運転開始から40年を超えて稼働している関西電力美浜原子力発電所3号機について、大阪地裁は運転の差し止めを認めない決定を出した。

■40年を超える“老朽原発”

 12月20日、大阪地裁は「原子力規制委員会による審査に問題があるとは認められない」などとして、関西電力美浜原子力発電所3号機の運転停止を求める周辺住民らの申し立てを却下した。

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原告側 井戸謙一弁護士:
強引な、不合理な内容の決定を書くことでしか却下できなかった。司法の在り方としては大変残念な決定である

 1976年から運転している美浜原発3号機。東日本大震災による福島第一原発事故の後、原発の運転期間は「原則40年まで」という、新規制基準が定められた。その上で、特別な点検を受け、耐震性など安全が確認されれば、さらに20年延長を認めるとした。

 その後、美浜原発3号機は安全対策工事を行い、40年を超える“老朽原発”として、去年6月、国内で初めて再稼働した。

 原発再稼働を受け、福井県の住民ら9人が「美浜原発は活断層に近く耐震性に大きな不安がある」「老朽化した原発では事故発生のリスクが高まる」などとして、関西電力に対し運転の差し止めを求める訴えを起こしていた。

 これに対し関西電力は、「新規制基準に適合していて安全性を確保している」と反論した。

■大阪地裁「安全性問題ない」として申し立て退ける

 12月20日、大阪地裁が出した判断は「運転差し止め」を認めないという決定だった。

 決定文では地震が起きた際の安全性について「耐震補強工事を実施していて、不確かさを保守的に考慮して耐震安全性を評価している」などとし、問題はないと認定した。

 また、美浜原発3号機の老朽化については「新規制基準に沿った対応を行って運転期間延長の認可処分を受けている」と指摘。その上で、「新規制基準が定める高経年化対策以上に安全性を厳格、慎重に判断しな

ければならないとする事情は認められない」として、住民側の申し立てを退けた。

原告側 井戸謙一 弁護士:
どの論点についても「原子力規制委員会がこう言っているからいいんだ」と。そういう形で、われわれの主張を退けた

 一方、国は原子力発電所の運転期間を、実質60年以上に延長することなどを盛り込んだ計画案を今週中にも決定する予定で、政府のエネルギー政策の行方にも注目が集まっている。

■今後は“60年超え”稼働の可能性も…

 運転開始から40年を超えて稼働している美浜原発3号機。老朽化による事故のリスクも争点の一つだった。

 政府は、原発の運転期間を原則40年に制限しています。その上で国の認可があれば、20年の延長を認めていて、最長を60年と定めている。

 しかし現在、「新規制基準」への対応や審査で運転を停止していた期間などはカウントしない』とする案が検討されていて、これが成立すれば、60年を超えた稼働が可能になる。

■欧米の原発は60年以上の稼働も…

 関西テレビの神崎デスクは、欧米ではもっと長く稼働する原発もあると言います。

関西テレビ 神崎デスク:
海外の事例でいうと、歴史も数も日本の上をいっているアメリカでも原則は40年ですが、すでに90基以上が60年の認可を受けています。日本では最長60年ですが、アメリカは20年ごとに延長できるので、80年の認可を取得したものも6基あります。またヨーロッパは10年ごとにチェックして、クリアすれば際限なく延長できます。ただ、日本は地震が多いため、欧米と同じ基準でやっていいのかは考える必要があります

(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月20日放送)

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