」なんです。 

島田「うちも子供がまだ小さいのでベランダにはなるべく出さないようにしていますが。」

大野「『うちは転落防止対策として普段から子供をベランダに出していないから大丈夫です』という方が結構いますが、それは対策ではありません。ある程度の子供は自分で鍵を開けてしまいます。子供が自分で開けることができない窓にしましょう。 」

島田「いつも鍵をかけて、備え付けのダブルロックをかけています。」 

大野「それでは十分とは言えないです。ダブルロック、チャイルドロックを子供が開けられないという検証が行われているかどうかは疑問です。その検証も10年以上前のものだという指摘もあります。
また、もしかしたら大人が開けているところを見て覚えてしまうかもしれませんし。大切なのはやはり『ひとりで開けられない鍵の工夫』です。ぜひ子供の手の届かないところに補助鍵の使用を検討してください。そんなに値段も高くなく、インターネットで購入できます。」 

★子供の手が届かない場所で自分が操作しやすい場所に取り付けられるものを。 
★自分がベランダに出ているとき以外は常に補助鍵をかけておくクセをつけて。 
★通販ですぐに手に入ります。検索ワード「窓ストッパー」「補助鍵」「転落防止」などで検索してみて。 

大野さんおすすめの補助鍵
大野さんおすすめの補助鍵

島田「これから帰省する方、帰省先でも取り付けてもらうのも大事ですよね。 」

大野「祖父母の家でも実際に事故は起きています。パパママそれぞれが責任をもって自分の親にきちんと伝えることがポイントです。義理のご両親にはやっぱり言いにくいものですからね(笑)」 

チェックその2 ベランダに子供の足がかりになるものを置いていませんか 

大野「下の2枚の写真は実際の、あるお宅のベランダです。どちらも子供にとっては危険なところがありますが、それぞれどんな点かわかりますか?」 

島田「1は緑の植物の植木鉢がたくさんあっておしゃれですね。でも大きな植木鉢が柵の近くに置いてあるのは心配です。2はよく見るようなスタイルのベランダですね。きれいに片付けられています。室外機も柵から離れているし…? 」

大野「そうですね。1の植木鉢は要注意です。特に柵の近くのものは子供の足がかりになります。窓の近くに寄せるか、ある程度の年齢の子供なら外に出してある植木鉢を柵の近くまで運んでしまうことも考えられますから、室内にいれましょう。子供が小さいうちはベランダに物は極力置かないようにしましょう。」 

「2はポイントが2つあります。1つ目は洗濯物干しのポールです。ポールを足がかりにしてしまう危険性がありますので、面倒ですがポールを抜き取って室内に保管しましょう。
そして2つ目は室外機です。確かに手前の室外機は柵との間に十分な距離がありますが、奥の室外機は上ると柵に届く可能性のある距離です。柵と60センチ以上離れたところにあるかどうか確認してください。柵との距離が取れない場所にある場合は室外機に登れないようにして危険性を下げることが必要です。」 

島田「室外機に登れないようにするには、どうすれば? 」

大野「イラストのように、室外機に登れないような斜めの板(アクリル板など)を取り付けると子供が登れなくなります。足をかける隙間を作らないように設置します。」 

大野「日本の建築基準法ではベランダの柵は110センチ以上と定められています。しかし110センチの法律に合致している柵でも転落事故は実際に起きています。110センチを乗り越えられる3歳以上の子供は多くいます。つまり、日本のベランダの高さの基準は子供を守るようにはできていません。
また、ご自分の家のベランダそのもののデザインもチェックしてみてください。流行りの『明り取り』は子供が足をかけられます。ほかに柵そのものが横になっていてそこに足をかけて登れるものもあります。『明り取り』部分もアクリル板で覆うといいでしょう。ただ、賃貸だとネジを打ち付けるのは難しいですよね。その場合はやはりまずは子供がひとりで出られない補助鍵を取り付けてください。」 

チェックその3 子供たちともう一度ベランダの危険性について話をしておこう 

大野「小学生以上の年齢の子供には、ある程度、教育も効果的です。年長さんくらいから理解できるようになると思います。ベランダの事故の危険性をしっかり話しておきましょう。また、危険性を理解できるようになった大きなおにいちゃん、おねえちゃんには『子供だけでベランダには出てはいけないこと、それが年長者としての責任』ということをしっかりと伝えましょう。」

島田「具体的にどんな言い方がいいでしょうか? 」

大野「ストレートに伝えます。親がいるときに一緒にベランダで話してもいいですね。『ここから落ちると大けがをしたり、死んでしまったりする』と。だから『登ってはいけない』、『ひとりで出てはいけない』と常日頃から言い聞かせておくことは大事なことですね。冬休み中の今、もう一度しっかりと伝えてください。」 

今回の取材で大野さんが繰り返し指摘していたのは、そもそも、皆さん安全と思って入居している家族向けと言われる集合住宅であっても、子供の安全面に配慮されている造りになっているものは少ないということでした。 

本当は政治、行政、社会全体で転落予防のために変えていかなければいけないと訴え続けているが、実際は法律も何も変わっていないし、深刻な転落事故も減っておらず、むしろ増えていると言います。 

今の段階では保護者が予防、対策するしかないと身に沁みました。 

子供の命を守るために。 

年末年始、子供がいるすべての2階建て以上の家庭でもう一度、窓、ベランダの再点検をお願いします。補助鍵を付けましょう。おじいちゃんおばあちゃんもぜひご協力をお願いします。 
行政などの対策の取材を今後も続けたいと思います。 

【執筆:フジテレビアナウンサー・報道局解説委員 島田彩夏】
【イラスト:さいとうひさし】

(資料、写真提供:NPO法人Safe Kids Japan)  

島田彩夏
島田彩夏

人の親になり、伝えるニュースへの向き合いも親としての視点が入るようになりました。どんなに大きなニュースのなかにもひとりひとりの人間がいて、その「人」をつくるのは家族であり環境なのだと。そのような思いから、児童虐待の問題やこどもの自殺、いじめ問題などに丁寧に向き合っていきたいと思っています。
「FNNライブニュース デイズ」メインキャスター。アナウンサー兼解説委員。愛知県豊橋市出身。上智大学卒業。入社以来、報道番組、情報番組を主に担当。ナレーションも好きです。年子男児育児に奮闘中です。趣味はお酒、ラーメン、グラスを傾けながらの読書です。