今年も多くの地震があった日本列島。

大きな地震が起きると会見で何が起こったのか説明するこちらの女性、気象庁の鎌谷紀子地震津波監視課長。

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24時間365日地震を監視して、警報などを出す現場のトップ。最前線に立つ女性課長はどのような仕事や苦労をしているのか。

取材で見えたそのウラ側を、気象庁担当の記者が詳しくお伝えする。

「まだ慣れません」会見で心がけていることは?

フジテレビ社会部・柴木友和記者:
今年も大きな地震が度々ありました。11月9日の茨城県で震度5強の地震のほか、この半年で震度5強以上の地震が4回起きています。

そして、どの地震も気象庁の会見では、こちらの女性が説明していました。

気象庁は震度5強以上の地震が起きると原則、地震津波監視課が会見することになっています。

鎌谷紀子課長は今年4月に就任。この部署では初の女性課長です。

大学での専門は「火星の中の構造」で、気象庁に入ってからは長年、地震を担当してきました。

会見では、どのようなことに気をつけているのか聞いてきました。

気象庁・鎌谷紀子地震津波監視課長:
(慣れましたか?)うーん…まだ慣れません。カメラの向こうに何万人もいると考えると、もうそれだけでしゃべれなくなってしまうので、あえて考えないように、そこにいる記者さんとカメラマンさんに対して説明する。でも頭の中では被災地の方のことを考えてしゃべる。

地震津波監視課長の主な仕事は次の3つです。

・大きな地震・津波が起きた際の会見での説明
・津波警報を出すかどうかの判断
・防災の取り組みや情報の普及

まず、「会見での説明」についですが、鎌谷課長は「不安に思う被災地の気持ちに寄り添える説明」を心がけているそうです。

ネット上では、「声が聞きやすい」、「穏やか」という声も出ています。

また、特に発生が夜の場合などは、割れたものを踏まないようにスリッパを用意することなど、具体的な行動の呼びかけをしています。

その秘訣は、お母さまを念頭おいていることなんです。「実家にいる高齢のお母さんが被災地にいたら、何を知ってほしいかを考えている」と話していました。

“あのマスク”には理由があった…8月にリニューアル

榎並大二郎キャスター:
そういった、人に寄り添う気持ちがマスクにも表れている気が…話題になりましたよね?

フジテレビ社会部・柴木友和記者:
はい、そのマスクについても、話を聞いてきました。

気象庁・鎌谷紀子地震津波監視課長:
口元が見えるほうが聴覚障害の方に限らず、何をしゃべっているのかこの人は何を言いたいのか、表情もよく見えるので、分かりやすくて良いと思っている

このマスクは、会見の手話通訳ともあわせて、聴覚に障害がある方が口元を見えるようにとの配慮から着けるようにしたそうです。

一方で、こちらのマスクに対して、独特な形状をしているということもあり、「マスクに気を取られて説明が頭に入ってこない」といった、指摘もあったそうです。

これを受けてマスクも今年8月からリニューアルしました。

印象が変わり口元もはっきり見えます。

このように、伝え方も、国民の声を取り入れながら日々、工夫をしているそうです。

お風呂でシャンプーしている時にケータイが…

続いて、仕事の2つ目が「津波警報を出すかどうかの判断」です。

鎌谷課長は地震が起きた際に、津波警報や注意報を出したり解除したりする最終判断もしています。ここで、注目のウラ情報がこちら。

「お風呂でも呼び出しに対応」です。

鎌谷課長は、地震や津波と言ったいつ起きるか分からず、国民の命に関わる災害に対応するため、お風呂に入る際も携帯電話を持ち込んでいます。実際に対応したケースもあるそうです。

気象庁・鎌谷紀子地震津波監視課長:
365日24時間電話がかかってくる可能性がありますので、電話をビニール袋に入れてお風呂に持ち込んでいます。実際にお風呂の中で携帯を取ったことが2回ぐらいありまして、そのときちょうどシャンプーをしていたので泡だらけの手でビニール袋を開いて取ったことがあります。

いつでも対応できるよう、鎌谷さんは課長になってから、晩酌を控えているそうです。

また趣味は「温泉旅行」なんだそうですが、残念ながら、今は行けないそうです。

生活にも制約を受ける大変な仕事ですが、「人の命を助けることに直結する」とその重みを話されていました。

ご家族はスキー旅行へ、鎌谷課長の年末年始は?

そして、最後に紹介する仕事は「防災の取り組みや情報の普及」です。

災害の被害を減らすための取り組みや情報を普及させることも、鎌谷課長の重要な仕事です。

実は、気象庁などは、12月16日から新たな取り組みを始めます。

北海道や三陸沖でマグニチュード7以上の地震が起きた際に、後からくるもっと大きな地震に注意を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の発表です。

その狙いについて伺ったところ、「とにかく備えてもらうことによって、死者を減らすことを目指す」「防災対策を、もしみんながやれば、死者を8割減らせることになる」ということでした。

また、情報が出た時に「驚いてスーパーに駆け込んで非常食を買い込む人が出ることがとても心配、普段から準備してほしい」と話していました。

もうすぐ年末年始ですが、ご予定を伺いました。娘さんなどご家族はスキー旅行を計画しているそうですが、鎌谷課長は行けませんので、奮発して1人でホテルを予約して過ごすとのことでした。

ただ、ホテルも気象庁の近くにして呼び出しに備えるそうです。

(「イット!」12月14日放送)