一度も登院しなくてもボーナス
なんとも「うらやましい」話が、「良識の府」参議院で起こっていた。今年7月の参院選でユーチューバーのガーシーこと東谷義和氏がNHK党から出馬し、約28万票の得票数で当選し、国会議員になった。

ところが当選後、ガーシー氏は一度も国会に姿を現していない。アラブ首長国連邦のドバイへの滞在を続けていて、「身の危険があるため帰国できない」と説明しているが、ガーシー氏への歳費は支払われ続けており、12月には初当選した新人として188万円のボーナスが支給された。
参議院VSガーシー氏
前代未聞の事態に、「良識の府」も対応してこなかったわけではない。参議院の議院運営委員会では8月にガーシー氏が提出した「海外渡航届」を許可しないと全会一致で決め帰国を求めたものの、ガーシー氏は帰国しなかった。
10月にも議員運営委員長名でガーシー氏の帰国と登院を求める文書をNHK党側に渡したものの、NHK党側は「臨時国会では帰国及び登院の意思がないことを改めて確認した」と回答。さらに立花党首は「国会に来ていないだけで、犯罪をしているわけではない。参議院が参議院議員を辞めさせるのは難しいはず」との見解を述べた。

さらに12月、議院運営委員会はNHK党所属の国会議員らを通して、ガーシー氏に海外渡航の理由について文書で質問、これに対しガーシー氏は、自身のインスタグラムで回答を公開した。
この中でガーシー氏は「当選しても日本に帰らず海外で政治活動をしていくと公約の一つに掲げた」と主張、「来年帰国して通常国会に出席することを考えているが時期については未定」としたうえで、帰国しない理由として「私の暴露に批判的な者から不当逮捕、不当勾留があるのではないかと危惧している」と説明した。
また安倍元首相の銃撃事件などを挙げて「脅迫、攻撃的な書き込みを受けており、帰国しても果たして大丈夫なのか不安が解消されれば国会へ出席したい」とした一方で、「私の身に危険が発生した場合は、石井準一委員長が先頭に立って参議院から警察庁、警視庁へ安全確保の協力要請をして頂くことをお約束願いたい」と注文を付けた。
そして、「衆議院にはない良識の府参議院で最初に『リモート国会』を実現させようではないか」と締めくくった。
「懲罰委員会も検討」 N党は「問題視せず」
ついに臨時国会が終わっても出席しなかったガーシー氏に手を焼く国会だが、立憲民主党の参院議員幹部は「議長からの招集の発出があり、なおかつ出席しないなら、懲罰委員会等の検討等も含めて、手順を追ってそういった段階に進んでいくと思う」との見解を示した。

一方でガーシー氏が所属するNHK党の国会議員は「海外で政治活動を議員としての活動をするということを伝えた上で当選しているので、党として国会に登院しないことを問題視しない」とした。そして「党としてガーシー氏の海外で活動したいという意思は尊重したい」としている。
当のガーシー氏も自身のインスタに国会への出席について「法的義務はないよな?義務にしてもーたら、病欠やゴルフで来てない議員も処罰対象なるからなー。ま、気長に待ちーな」と余裕を見せている。
過激投稿も「国会の外での活動」
ガーシー氏は、かつて有名人と交流していた経験から、暴露系ユーチューバーとしてその名を馳せたが、国会議員になった後も激しい投稿を続けている。
11月には自身のインスタで岸田首相に対し「こいつはほんま消えた方がええわ 総理としても、議員としても、人としても、価値がなさすぎる」、「こんなカスに敬語つかわんでええわ はよ消えろ岸田!子分と一緒に!!!」などと投稿。

国会議員としての品位に欠ける言動に対して、参院幹部も苦々しく思うものの、「ガーシー氏の言動は国会内のことではない。国会内でそういうことを言うなら懲罰委員会の可能性があるが、国会内のことではないので、やらない」と述べるに留めた。
「登院せずに給料をもらい続ける」という異例の事態に「国民の心情としてはよくわかる」(野党議員)とするものの、出席を求めることが国会としての精一杯の対応であるのが現状だ。
警視庁 ガーシー氏に聴取要請
そんな中、警視庁が、YouTubeの動画などで、著名人を脅すなどしたとして、脅迫と名誉毀損の疑いで、ガーシー氏を捜査していることが明らかになった。今月24日、弁護士を通じて、ガーシー氏に対して、任意での事情聴取を要請したという。
ガーシー議員の投稿動画をめぐっては、複数の著名人が脅迫を受けたとして警視庁に告訴状を提出し、受理されていた。

任意聴取の要請について、NHK党の立花党首は、27日午後、記者会見を行い、ガーシー氏本人から「日本に戻って任意の事情聴取に応じる」意向を伝えられたことを明らかにした。
会見で立花党首は、ガーシー議員とラインでやりとりしているとした上で、「国内に戻ってきて事情聴取に応じることについては、本人から先ほど連絡があって、受けたいと。事情聴取に応じる意向だ」と話した。立花党首によると「本人は来年1月か2月に戻りたいという意思はずっと持っている」という。
約28万票を得て当選したガーシー氏は、来年、帰国し、その姿を国会で見ることは出来るだろうか。捜査の行方とともに注目される。
フジテレビ政治部